2017年に踊り出した働き方の巨人を、前に倒す鍵は副業?意思決定の場?1億総ワクワク?(イベントレポート:12/19 One HR大忘年会)
12月19日(火)に開催した「One HR大忘年会 ~未来の働き方から忖度しよう、というより飲もう!喋り倒そう!」のイベントレポートです。登壇者も参加者もお酒が入っての会でしたので、発言者の記載は控えさせていただきますが、忘年会ならではのぶっちゃけトークが飛び出し、大変な盛り上がりでした。
大室先生のランチでの言葉がタイトルの由来
この忘年会企画の開催にあたって、事前に大室先生に相談に行った際に、大室先生が
「30年前と今の働き方は全く違いますよね。私はよく30年後の日本の姿から逆算をしてこれからの働き方を考えるようにしています」
とおっしゃっていました。その考え方が素敵だと考え、今回のタイトルをつけました。
マイナスな意味で使われた「忖度」ですが、未来の働き方からの忖度は違う響きだと感じます。未来の組織と個人の関係を伺うべく、働き方のフロンティアであるゲスト陣にご登壇いただきました。
2017年に踊り出した巨人は前に倒れるのか
トークテーマを9つ設け、その場でMCである産業医の大室先生が、目が合った人にテーマを選んでもらう形式で会は進行しました。最初に選ばれたのは『2018年のHR』。
『2018年のHR』
「踊り出した巨人が進むか、前に倒れるか」
「分かりやすくして」
「いろいろはじまったことがあった2017年、動くのか、戻るのか、ってこと」
質的な問題が量的な問題に置き換えられてしまった
続いて選ばれたテーマは『働き方改革』。
『働き方改革』
「選択肢をつくるための改革だったんじゃないか、と。自分のキャリアを見直して、どんどん選択肢を持っていくことがキーワードなのでは」
「働き方を変えるんじゃなくて生き方を決める。せっかく国が動き出したんならのっかっちゃえ」
「人事の人を繋げる活動をする中で、個にフォーカスするばかりでは戦闘力が高い状態を求められる。じゃあ推進する側がどう刺激的な仕掛けをつくるのかが、働き方改革の文脈の中でも、もうちょっと出てきてもいいかな」
「中途半端なオジさんにはいじめられる。そういう人を『なのにおじさん』と呼んでいる。これまではこうしてきたのにお前はどうなのかと言ってくる。人に言う前に自分のことを振り返ればいいのに」
「働き方改革が言われているけれど、進んだ実感がない。それは、質的問題が量的問題に置き換えられたから。来年はちゃんと組織を変えられるかどうか。勝手に多様な働き方を増やせるかどうか。そんな組織をどうつくるか」
「働き方改革って言葉がかっこいいじゃないですか。それで思考停止いている気がして。人に押しつけられるのは嫌だ。改革されるんじゃなくて自分でした方が良い」
「働き方改革とは『減職(時間を減らしてパフォーマンスを下げない)と増職(空いた時間を自分の時間として動く)』すること」
「会社は家族だ、というのは良くできたフィクション」「密の濃い関係だったからこそ、辞めるときには愛憎だった昔。しかし今は、辞めた後も辞めた会社との接点が多い」
副業推進は誰の問題か
働き方改革に続いて選ばれたキーワードは「副業」。ここから議論はさらにヒートアップしていきます。
『副業・兼業』
「厚労省で兼業副業に関するワーキンググループがあった。決まったことはモデル就業規則の改定で、原則副業OKだというのを出した」
「今の労働時間は通算制。ただ、労働時間だけが健康確保の尺度じゃないはずで、しかも通算は物理的に無理。他方、働かせ法案って言われちゃう」
「兼業副業は働き手の意志。ただ、ルール整備は追いついていない」「だったら民間からもアイディアを出したら良いじゃないか」
「広義のフリーランスは6人に一人。アメリカは5700万人で全体の1/3。それが2027には半分以上になる。そうするとフリーランスの方が普通になる」
「首切れるって文化があれば、副業とか推進されるんじゃない?」
「うちの会社も副業解禁をやった。でも別にグローバルかどうかなんて関係なくて、日本に合わなければやらなければいい話」
「ルールや法制度については、なんでNOって言わないのかって思う。みんな何にも言わないじゃん。変えたいんだったらやりゃいいのにさ」
「時間管理を止めて、サボる人がいようが、知るか、と。結果出せていればいいじゃないの」
「パフォーマンス出せていない人は、WhatかHowかその両方が分からない」
「自由で結果出せばいいじゃん、という優秀層と、そうでない層もあるじゃないか」
依存先を増やすと安定する
「副業と言うよりも、複数のコミュニティに組属する感じ。そういうところに集まる人達は、いろんな依存先を増やすことで安定している。複数に所属すると安全になるよね、と」「ある大企業の工場だと、ある地域ではその大企業工場に勤めることがトップヒエラルキー。そこで追い出しを喰らうとアイデンティティが崩壊する」
「アイデンティティのポートフォリオをいかに組んでいくか」
「越境することが大事だと言うことは研究でも言われているが、越境先で良い相棒が上手くつくれないと学習が発生しない。それがどれくらいできるようになるのか。それができれば元の居場所と越境先の両方に良いことが起きる。それができればやりやすくなる」
副業鬱が増えるのでは
「ずっとフリーランスしているけれど、決定的に不安になるのは学びが少ない。ものすごく利用されていく。似たような仕事が毎回来るから、またか、と」
「一個の仕事を背負う。それも大事だな。パラレルと背負いの行き来ができればいいし、それを推進すべきなんじゃないの」
「副業はウチはアリで、夜飲食店をしているメンバーもいるが、申請が必要。そのルールだけは決まっているけれど、あとは個々人で自由に」
「でも光と闇があるな、と。個人の選択肢を増やすのは大事だけど、某社が週休3日制を始めたが、あれはゆるやかなリストラではないか」
「懸念しているのが副業鬱。私は10年間パラレルしてきて、自分でコントロールする必要があるし、市場に晒される。それがいきなりだと、ハレーションを起こす気がする」
「環境変化はすべからくストレス。フルコミットの場合は仕事が周囲が把握しやすいからいいが、把握出来ないと辛い」
人不足は加速する
「2030年までに1000万人くらい労働人口が減る。ということは、絶対売り手市場。そうすると企業としては魅力的な企業に変身しないと働き手がいない。グローバルの中の日本という観点でそうなっている。その舵切り、マジでやらないと」
「諦める」ことが成人の証
副業の議論が一定以上盛り上がったため、会場からの質問も交え、キーワードを超えたフリートーク状態になっていきました。
「後継者がいない中小企業問題みたいなのは衝撃だった」
「それ、某省がやっているんだけど、大企業って社内失業者が460万人いて、不足後継者が150万人いて、マッチングできないかという議論をしている」
「でも、某社の新規事業プランで毎年大量にそのマッチングの案は出るんだけど、うまくいかない。なぜなら、(シニアが)行きたがらないから」
「行ったとしても上から目線になるからうまくいかないし」
「それでいうと40歳サバイバルは大事。下手に出てみることで変わるかもしれない」「精神分析的にいうと、成人になるのは『諦める』ということ。世界の中心にいるわけではないと気づいて、で、もがくのが中二病」
副業解禁は国家・企業の逃げではないのか
「最近、副業の話を聞くけれど、(国家や企業にとっては)逃げじゃないかって思う。ビジョンを示せないからお茶を濁す感覚。成長することから逃げているように思えるがどうだろうか」
「経済成長の希少材が人、という認識。一義的に見るとどんどん拘束するように見えているが実は違っていて、いかに人を活かすのか、というのが意図。いままでと同じように管理していても、もう伸びない」
「副業は分散じゃないか」
「自分がどうしたいかに尽きるんじゃ?」
「言葉に遊ばされているのでは。中堅企業~大企業あたりが、うまく対応出来ないということに対しては制度だし、これからの世代には教育だし」
「やりたい個人がいれば、(会社は)ルールを作ってくれる。やりたいと思う個人がやれればいいわけで、個人が責任を持って(会社を)口説ければいい」
「モチベーションが湧き出てくる人なんて少数」
「個人へのパワーシフトが起こっている。社会と組織と個人の並列。それを最初に成功する人は多くない」
「だれかが先陣を切らないとルールはできない」
「HRの人間として、意志決定する場をつくらないと。それをHRの人間はやっていかないといけない」
「『一億総活躍』って好きなんだけど、『一億総ワクワク』なんだと思う。みんなフツーなんだよ、そこに枠をつくるから変になっちゃう。あなたは自分の人生を生きているんですか」
「自分で自分のことを見て、それを認めなさい、と。いつまでも外に理由を持たないでください」
言葉だけで繋いでも、とても面白い議論だったことが見えてきませんか?
レイヤーの異なる登壇者による議論で、噛み合っていないところもありますが、それぞれの言い分をぶつけ合うという点で、興味深かったです。
最後に、あらためて当日ご登壇いただいた登壇者の皆様、ご参加いただいた皆様、12名という何ともカオスな会をまとめてくださった大室先生に深く感謝いたします。
[イベント詳細]
■One HR大忘年会 ~未来の働き方から忖度しよう!というより、飲もう!喋り倒そう!~
■コンテンツ
1st 乾杯
2nd パネルトーク ~9つのキーワードで今年の働き方を振り返る~
MC 大室 正志 様(医療法人社団同友会 産業医室 産業医)
・宇田川 元一 様(埼玉大学大学院人文社会科学研究科 准教授)
・倉増 京平 様(青山スタートアップアクセラレーションセンター(ASAC) メンター)
・黒田 悠介 様(文系フリーランス/フリーランス研究家)
・佐藤 留美 様(NewsPicks編集部 副編集長)
・島田 由香 様(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役人事総務本部長)
・正能 茉優 様(㈱ハピキラFACTORY代表取締役 & ソニー㈱新商品企画担当)
・曽根 秀晶 様(ランサーズ株式会社 取締役CSO兼CFO)
・田岡一樹 様(経済産業省 経済産業政策局産業人材政策室 係長)
・橋本 祐造 様(ユニファ株式会社 人事責任者/HR ENGINEファウンダー)
・日比谷 尚武 様(Sansan株式会社 コネクタ/Eightエバンジェリスト/Sansan名刺総研 所長/ロックバー経営)
・三浦 孝文 様(オイシックスドット大地㈱人材企画室マネージャー/人事ごった煮会 発起人)
(五十音順) 3rd 乾杯・交流
■日時:12月19日(火)19:00-21:30
■会場:Ignition Lab MIRAI(東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズMORIタワー40階)