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とある冒険者の手記

A.この子は誰?

2021.12.02 03:29

「アリス!やっと見つけたクポ!」


グリダニア新市街のエーテライトプラザ。

そこで名前を呼ばれアリスが振り向くと、それらしい人物が見当たらない。

声の主を探してキョロキョロしていると"どこを見てるクポ!!"と言われてしまった。


「下クポ!下を見るクポ!」

「下?」


視線を下げると、そこにはモーグリの着ぐるみを着た人物が仁王立ちしていた。

身長や体型的に、ララフェル族だと言うことが分かったが、生憎アリスにはララフェル族の知り合いに、着ぐるみを好んで着る人物はいなかった。


「え…誰?」

「クポ!?モグの事が分からないクポ?!」


そして、モーグリになりきっているのか、話し方までモーグリである。

アリスはヤバイ奴に絡まれたと、頭が軽くパニックになり始めた。

ララフェル族は何やら話しているが、今のアリスの耳には何も入って来ない。

そして、アリスの出した結論は、この場から逃げることだった。

悠々と話している相手を無視し、走り出した。


「あっ!待つクポ!話は終わってないクポー!!!」


後ろからそんな叫び声が聞こえるが、お構い無しに走り続ける。

グリダニア中を鬼ごっこのように走り周り、後ろからの気配が無くなったのを確認して、アリスは足を止めた。

手を膝につき、ゼェゼェと肩を揺らしながら息を切らしていた。


「さ、流石に…ここまで…来れば…追って…来ない…だろ…っ」


何とか呼吸を整えようと深呼吸をした瞬間だった。


「やっと追いついたクポっ!!」

「ぎゃぁぁぁあああああああっ!!!!!!」


撒いたと思っていた所に聞こえた声に、思わず驚き悲鳴をあげた。

そして、腰を抜かし地面に尻もちを着いた。


「な…っ、な…っ!?!?」


もう、驚きのあまりに言葉が出てこないアリスに、溜め息を吐くララフェル族。


「まったく、モグが話しているのに突然走り出すなんて、失礼にも程があるクポよ!!」

「だ……誰なんだ?!」

「さっき話したのに、聞いてなかったクポ?!」


ララフェル族は呆れた顔をしながら答えた。


「モグはピリスクポ!」

「へ?ピリス?」


ピリスはリリンが居た塔で一緒に暮らしていたモーグリの名前だった。


「え?だって、ピリスは……」

「モグはアリス達と会う前に、とっくに死んでたクポ。塔に居たのはモグの記憶で、魂は先にこの身体に生まれ変わってたクポ。記憶の役目が終わって、魂の元に記憶が戻ってから、ずっと探してたクポ!」


にわかに信じ難い出来事に、疑いの目を向けるアリス。


「じゃあ聞くけど、俺達と会った時、ピリスは何をしたか覚えてるか?」

「もちろんクポ!悪者だと思って、アリスに体当たりしたクポ!」


その事実を知っているのは、アリスとヘリオ、リリンと当事者だけだ。


「ほ、本当にピリスなんだ?」

「当たり前クポ!」

「そっか」


驚きはしたが、極小数しか知らない情報を知っているだけで、信じるに値した。


「それで、なんで俺を探してたんだ?」

「モグはリリンに会いたいクポ!ちゃんと元気にしてるか、心配だったクポ!」


赤子の頃から育ててきたリリンを心配する親心なのだろう。

当然の答えだった。


「分かった。じゃあ、俺に着いてきてくれ」

「クポ!」


アリスはピリスを自宅兼FCハウスに連れて行くことにした。



ミストにあるFCハウス。

室内に入り、自室の地下へと降りる。

そこには、ヘリオとお茶をするリリンの姿があった。


「ただいま」

「おかえり」

「あ!アリスお兄ちゃん!おかえりなさ………ぃ………」


アリスの後ろにいるピリスを見て、動きが止まるリリン。

だが、モーグリの着ぐるみのお陰か、物陰には隠れず、迷った表情をしていた。


「だ…誰?」

「誰だと思う?」

「え…私の知ってる人?」


リリンは恐る恐るピリスに近寄り、じっと見つめた。


「モグの事、忘れちゃったクポ?」

「………ひょっとして、ピリスなの?」


リリンがアリスの顔を見ると、アリスは頷いた。

それを見て、ピリスに視線を戻すと、ピリスは両手を上げてピョンピョンと飛び上がった。


「そうクポ!モグはピリスクポ!リリンに会いたくて生まれ変わったクポ!」

「ほ、本当にピリスなんだね!!」


ピリスと分かった途端、リリンの瞳からは大粒の涙が零れ落ちた。


「うわ~んっ!!ピリス、会いたかったよぉ~!!」


泣きながらピリスに抱きつくリリン。

突然泣き出したリリンに、ピリスは驚いた。


「クポ!?なんで泣いてるクポ?!そんなに外の生活は嫌だったクポ?!」

「違う、違うのっ、ピリスに会えて嬉しいのっ」


それを聞いて、ピリスはリリンが落ち着くまで背中を撫でていた。


リリンは泣き止んだ後、ピリスに塔から出た後の出来事を話し始めた。

嬉しそうに話すリリンに、うんうんと頷きながら耳を傾けるピリス。

それは、離れていた時間を埋める、親子の姿であった。