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誤治によるお寝しょ

2018.01.01 15:12

いつも左の腎虚で治療している6歳の園児。

数日前から風邪を引いて咳が出るという。

パッと診たら肝虚肺実証に診えたので証を左の肝虚肺実証に変更して、小里てい鍼の尻尾の方で左の曲泉と陰谷を補って、小里てい鍼の頭の方で右の孔最~尺沢にかけてを瀉した。


次回来院時に経過を聞くと、風邪咳は治ったがここ最近毎晩お寝しょをするようになったとのこと。

これは誤治だと思い、先ず誤治調整を行う。

前回の肝虚肺実証の影響を消すために、左の尺沢と陰陵泉を補った。

翌朝お寝しょはしていなかったとのこと。


考察。

肝虚で治療して誤治になっています。

肝を補うと相剋する肺と脾が虚になります。

小便に関係するのは肺です。

肺は水の上源で水道を通調し小便の排泄を管理調節しています。

どうやら肝虚でない肝を補ったために、相剋する肺を虚さしめたがためにお寝しょという誤治反応が起こったと推測できます。

例え主訴愁訴がよくなっていても新しい症状を訴えた場合は誤治の可能性が高いです。

現在治療中の患者さんが新しい症状を訴えたら新しく訴えた症状に対してこちらも新しい治療を加えるのではなく、先ずはその前に前回の鍼の影響ではないかと疑って検証すべきです。


■訴えた症状は何経の変動か?

■前回鍼を入れた経との因果関係は?


その結果、誤治の可能性が高いのであれば誤治調整をします。

この思考を持たなければ、誤治の影響力がいつまでも残るばかりか、必要のない治療を加えて患者さんに余計な負担を与えることになります。

治療家は足し算の治療ではなく引き算の治療を先行すべきです。

誤治反応は経絡に鍼を入れた場合は強力で局所に行った治療で新病が出ることは先ずありません。

あったとしてもやり過ぎによるドーゼオーバーぐらいです。

経絡治療では本治法がその対象で標治法ではドーゼオーバーはあっても新病をこしらえるほどの影響力はありません。


誤治調整の方法ですが、本治法で補った経を剋する経を用いて相殺します。

用鍼はてい鍼を用います。

毫鍼ではスッキリと戻せません。

そして、戻してすぐに見直すのではなく、その日の本治法はそれでおいて、次回に見直します。

間違っても治療の上書きはやらないようにしましょう。

標治法や補助療法は普通にやってもらって大丈夫です。


生身の人間が人を診るわけですからやはり誤診することもあります。

誤診しないためには、診察診断の勉強をすることです。

また病症には裏表があります。

虚証もあれば実証もあります。

やはり、陰陽虚実を弁えて補瀉調整をすることが一番大事です。

そして毎回経過観察を綿密に行うことです。


誰でも簡単にできることは患者さんの話をよく聴くことと手足の三陰三陽経を切経することです。

話を聴く上で大事なことは何気ない世間話を聴き逃さないことです。

「今までそんなことなかったのに最近人の名前が覚えられなくて・・・。」

「打った覚えはないんだけど腕が痛いんだよね、昨日から。2日前に宛名書きをたくさんしたからかな?」

あーそうですかと、素通りせずに、それは自分の鍼の影響ではないかと真っ先に考えるのが治療家としての在るべき姿です。

治療後余計に悪化したとかしんどくなったというのはわかりやすい誤治ですが、何気ない世間話の中にも見逃せない重要なヒントが隠れています。

また、余りそうゆうことを気に止めていない患者さんや話したがらない患者さんであっても体が色々な情報を教えてくれます。

だから切経するのです。

蚊に噛まれたような痕がポツンポツンとありよく診ると大腸経上に列なっている、三焦経が凸凹している、腎経がえらくザラザラ乾燥している。

これらは虚実までは判別できませんが、明らかにその経絡に変動が生じているのが分かります。

例えば再診で診察すると膀胱経上に前回までは観られなかった湿疹が出現している、前回の治療をカルテで確認してみると肺経を補っている。

肺経に鍼を入れた影響力が子午陰陽関係に当たる膀胱経に影響したと考えるのが治療家思考です。

誤治を回避するためには、誤診しないように東洋医学に精通するまで勉強すること。

誤治の被害を最小限度に抑えるためには、患者さんの話をよく聴くことと手足の三陰三陽経を切経すること。

治療家は初診以降も綿密な観察を欠かさないこと、必ず前回の治療を検証することが何より大事です。


経絡に鍼を入れるということはそれだけ影響力があるということです。

だからあらゆる病気を治せるし、反対に治療家が病気をこしらえてしまうことも当然あります。

僕がお寝しょという病症を作ってしまったように(ゴメンね(>_<))


誤治はいただけませんが、最短で気づいて正治に導けたら誤治も治癒の過程となります。


患者さんは全てを教えてくれます。

正に先生です。

素直に学ぶことです。

教えに反すると残念な結果になるのは言うまでもありません。

みなさんのお役に立てればと思い、自分への戒めと兼ねて恥をさらさせていただきました。