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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第98夜「風呂場まで持っていく秘密」

2022.04.24 04:28












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



そして、達太の外見は、39歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。



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まずは自己紹介から。



俺は達太。39歳の会社員。



日曜はエッセイスト。



似て非なる有名人は、七福神の布袋尊。



似ているが、俺ではない、俺は神様ではない、人に福はもたらすがね。





だが。風向きが怪しい。



劇の王様になってみないか、との誘いがある。神様に似ていると言っているのに何故、王様。



しかも劇の、王?



「なれるんですか」



俺は問う。



「頑張り次第」



と返される。



「何を頑張るんですか」



俺は問う。



「大食いですか。早食いですか。エッセイですか。掃除ですか。」



俺は問い続ける。考え続けるのが人間ならば、俺は考えることを放棄し、問い続けることで答えを得たい。



楽をしたい。



だが人間は放棄しない、これからも食事を楽しみたいから。



一挙両得。



違うかもしれない今、一挙両得、だが言わせろ頼む。





そして答えに驚愕する。



「脚本と演出を頑張ってもらう。」



ほう。



やってみようじゃないか。初挑戦だが、初挑戦の気がしない。



20分のお芝居やコントなど、初だが、そんな気は全くしないが、全うしようじゃないか。





タイトルは「風呂場まで持っていく秘密」とのこと。





墓場ではなく、風呂場。



じゃ秘密じゃないのか、いや違う、秘密は秘密だ。



風呂場で薄情すべき秘密・・・。



家庭内か、ガチの温泉ではない限り、風呂場では異性に遭遇しない。



赤ちゃんでなければ。



ではつまり。異性には知られてはならないが、同性と赤ちゃんには知られてもいい事実、ということか。





同性に知られたくない俺の秘密。



俺はキュウリが実は好きだ。



俺のイメージにそぐわないだろう。



それゆえ秘密。





赤ちゃんに知られたくない秘密。



俺はテニスを嗜んでいた、とても昔に。スコートを履いて北信越大会でベスト8になったりした。



こんなこと、赤ちゃん連中には知られたくないな。



なぜならこの違和感に赤ちゃんは気付かず、せっかくの意外なエピソードなのにツッコミをくれないから。赤ちゃんは。徳川家康のスコート姿は大人が楽しむものだ。





演出を考えようじゃないか。



「風呂場まで持っていく秘密」の。



風呂場なんだろ、まずは舞台に湯気を立ち込めさす。



湯気の中、俺は歌いながら登場。



♪パラララ、パラララ、パーララ、



 ラーラ、パーララーーラララ





「本日はご来場頂き、誠にありがとうございます。音の鳴る機器をお持ちの方は、音の鳴らないようご配慮願います。



写真撮影はお控え下さい。



そして。大変、本当に、恐縮で、気が進まないのですが、劇場内での飲食は、お控え下さい。飲食できないなんて、俺なら我慢できませんが、お願い致します。」





俺は前説をやりながら泣いてしまう。



写真撮影ができないのなんて、どうでもいい。電源オフもどうでもいい。



だが飲食を控える。そんなこと、人が人に、強いていいのか。



ああ、カツ丼が食いたい。カツカレーもついでに食いたい。



牛丼も食える。ささっと、客入れ中に食べてしまえる。豚汁を付けなければ。豚汁は熱い。



なのに、飲食禁止。涙が止まらない。卍、卍、卍。



だが俺は続ける、前説を。





「本日、舞台を20分間動き回るのは、中央ヤマモダンの山本さんです。



俺の会社の同期です。彼には何としても幸せになって欲しいものです。」





前説のはずが、結婚式の乾杯の前説のようになってしまう。前説には変わりないが、どうする、劇の王を目指す俺は。



では全うすることで正当化しよう。



「人生には三つの大切な袋があります。胃袋、胃袋、胃袋。胃袋。」



全うすることで正当化、そのための結婚式のスピーチのお決まり、



しかしそれすら全うできなかった。



胃袋を、ワン、ツー、スリはーい!!



四回も言ってしまった。



三つの袋だというのに。四つの胃袋。



仕方ないだろ、俺の人生、胃袋は多い方がいい。





そして、演出家として前説に登場した俺は、山本に、舞台袖に引き戻される。



「単独ライブじゃないんだから、前説は要らないんだよ!



ただでさえ、20分超えそうなのに、前説たっぷりやったら、絶対に20分に収まらないだろ!



3分損した!どうすんだ!」



なるほど。



ごもっともだ。





こうして。風呂場でキュウリが実は好きですと告白する芝居が始まる。




山本はガリガリだが、俺の脚本に寄り添い、まるで胴長短足のメタボリックシンドロームのような動きをやってみせる。



さすが、ピン芝居に取り憑かれて、全て持ってかれた男。



そして山本は湯舟に浸かる。



もちろん風呂場だ。



「俺、実は、きゅ、きゅ、好き、きゅ、きゅう。」



山本がキュウリが好きでも当然だ。



ゴボウなんてとても似合う、



だが山本はアマでありプロ、脚本に寄り添い舞台上ではメタボ。キュウリ好きを薄情する、その決意、美しい。



だが。秘密を告白する相手が風呂場にいない、ではないか。





俺が、達太39歳エッセイストが行くしかない風呂場に。舞台上に。



一人芝居とか言っているが仕方ない。



俺は鼻歌を歌いながら湯けむりの中を行く。



♪ふん、ふんふ、ふふふんー、ふんふん。 ふん、ふふふん、ふふふん?





もうよくわからなくなってきたな。



風呂場で、俺も山本も、キュウリ美味しいという、たったそれだけの芝居の完成だ。劇の王に相応しい。




しかし。劇王、全裸はありなのか。



先週の見学時に確認し忘れたな。



まあ大丈夫だろう。俺の場合は、腹が全部、オブラートに包む。



山本は逮捕されるかもしれない。



それはそれとて。風呂場の再現どうすんだ。



実行委員会が、「風呂場まで持ってく秘密」のタイトルでピンときて用意してくれているかもしれない。



大変にありがたい。ありがとうございます。





劇王が終わったら、第100夜だな。



カツ丼をしょっちゅう食べている俺。



縁起の塊のはず。勝つはず。





ここで。エッセイであってラジオじゃないのに、葉書。



「じゅて~むを言葉にできないです。どうしたらいいですか。」



言葉にできない?



言葉にするなよ。



部屋で踊るんだ。



今日はお前に免じて、じゅて~む言わないことにするか。



踊りについて。俺は薔薇を咥えたいからフラメンコを踊る。フランス語圏の俺だが、スペイン語圏のフラメンコを、薔薇を咥えたいから踊る。





じゅて~む





あ、愛してるって言っちゃった。



中央ヤマモダンを好いて下さる方々に、つい。