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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第91夜「北風と達太と太陽」

2021.12.04 18:47












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



そして、達太の外見は、40歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。



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以前、俺が洗顔にハマった話はしたと思う。



そのブウム、今も続いていると思いますか。



ひと洗いする度に、鏡をバッと見て、水にまみれた必死の俺自身の顔にウケるという娯楽、洗顔。



結論から言うと、ブウムは去った。



だがそんな俺も顔は毎朝洗っている。たしなみとして。





さて、寒くなってきた。



朝の洗顔が大変に辛い。



水を手ですくい、顔に冷水をぶっかける瞬間、



「マズい、冷たい目に遭っちまう!」と気付き、持ち前の頭の回転の速さで、「飲むしかない!」と手の中の水をがぶ飲み、見事に冷水をやっつけ、自身のファインプレーを称える朝も、ある。楽しそう?バカ言えよ。



これでは洗顔が進まない。



俺に水なんて飲ませるなよ?



飲んでカレー、もしくは麻婆だ。



まっとうなところだと、牛丼にくっ付いてくる豚汁。



だから俺は、再びブウムを再燃させたい、洗顔にハマりたい。





自己紹介が遅れた。



「俺」とは誰?となっている。



オレオレ詐欺だと通報されても文句は言えない。





「おさむかい?おさむなんだろう?



顔を洗うのが辛いのかい?」





「ああ俺、俺、おさむだよ。だから30万円工面して欲しい。」





「給湯器を38度設定にして顔を洗うと、気持ちがいいんじゃないのかい?」





「・・・・・うん。」





「食べながら話しているような声だけれど、本当におさむかい?



ところでおさむ、洗顔の他にブームは無いのかい?」



勘の良い今時の老人は、話を長引かせながら、固定電話で俺と話しつつ、空いている方の手で、らくらくスマホを操作、110番する。



俺はお縄というわけだ。



自己紹介をしなかった代償だ、デカい。





じゃあ自己紹介をしようじゃないか。



俺は達太、40歳の会社員。



似ている有名人は七福神の布袋尊。



それがスーツを着こなしていると思ってもらって結構。



好きな花は薔薇。



趣味は『旅』だ。





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俺は達太、旅人だ。



トレンチコートを着て旅をしている。



もちろん、トレンチは俺に似合っていない。



本来トレンチは腹部分をいったんベルトで締めると思うが、俺はそうはしない。



せっかくの旅だ、腹を解放してゆきたい。旅とは3食の他にご当地メンチやフランクを楽しむもの。



女性はソフトクリームも楽しむといい。俺はその横顔を楽しもう。



だから俺は、みぞおち部分にベルトを持ってきている。



するとトレンチはたちまちワンピースのようになり、しかもトレンチはベージュだ、ベージュのワンピースと言えば、イイ女でなければ着こなせない代物であり、



遠目、俺は旅するイイ女なんだろう。





そんな俺の頭上から声がする。



『勝負だ』との声がする。



早食いか?



はたまた大食いか?



いや、違う。



空高くから声は聞こえる。



つまり遠目。俺はベージュのワンピースを着こなすほどの、イイ女。



早食いや大食いを申込むわけがない。



「結婚の申込みか。」



俺はうんざりする。旅の途中で結婚を申込まれても困る。イイ女の宿命。





北風「勝負だ、太陽さんよう、あの旅人のコートを脱がせた方が勝ちだ。」





太陽「いいわよ。」





北風「まずは俺からだ、冷たい北風を、思いっきり吹きかける!」





何てことだ。



空高くで会話を楽しんでいたのは北風と太陽だった。



しかも、俺をイイ女と勘違いし、俺のコートを脱がそうとしている。



なんという遊びを!





俺の中の旅人根性に火が点く。





「絶対にコートは脱がないわよ!」





俺は上空に向かって叫ぶ。



嘘だ、コートは脱ぐつもりだ。





「結婚の申込みなら、なおさらよ!



ジェントルじゃない男は嫌いよ!」





進んでコートを脱ぎ、小脇に抱えるつもりだ。



なぜって?



もうすぐ牛丼屋が、ある。



入店するためだ。



たいていの牛丼は特盛であってもすぐに提供される。



だから、コートは入店前に脱いでおく。



これが俺の旅の流儀。





北風「いくぞ、ビュウウうううう!」





さて脱ぐか。いざ入店。





そのとき、恐ろしいことが起こった。





俺の4メートル先を歩く、ベージュのコートを着た、いかにも旅人らしい男が、北風をもろに喰らっているではないか。





俺は、物語の蚊帳の外だったというわけか。



だが、そうもいくまい。「じゅて~む」ファンの為にも、物語に食い込んでいく必要がある。違うか?





次回、俺は、旅人の立場を捨て、



北風と太陽の新たなライバルとして勝負に参戦しようと思う。





俺なんかより、もっともっと旅人らしい出で立ちの彼のコートを、俺は脱がす。





待ってろ旅人。





じゅて~む。