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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第81夜 「シンデレラボーイ⑤」

2021.06.27 00:17












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



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「・・・レラ。



 ・・・デレラ。



 ・・・デレラ。」





は?



なんだ?



誰かが俺に呼びかけているな。





俺は達太。39歳の会社員。



日曜はエッセイスト。



似ている偉人はバッハ。車種はアンパンマン号。



そう、達太だ俺は。



だが。枕元で俺に呼びかける声は、



「デレラ」



と繰り返す。





ははん、シンデレラの事だな。俺は閃くが、しかし焦る。



眠っている俺は「シンデレラ」と呼びかけられている。





つまり。



俺はひょんなことからシンデレラと入れ替わってしまったようだ。



どのきっかけだ?





思い当たるのは、ただ一つ。



シンデレラを見失った俺と王子は、大人しくお城に帰り、シャワを浴び、眠りについた。



そして俺は夢の中で、豚の丸焼きを食べた。



そのタイミングだ。



俺は旨さと喜びで、我を忘れ、豚の丸焼きを頂いた。



普段は行儀よくガツガツ定食を食べる俺だが、豚の丸焼きの前ではマナーなどわからないし、思いっきり楽しんで食べようと思って、手を汚したり脂を舐めたり、食いちぎったり、「アーメン」「ご馳走様」と交互に感謝を述べたり、パンに挟んだり、ベーコンも食べたり、生姜焼きも出てきたり、



とにかく我を、夢の中で見失ったのだ。



きっかけとしては十分だ。





そのため、達太はどこかへ行ってしまい、シンデレラになってしまった。




王子が美しく眠る俺に囁く。



「シンデレラ・・・」





俺はどうしたらいいんだ。



これからは大食漢の美女として生きるしかないのか。





まったく、エッセイは小説より奇なり。



金髪は普通のシャンプーで洗って大丈夫なのか。





俺は長い睫毛を振り払うように目覚める。



「おはようダーリン。



 じゅてーむ。」





「貴様!



 ダーリンとは何事だ、達太!



 早く支度するんだ、シンデレラを探すぞ!」





「は?



 お言葉ですが王子、シンデレラはここに、横たわっておりますぞ。」





どうやら、王子は「シンデレラを探しに行こうよ達太」のようなことを、俺の枕元で連呼してしまったようだ。





そのため。俺は我を失いシンデレラになってしまったと錯覚したようだ。



とんちは全て解けた。





「お前がシンデレラのわけがないだろう!シンデレラは美しいんだ!」





「んま!」





「腹の上で手をお姫様みたく組むのはやめろ!起きろ!」





「いくら王子に心奪われようとも、あたしの腹はあたしのもの。腹の上で何をしようとあたしの自由ですわ。」





昨夜に引き続きよく喋る王子だ。



だが。シンデレラとして恋仲になった今、痴話げんかの対手としては、よい働きを成す。





「起きろ達太!」





はいはい、と起きようとした瞬間、俺は閃く。



このまま、俺がシンデレラとして王子の側に居た方が、王子は幸せなんじゃないか?



理由は無い。





俺は、既に自我を取り戻しているが、王子のためにシンデレラのフリを続けようと誓う。





メルヘンとはそういうことだろう。





「いいえ。王子。わたしは、あなたの、シンデレラです。



さあ、朝食の会場へ向かいましょう。」





朝食ビュッフェか。



久しぶりだ。



新潟の月岡温泉の摩周に泊まって、朝からたらふく食べて以来だ・・・。





王子がよく喋っているが、俺はシンデレラとしてはにかみながら適当に「ええ」「まあ」と相槌を打つ。





「達太!」




「ええ。」




「お前、ガラスの靴を森に投げた罰としてシンデレラを探せ!」





「まあ。」





じゅて~む、と言うも俺なら、言われるも俺・・・



たまには愛されてみるか・・・