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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 79夜「シンデレラボーイ③」

2021.06.13 03:10












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



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俺は高木ブー似の、39歳の会社員だ。



だが日曜はエッセイストとして、エッセイを発表している。





最近はシンデレラと一緒に舞踏会に参加し、0時の鐘と共に走り去ったシンデレラを追いかけるエッセイに凝っている。





だが。



俺の後ろから、俺の意見を代弁する声が聞こえてきて、俺は足止めを食い、シンデレラを見失ってしまった。





「待ってくれシンデレラ!」





そう、それだ。俺はそれを言いたい。



その若い男は、王子だった。



先ほどまで舞踏会でシンデレラとダンスし、見つめ合っていた王子。





王子ならば、シンデレラが腹を空かして向かった2軒目を知っているかもしれない。





「王子。シンデレラがどちらへ行ったか、教えて下さい。俺をそこへ、あなたが連れて行くのです。」





さあ、王子、俺に深夜の洋食を食わせてくれ。





「は?



それをこっちが知りたくて追いかけていたのに、その前をお前が走っていたんじゃないか。



しかも、彼女を探すために重要な、彼女のガラスの靴を森に放り投げてしまうし。」





本当によく喋る男だ。





「ガラスの靴。



 なぜ、そんな腹の足しにならないものが、重要なのです?」





「ぴったり合う女性を探すんだよ!」





いいや。



そんなものは必要ない。



王子、あなたはシンデレラと見つめ合ってダンスをしていた。



そのシンデレラの目が、語っていたはず。2軒目で食べるメニューを。





「王子、シンデレラとダンスをして見つめ合っているとき、彼女の目に何が映っていました?



ポーク? ビーフ? グラタン?」





「は?



 そんなの、彼女の瞳に映っていたのは、俺にきま、俺にきま、、、



 お前、本当に無礼だな。女なら勘弁するが、男なら税金を本当に余計に払ってもらう。」





おや?



よく喋るくせに、こういう話題になると照れるのか。



なかなか可愛らしい一面もある。



俺はひるまず畳み掛ける。





「王子、税金とは消費税のことですね? でしたら俺は常日頃より一般の民よりも余計に払っています。



それは俺が人よりも何度も、大量に、何度も、食事をするからです。



俺がこの国にやってきたからには、ご安心下さい。



消費税、特に肉屋とレストランからの消費税収が、どんと伸びますよ。安泰です。」





「は?」





しまった、王子はまだ政治を任されてはいないようだ。



だが俺はおかまいなしだ。





「王子、本題に戻ります。シンデレラの目には、どんなメニュが?



彼女が今、どこにいるかのヒントになる。ガラスの靴より頼りになる。



ダンスしているとき、目に、何が映っていました?



サラダとは言わせませんぞ。シーフードの類も、却下ですぞ?」





「だから、お、お、俺が」





ところで。



ひとつ心配事が、ここで浮上。



王子は俺が女か男かと、質問してきた。



0時に魔法は解け、ドレスを纏って美しくなった俺ではないはず。



なのに。どうして女性に見える?



中世の西洋では、俺のようなタイプが女性としてモテるのか?





鏡、鏡、そんなものは無い。



俺は王子を見つめる。



王子の瞳に映る俺を見て、俺の今を確認するのだ。





俺は王子に一歩近づき、王子と見つめ合う。





「なんだ、急にそんな見つめ出すな。



 貴様、さては女だな。



 だが俺はシンデレラに夢中なんだ、



 そんなに見つめても無駄だ、」





よく喋る男だ。



だが照れ屋だ。こんな俺の女性バージョンの熱視線にすら焦っている。





そう。



王子の瞳に映った俺。



魔法が溶けてドレスではなくなったものの、ボロイ女装をさせられた俺が、そこには居た・・・。



昼間のシンデレラのような。





「王子!



 俺は達太!なんだこの女装は!」





「俺に聞くなよ!」





王子に的確に返答され、俺は焦っている。



シンデレラの2軒目も大事だが、まずは女装から逃れ、男に戻りたい。



だが、腹が減っており、シンデレラの2軒目は難しくとも、しっかりと洋食を食べたい。ハンバーグオムライスでも我慢しよう、そのぐらい謙虚に洋食にありつきたい。



深夜0時30分。



まだまだ今日は始まったばかり・・・と思えばいくらでも食える。





「達太。よろしく。



 明日からガラスの靴を森に投げた罰として、シンデレラ探しをするように。いいね。」





「はい。」





俺は返事をしながら、ガラスの靴を探しあて、褒美として王子に、このエッセイの書籍化をねだろうと決意する。



俺はこれまで、このエッセイの書籍化を、深く、強く、望んできた。



教科書に載ることも・・・。



財力のある王子とのコネクションができた。エッセイ書籍化への千載一遇のチャンス・・・。





じゅて~む、シンデレラ、よくお眠りなさい。