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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第78夜「シンデレラボーイ②」

2021.06.06 00:50












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



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俺は達太。会社員、39歳。



だが、週末をどう過ごそうと俺の勝手。



俺は日曜はエッセイストとして過ごす。



エッセイを書く。



先週末のエッセイでは、シンデレラと共に、魔法使いのばあさんからドレッシーになる魔法を頂いた。



流れで俺もカボチャの馬車に乗り込み、舞踏会へ参加することにした。





カボチャの馬車は俺が乗り込んだことで狭かった。



馬がすぐにサボろうとするのか、乗り手が常に「ハイヤ!ハイヤ!」と言っていて、俺は笑いそうになった。



だが。



おそらく俺の重みで馬はサボりたくなっているのだろう。



では、俺を笑わすのも俺、というわけか。





そんなことをエッセイ脳で考えているうちにお城に着いた。



いよいよ舞踏会だ。



美しいシンデレラ。



しかし。その正体は召使いさながらに労働する若い女性。



男も驚くほど豪快な食いっぷりに違いない。





さあ!



何から食べる、シンデレラ!



サラダとは言わせない・・・!





ところが。



シンデレラは貴族や伯爵などに誘われ、踊り始めた。




俺は舞踏会に踊りに来たのではない。



オードヴルの並ぶ、丸テーブルへ。



細々とした料理が並んでいる。




「塵も積もれば山と成る」





日本のことわざだが、おそらくシンデレラの時代の貴族は、本能的にこの真実に辿り着いていたのであろう。



小ぶりなこの料理の数々を、食べ重ねることで満足せよと、いう事だ。





シンデレラは、向こうで王子と踊っている。



可哀そうに。



昼間あんなに労働して、舞踏会でもダンスして。





俺はシンデレラの分まで、食おうと決心する。



それがシンデレラへの最も正しい礼儀だ。





深夜0時。



食い続けた俺は、さすがに満腹だ。



今、王子にダンスを申し込まれても「腹がいっぱいでダルくて動けません、すみません。」と色気のない返事をするしかない、そんな状態だ。



お城の鐘が鳴る。



ボーン、ボーン、ボーン。





と、そのとき!!





シンデレラが、急に駆け出した!



舞踏会を後に、お城を後に、



もちろん俺を置いて!





なるほど、2軒めか!



シンデレラは舞踏会でダンスしてばかりで、ほとんど食べていない、2軒めに向かったんだ。



だが、何故だ、何故俺を連れて行かない。一緒に来たのに!





俺は猛ダッシュでシンデレラを追う。



ドレス姿だが構わない。



しかしガラスの靴が邪魔だ、走りにくい。



この腹も邪魔だ、走りにくい。



俺はガラスの靴を脱ぎ、森に向かって投げ捨てる。





「待ってくれシンデレラ!」



俺は繰り返し叫ぶ。2軒めに一緒に行きたいと、深夜0時だ〆に相応しい、腹に溜まるメニュを出す2軒めに、俺も是非。





ところが・・・。



そんな俺の背中からも同じ叫び声が。





「待ってくれシンデレラ!」



若い男の声だな。





「誰だ?!



 俺の心の声を代行するのは。」



俺は走るのをやめ、ピタと止まり、ぐるんと振り返り、相手を威嚇すべく、麻婆麺を注文するときのような低い声で、尋ねる。





そこに居たのは。



王子。





「どいてくれ、シンデレラを追っているんだ。」





「王子も2軒めですか。」





「は?」





「王子、本日の舞踏会の料理について、反省点をいくつか申し上げても宜しいでしょうか。ムッシュ。」





「どの立場からの意見だい。



 君はドレスを着ているようだけれども、女性かい?男性かい?



 女性なら多めに見てあげるけれど、男性なら、税金を余計に払ってもらうも、やむを得ないよ?



 それに、そのムッシュってのは間違いだ。」





よく喋る男だ。王子。





「はあ。君のせいで彼女を見失ったよ。おや。でも君の足元に彼女の靴があるね。」





本当によく喋る。



はて。靴?



俺は先ほどガラスの靴を脱ぎ捨て、森に放り投げたはずだが?





放り投げそびれていたか。



いかんせん、俺には野球の経験が無いからな。





俺は、足元にあるガラスの靴を手に取り、思い切り、森へ向かって投げた。



先ほどの教訓を生かし、肩を使って、腰からの力も連動させ、つまり腹をゆすり。





「なにするんだ!」





王子が泣き叫んでいる。本当によく喋る王子だ。これは確かにエネルギーを使う。確かに王子にも2軒めは必要。





2軒めに行ったであろうシンデレラを追う、俺と王子。





次回、待望のシンデレラお勧めの深夜の洋食に、ありつけるか。





じゅて~む