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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第75夜 「達太こぶとりじいさんと寝食を共に⑥」

2021.05.09 04:11












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



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俺は達太、会社員。



日曜日にはエッセイストだがね。



しかし最近、エッセイの何たるかが、よくわからなくなってきた。



随筆。そうだ、俺は随筆している。



なのに何故だ。



しょっちゅう、童話や日本昔話にお邪魔してしまう。



俺のスター性がそうさせてしまうのかもしれない。



俺の行くところに事件がある。



「相棒」の「杉下右京」も、そういう男だ。



彼の気持ちがわかる。



彼も、随筆したいだけだろう、おそらく。





だが俺は彼と違い、音楽家のバッハを劣化させたような外見だ。



だが髪型はバッハよりずっといい。



39歳だというのに、オールバックでポマードで固めてみている。




そんなことは今どうでもいい。



俺は今、こぶとりじいさんと寝食を共にしている。



しかも俺の腹に、じいさんのコブがくっついている。





だから俺は、コブ付きの腹をエプロンで覆いたい。



そしてじいさんに小遣いをねだった。





だが。



じいさんは俺に小遣いをくれなかった。



仕方あるまい。



俺は居候らしく、じいさんと一緒に家に帰る。




「なあ、翁。



 考えたのだが。



 エプロンのための小遣いを工面するのが難しいんだろう?



 ならば俺に、ばあさんの着物をリメイクするゴーサインをくれないか? 



 さあ、翁。



 ばあさんの着物を、特に美しいと思う着物を、下さい。



 俺の腹は立派なので、この腹に相応しい柄の着物を頼みます。



 つまり。『腹負け』しない着物を。



 ! ! !





 ところで翁!



 今日は何月何日ですか!





 ! ! !





 しまった!



 俺としたことが!



 



 今日は5月9日、母の日。



 ばあさんにとって、俺は、未来からやってきた可愛い居候。



 それはつまり息子のような存在。



 ところが、その俺に、カーネーションの準備がない・・・!



 絶対絶命だ。



 ばあさんは、期待しているはずだ。



 俺からのカーネーションを。



 翁、俺は一体どうしたら・・・。



 いいや。翁、落ち着いて。



 俺に名案がある。 



 ばあさんが嫁入りのときに着てきた着物があるだろう?



 それをエプロンにリメイクする。



 しかも、2着。



 俺と、ばあさんでお揃いにするんだ。ばあさん、喜ぶぞ。下手なカーネーションより、ずっと喜ぶはずだ。



 なんせ、俺と揃いのエプロンだ。これ以上の母の日の贈り物は無いだろう。



 大丈夫だ心配いらない。着物というのは布部分がとても多い。一人の人間を包むのに、俺みたいな幅のある人間を包むほどの布面積だ。



 いける。



 エプロン2着、いける。



 これをもってして、母の日の贈り物とする、最高だ!」





俺は、淀んだ瞳とブヨブヨした唇で、翁に、利発に提案する。



これで母の日は誰も傷つくことなく、乗り切れるだろう。





「達太さん。あの。



 カーネーションとは何ですか。



 エプロンとは何ですか。



 母の日とは何ですか。祭りをやりますか。



 それと、なんだか気持ち悪かった『じゅて~む』とは何ですか。」





俺は驚く。



じいさんに何度も小遣いをくれと「じゅて~む」と懇願したのに、じいさんにはその意味が通じていなかったようだ。



 だが。



 しっかりと気味悪がってはいる。



 俺からの愛を。





 まったく物語が進まない。



 俺も驚いている。



 だが仕方ない、エッセイだ。



 じっくり行こうじゃないか、こぶとりじいさんの世界を。



 特に今日なんかは母の日で、番外編のごとき匂いを纏っていたな。



 すべての、お母さんに感謝を示すような、むず痒いエッセイだったんじゃないか?





たまにはいいだろう。脱線も。





じゅて~む