Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第72夜 「達太こぶとりじいさんと寝食を共に③」

2021.04.25 02:51












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



-----------------------------------------------





「まてまて~、まてまて~」





今の俺の気持ちだ。





俺は達太、39歳の会社員だが、大変ご馳走に興味があるため、貧乏くさい匂いのする日本昔話の時代を生き抜いたにも関わらず、小太りである老人がいると思い出し、「こぶとりじいさん」の世界へ訪れたのだが。





実際にはじいさんは小太りではなく。





じいさんと寝食を共にすれば、見たこともないご馳走にあやかれると思っていたのに。





俺は、もはや魅力のなくなってしまったじいさんを、まじまじと眺める。





じいさんは、自分の顔に何かついているのか?など言っている。





それに対し、鬼(今、俺達は鬼に絡まれている・・・)は、「こぶが付いている」など答えている。





そこで俺は「まてまて~」となっているのだ。





だが俺も立派な大人。



しかもこの時代からすれば部外者。



つまり、お客様だ。



鬼が催してくれるという宴会を、待つしかない。





「さあ。重箱を。」





だが鬼も、じいさんも、こぶや舞いの話を進めている。



どうやら、じいさんが上手に踊って宴会を盛り上げたら、じいさんのこぶを取ってやろうという話らしい。





馬鹿馬鹿しい。



宴会など、ご馳走がメイン。



踊りなどご馳走が旨ければ必要が無い。



鬼は、それをわかっていない。



つまり。



「鬼。



 まさか、重箱の中の宴会用のご馳走は、美味しくない。もしくは、さっぱりしたご馳走なんじゃないか?」





「怒ったりはしない。



 正直に答えて欲しい。



 腹に、グッと来ないご馳走。



 違うか?



 だから、翁の舞いを楽しんで、笑って、腹をゆすって、物足りなさを埋めようと、してないか?」





「もしそうならば。



 俺はもう退席したいと思う・・・。」





じいさんが舞い始めた。





俺は、もはや魅力の無くなってしまったじいさんの舞いには興味が無い。



背を向け、2021年へ。



牛丼チェーン店へ直行か。





と、そのとき、



俺の背後から「ムシャリ」という大きな音が!





肉を噛み千切る音だ!



ご馳走は、ご馳走だったか!



俺は咄嗟に判断し、音の方向へ腹を突き出した。





・・・・本来なら、肉料理の方向へ、唇を、歯を、持っていくべきだった。



だが俺は、腹が切なすぎて、腹を突き出した。良い判断だったと思う。





だがそれが間違いだった。





ムシャリという音は、鬼が、じいさんの踊りに感激し、じいさんの頬にあったコブを取った音だった。





結果、そのコブは俺の腹に。





俺が腹を突き出したからだ。



しかも俺は、何故だかTシャツをめくりながら腹を突き出してしまったようだ。





「ぎゃああああ!」



鬼は驚き叫ぶ。



「お前、何してんだ!



 なんで、コブに腹を寄せてきたんだ!」





「鬼。静かに。



 宴会の席だぞ。」





宴会の席で「静かに」とは何とも皮肉。




俺の腹に、魅力に欠けるじいさんのコブが、くっついた。





そんな宴会だった。



盛り上がった。





めでたし、だ。



さすが昔話。





だが俺の腹の虫はそれではおさまらない。



だってそうだろう?



俺の立派な腹にコブがくっついた。



魅力に欠けるじいさんのコブが。





次回、コブを覆い隠すため、エプロンを買いに繰り出すことに・・・。





こぶとりじいさんの世界でエプロンを探すか、2021年でエプロンを探すか、それはまだ秘密。



お楽しみに。





じゅて~む