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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第58夜「達太、白雪姫の世界へ」

2021.01.17 02:35












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



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俺は達太。



39歳、好きな童話は赤ずきんちゃん。





一方、嫌いな童話は白雪姫。



何故嫌いか。



俺の入り込む余地が無いからだ。





俺は、赤ずきんちゃんの世界には馴染んだ。



しかもオオカミを論破したり、地元のレストランでポークソテーを食べたりした。





しかし。



白雪姫には俺の出番が全く無い。



俺は善意で、若い娘が辛い想いをするのは宜しくないと考え、赤ずきんちゃんよろしく、白雪姫を助けてあげようとしたのだが、大失敗に終わった。





さあ、俺の苦労と不満の物語を、召し上がれ。





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「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは、だあれ?」



「それは達太にございます。」



「嘘を仰い。」





俺は焦る。



白雪姫の天敵、お妃様のジェラシーの矛先を俺に向けようとするが、



お妃様はちっとも俺の方を向いてはくれない。



この世で一番美しいのは俺ではないと見抜かれてしまった。確かに俺は音楽家のバッハを醜くしたような外見だ。仕方あるまい。





俺は、お妃様に進言する。



もちろん投書だ。



俺は小市民。お妃様はお城に居る、おそらくこの国の重要人物。





「お妃様へ。この世で一番美しいのを鏡に聞くのは今宵でお辞めを。



明日からはこの世で一番醜いものを鏡に尋ねて下さい。達太39歳。黄金の国ジパング出身。」





しかし、お妃様の刺客はいつまで経っても俺を狙ってこない。



毒リンゴ、腹の足しにもならないが買ってやろうと思っているのに。





「鏡よ鏡、この世で一番醜いのは、だあれ?」



「それは、達太にございます。



 ポトフを受け付けず、



 パンすら受け付けず、



 オムライスハンバーグ添えを訴えてくる達太にございます。」





「おのれ、達太、この私を差し置いて、最も醜いとは・・・(怒)」





そして俺は狙われる。



だが。未だお妃様からはご無沙汰だ。



つまりは。矛先は俺に向いていない。





俺は白雪姫が心配になる。



森へ行くか・・・。





森では、時すでに遅し。



白雪姫が昏睡している。



毒リンゴを食ったのか。哀れな。



リンゴが美味しそうなど、あり得ないというのに!





白雪姫。その傍らには7人の小人が泣いている。



俺も小人に混じって悲しもうと、8人目として白雪姫の元へ。



「うわーん、うわーん!



 白雪姫ぇー。なんでリンゴなんか食ったんだ~、揚げ物なら毒なんて100度の熱でやっつけたのに~、揚げ物、揚げ物~。」





小人たちは、泣くのを辞め、俺をじっと見る。





「こんばんは。俺は達太。俺を小人の8人目として、物語に参加させてくれないか。」





「お、お、大きいですね。」





「人間だから仕方ない。だが大きい小人が一人くらいいても良いだろう。」




「横にも、大きいですね。」




「ああ。横にも大きい。だが、よく見てくれ。縦というか、前後ろにも大きい。腹が、出ているんだ。」





そこへ王子様が通りかかった。




俺は思わず叫ぶ。



「王子様!」





しかし王子様は、軽く会釈をし、過ぎ去る。





なんと、俺が大きいせいで、昏睡する白雪姫に気付かなかったようだ。



小人7人は、王子様を追いかける。



俺も、もちろん、8人目として。





しかし、王子様は、7人の小人と俺が自分を追いかけてくることを怖く思ったようだ。



馬でダッシュで「ごきげんよう!」など言いながら去ってしまった。





俺は深く反省する。





小人たちは再び激しく泣き始めた。



納得だ。



白雪姫が助からない。



俺のせいで。





俺は小人を励ます。



「なあ。俺は確かに大きい。



 そして王子を逃がした。



 だが、こう見えて俺は39歳なんだぜ?



俺が小人に加入すれば、平均年齢はぐっと若くなると思う。



よく見ると、あなた方はとても小さいが、老けている。」





小人たちは泣き止まない。





俺はこの童話に珍入したことを後悔する。



俺のせいで、皆が悲しい想いをしている。





こうなったら、俺が、なんとしてでも白雪姫を復活させてみせる。





キスだ。



キスしかない。



キスに頼る他無い。



姫にキスするんだ。



じゅて~むだ。





白雪姫にキスをするのだ。



目覚めさせるのだ。





ところが!



小人7人はそれを必死で止めてきた。



「やめてください!やめてください!」





なぜ?



なぜ止める?





俺は混乱する。



混乱したので、俺は白雪姫の脇からいったん去り、森の中のレストランに入店。



ポークソテーを2人前、食べる。



白雪姫の分だ。理屈は自分でもわからないが、白雪姫の分と称して2人前食べる。



混乱したのでレストレランに入店するあたりから、既に理屈の外。だから二人前食べる理屈など、屁。





会計時、俺はシェフに尋ねる。





「麻婆的なものは作れますか。」





俺のキスが許されないならば、麻婆を白雪姫の口の中へ流し込んであげよう。



そうすれば、挽肉の旨味と、花椒のスパイシーな匂いと、あんかけの温もりと、油の香りで、白雪姫は目覚めるだろう。



普通、俺が白雪姫なら、目覚める。




「ごっくん。



 これは、麻婆!



 昏睡していてはダメだわ!



 いけないわ!



 すするのが精一杯よ、昏睡だから!     



 麻婆の部分しか頂けないわ!



 麻婆なのに、ご飯も、麺も、



 頂けないなんて、



 人生、損してるわ!



 達太姫、もう起きます!」





しかし。



シェフは中華を心得てなかった。





「は? マー、ボウ?」





おしまいだ。



麻婆が手に入らない今、白雪姫を目覚めさせることは不可能。




白雪姫、救ってやれなくって悪かった。





俺は赤ずきんちゃんの年の離れた兄として、赤ずきんちゃんの世界に戻るとしよう。(第53夜、54夜、55夜参照)





じゅて~む、



スノーホワイト



ビーフシチューを思いつかなかった俺を許してくれ