Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第53夜

2021.01.03 02:32












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






大晦日の事である。



俺は両手の自由を奪われた。





親戚連中と、2020年を振り返り、談笑し、夕飯を頂いていたときのことだ。





はあ、オードブゥルは最高だ・・・と、俺が箸をいったん置いたとき。



その瞬間に、敵は俺の両手に唐揚げ棒を押し付けてきたのだ。





俺は両手を塞がれた。





そんな俺に敵は告げる。



「おじさん、唐揚げ棒あげるよ。」



「代わりに、絶対に動かないでね。」



「お蕎麦は僕がもらうよ?」





いやいや、それは困る。



いくら俺でも蕎麦は年越しのときくらい、食べたい。





両手の自由を奪われ、



「いや、蕎麦も食べる。細く長く生きるのもアリとは思う。」



と、蕎麦の器を押さえることのできないのをいいことに、敵は、俺の蕎麦の器をスっと引いた。





両手は使えないが、蕎麦を食べたい俺は、唇の吸引力で蕎麦を啜ろうと、顔面ごと蕎麦を追いかけた。



精一杯、蕎麦を追いかけたのだ。





するとどうだ。



敵は蕎麦の器を、俺の方へ戻してきたのだ。





俺の大きな顔は、蕎麦の器にぼしゃんと突っ込んでしまった。





「ず。ずず。」



顔が熱い。麺つゆクサい。



しかし蕎麦を啜る。



普通は蕎麦の器に顔を突っ込んでしまった場合、すぐ顔を上げるのだが、そうすると再びその蕎麦を食べたいか?



答えは食べたくない、だ。



だから、そうならないように突っ伏したまま啜るが正解だ。




俺は蕎麦の器に顔をぶち込まれたまま、ズズズズと蕎麦を啜る。



両手には唐揚げ棒。蕎麦を啜り終えたらこいつを食べるのが楽しみだ。



こんな俺は細く長く生きれるのか今更、などの疑問を抱きながら。





すると頭上から声が。



敵の声だ。





「おじさんが悪いんだよ。



 僕は、唐揚げ棒をあげる代わりに、絶対に動かないでねって言ったよね?



動いたおじさんが悪いんだよ?」





確かに。



唐揚げ棒を頂いている。



しかも両手に。





「僕は良い子さ。



 おじさんの蕎麦を奪うわけがないじゃない?」





俺は蕎麦を、60秒で啜り、顔を上げる。





驚いたことに敵は子供だ。



聡明そうな坊ちゃん狩りに、キラキラ光る瞳。



ツンと形の良い鼻。



形の良い、口角の上がった口元。



蝶ネクタイに半ズボンだ。



東京の子供か。





俺は39歳。会社員であるうえに、土日は立派なエッセイストだ。



親戚連中の前でも立派でありたい。



立派な腹に見合う俺でありたい。





スっと立ち上がり、



「ちょっとお蕎麦の匂いを落としに、お風呂を先に頂くよ。」



と団らんを後にする。





風呂場。



俺は顔を埋めたのが、蕎麦であったことに感謝する。



大晦日でなければ、俺の目の前には麻婆丼や、生姜焼きや、カツカレーがあったはずだ。



顔がドロドロになっていた。



危なかった。



蕎麦で良かった。





しかし。



あの敵は何なのだ。



遠い親戚の子供と聞いている。





湯舟に浸かり、俺は考える。



敵に打ち勝つ方法を。





脱衣所。



俺が体を拭いていると、敵が、ガラガラと扉を開けて入ってきた。



「おじさん。僕とお風呂に入ろうよ。」





なんというタイミング。



風呂上りに体を拭いている最中に、風呂の誘い。





俺は断りたい。



団欒に戻ってオードブゥルを食べたい。



しかし相手は子供。



しかも敵。





風呂で倒すか。





「いいぜ。おじさんと風呂に入ろう。」





俺は再び風呂場へ。





敵は常に自信たっぷりだ。



俺にしりとりゲームを湯舟に浸かりながらしようと言うのだ。





得意だ。





敵が先方を買って出る。



「しりとり」





俺は潰しにかかる。



「リブロース、ご飯大盛り」





敵「り、り、りんご」





俺「ご飯大盛、生姜焼き定食大盛り」





敵「り、り、り、理科!」





俺「カツカレー大盛り」





敵「り、り、」





敵は俺の大盛り攻撃にタジタジだ。



長考が目立つ。



俺はのぼせてきた。しりとりはここまでだ。俺の勝ちが見えた今、湯舟にいる必要は無い。



血圧が高いのだ。



食生活が反映された血圧だ。



先に湯舟をおさらばだ。



しりとりの結末なんて知るものか。



のぼせていても食欲はある、オードブゥルの元へ。





俺が湯舟におさらばしたならどうなるか?



ほぼ湯は残らないのだ。



体積がそうさせた。





敵は、寒い寒い言うだろう。



ガリガリの子供。





俺は脱衣所で反省した彼を待つ。



冷えた体を温めてやるのだ。



この腹に押し付けてあげよう。



情けや塩を、敵にかけるのだ。



ん?まあいい。かける。





ガラ。



敵が風呂を終えた。



ガタガタ震えている。



しりとりの屈辱か、俺のせいで湯舟が干上がったからか。





俺は彼の健闘を称え、抱きしめてやる。寒かったろう、坊や。





ところが。



「助けて、誰か、助けて!



 腹に取り込まれるよ!」



敵は、どこまでも性根が腐っていた。





俺は、今年1年をかけて、彼を正す。





「君、名を何という?」



「達隆!お前の隠し子だ!」





はて。



俺に隠し子?



何故隠す?



自慢したいが?



しかも達隆は美形。自慢したいが?



高木ブー似の俺のかけらもない。つまりは俺の相手は美女。




続く・・・。



じゅて~む。





敵が出現したおかげで、エッセイらしくなかったな。



この子供は今夜限りの出現と思われる。



エッセイ向きではない。



キャラクターをこさえれば、物語が作りやすいのは、わかる。



でも、そこじゃないんだ。



それは、他の作家の仕事だ。



あくまでも俺はエッセイスト達太。



今年もよろしくお願い申し上げます。





じゅて~む