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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第49夜

2020.12.19 20:39












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



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冬だからといって暖房をつけて、こたつに短い足をつっこんで、味噌ラーメンを食べていたら、暑くなってきた。




そこで俺はお化け屋敷にやってきた。



夏に、涼しくなるためにお化け屋敷に行くという文化を思い出したのだ。



もちろん一人で。



女を誘っても良かったのだが、そんな危険なところに女を連れて行くわけにはいかない。



お化けが住む屋敷。



心霊スポットなどとは違い、確実にお化けが居る、住んでいるのだ。



俺が宮村の屋敷に居るのと同じ事。



例えば近所の焼き肉店へ、昼にビビンバ丼を食べに出ても、その後は宮村の屋敷に俺は居る。





しかもお化けは腹が減らないのであるから、出掛ける必要もまったく無く、常に居る可能性が高い。





お化けは未練の塊かもしれないが、旅行には未練がなさそうだ。



だからやはり、家に居る。



一方俺は、旅好きを公言しているが、旅先で今しか食べられない、と言って日常以上に色々食べる事、それだけが旅の楽しみだ。



お化け同様、旅には未練が無いのかもしれない。



名物もそういえば食べない。



お化けもそうだろう。



俺と同じく。




だが俺は、名物がジンギスカンや、肉巻きおにぎりや、カツやステーキならば、食べる。そこはお化けとは違う。



旅先で、味が違うかもしれない・・・と本部から来た人物のようにして牛丼チェーンに入店することも好きだ。



一泊二日であるにも関わらず、いつもの味が恋しいといって生姜焼き定食や麻婆丼を食べることも好きだ。




こういった事をもう辞めろ、と誰かに言われたら、俺はぶるんぶるんと頭を左右に振り、頬の肉を赤くして揺らし、嫌がるだろう。



ではやはり。



俺は旅に未練がある。





俺はそんなことを考えながら、お化け屋敷のチケットを購入。



意外とするな、と俺のナイーブでケチな部分が嘆いた。



豪農の屋敷の入館料のようなものだろう。



お化けの屋敷も考え方としては同じ。こんなにボロボロなのに維持費もかかってしまうのだろう。





自己紹介が遅れたが、俺、達太は39歳にも関わらず、似ている有名人は高木ブー。



お化け屋敷の中は暗かった。



薄暗いどころではなく、真っ暗に近しい。



お化けは俺を、高木ブーと間違えるかもしれない。



高木ブーがプライベートでお化け屋敷に、冬に、日曜に、来たら。



お化けサイドの方が、びっくりして怖がるのではないか。




俺が涼みに来たのに、立場が逆転してしまう。





試してみるか。立場の逆転を。



俺の中の意地悪な部分、つまり鬼の俺が喜び、お化けを驚かすんだ!と、変な声で叫びだした。



ー俺は叫び慣れていないため、叫ぶと恐らく変な声だ。




もちろん、鬼の俺のカラーは緑。





ところで、何故、雷様は鬼の恰好をしているのだ。



鬼なのか。



神様と俺は聞いているが。



挿絵を間違えたまま伝承され、絵本となり、雷様のコントの衣装が完成してしまい、ドリフターズの面々に似合った。



恐らくそんなところか。



挿絵の間違いに誰も気付かなかったのは「へそを食べる」という衝撃的なエピソードのせいで、話に触れた全員の気が緩んだせいだ。




ラムちゃんは何故だ。



あの子もカミナリを落とす、つまりは雷様。だが鬼の恰好。



ドリフばかりを見て育った漫画家の先生が、やっぱり仕事中もドリフを見ながら第一回を描いてしまった。



それが少年サンデーに載ってしまった。ドリフ側もそれを喜んだ。





暗闇で俺は推理する。



だが脱線している余裕は無い。



俺の中の鬼が、お化けを驚かすんだと変な声で叫んでいる。





それには高木ブーのフリをする必要がある。



だがウクレレが手元に無い。




俺は試しに、腹の肉を何とか成型してウクレレ型にできないか、腹を撫でてみた。



無理そうだ。



俺はやむなく、腹をウクレレに見立てることを諦め、とにかく腹をかき鳴らすことに。





意外や音は出た。




家を出るときに、お洒落とは言えないラベンダー色のウインドブレーカーを羽織ってきたのが良かった。





シャシャシャ



シャシャシャシャー





車庫にぶら下がっていたウインドブレーカーに俺は感謝する。



あいにく、鬼の俺からの感謝だがね。





そうこうしているうちに、お化けが現れた。



井戸の中からだ。



女だ。



井戸から女とは、恐ろしい。井戸は本来水を汲み上げる場所。女がそこに待機していたという恐怖。



俺だって悲鳴をあげたかった。



だが高木ブーのフリをしている最中。



高木ブーほどの人物が、女のお化けの前で悲鳴をあげるわけにはいかない。





俺は悲鳴を堪え、泣きそうになりながら、口元を押さえ、お化けのことは考えないよう、カツ丼カツカレーカツ丼カツカレーと俺を励ます呪文を唱えながら、早歩きで、命からがら、お化け屋敷を出た。





普段、歩きを最小限に抑えて生活しているため、早歩きをした俺は暑くなっていた。



涼みにきたというのに。





仕方ない、風鈴でも買って帰るか。



俺は、風鈴の音で涼しさを感じるという文化を思い出していた。





なんて風流なエッセイなのだ。




じゅて~む