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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第46夜

2020.12.11 22:13












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



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なぜ、12月の第二週ともなると町にクリスマスソングが流れているのか。





俺にはわかる。





もうすぐクリスマスがやってくるからだ。



子供たちはサンタクロースにプレゼントをお願いしただろうか。



このエッセイを毎週楽しみにしている子供たちの中に、まだサンタクロースにプレゼントをお願いしてない子供がいたら、急いだ方がいい。



エッセイストの俺からの忠告だ。



急げ。





しかし、読者の子供に急げと忠告しておきながら、俺はまだサンタクロースにプレゼントをお願いしていない。



なぜか。



それは俺がサンタクロースを信じていないからだ。



俺は39歳の立派な会社員だ。



サンタクロースは信じていない。





クールな俺は、小学2年の頃からサンタクロースを信用していなかった。



なのに大好きだった。





ちなみに、今も好きだ。



幸せな気持ちになる。



信用していないのに、何故だ。



信用できない奴は、普通嫌われるはず。





俺は音楽家のバッハや、ジャムおじさんに似ている。



サンタクロースも、もう少し背を低くして、目をどんよりさせたら、俺に似る気がする。



だから好きなのだろうか。



いや。理由はもっと別のところにある気がする。



小学校5、6年生の中にもサンタクロースを信じていない者がいるだろう。



だが、バッハ似の俺と同じく、憎んではないはず。





一体全体、これはどういうことだ。





頭の回転の速い俺は、根本から考え直す。論理的にゆこう。





まず、俺がサンタクロースを信用していないことが、そもそもの間違いと気付く。





つまり、サンタクロースはいる。



俺は小学2年のときにサンタクロースはいないとした。



だがよく考えろ。



俺が子供の頃になかったものが、今はたくさんある。





携帯電話。ルンバ。



フリクションペン。



東京スカイツリー。ドラム式洗濯機。



ユニバーサルスタジオジャパン。メガマック。



牛丼屋のうな丼。同じく牛丼屋のカツカレー大盛。



回転ずし屋の何杯でも取り放題のラーメン。



コンビニのレジ脇の、余っていると可哀そうなので全部買ってあげる唐揚げの類。





これらは昔は無かった。



だが、今はある。



同じく、サンタクロースも今はいる。



俺が知らなかっただけだ。



俺は20代~30代前半にかけて忙しくしていた。



きっとその頃に、実在するようになったのだろう。





俺は母に電話をかける。



「もしもし母さん。今電話で話しても大丈夫?」



俺はサンタクロースを信じることにしたが、大人には違いない。



家族に対しても、電話のマナーは守る。



母は自転車で移動中かもしれない。



同年代の友人と会食中かもしれない。



俺を思い出し、メンチカツ20個を揚げている最中かもしれない。



とにかく、マナーは守る。





母は、父と家でお茶を飲んでいた。





「そう。じゃあ話しても大丈夫だね。しかも、父さんも傍にいるなら話は早いよ。



まずは母さん、父さんにもこの電話の内容を聞かせたいから、スピーカー機能にして俺と会話をするんだ。わかったね?」



「スピーカーにしたかい。」



「ねえ母さん、俺、今年のクリスマスはサンタさんに車を1台、お願いしてみようと思うんだ。コペンっていうオープンカーの軽。



車はあるけれど、遊びに使う車が欲しいんだ。



オープンカーでドライブ?



気持ち良さそう?



はぁ?



母さん、何か勘違いしていない?



俺が大の揚げ物好きなのを忘れたの?



揚げ物をテイクアウトばかりしていると、車の中が、中華料理屋の裏口の匂いになってくるのさ。



女性を乗せるときに困るだろう?



だから、揚げ物の匂いを外に飛ばすような車が欲しいのさ。」



「はぁ?無理?」



「違うよ母さん、俺はサンタさんにお願いするんだ。母さんはお金を自分の趣味に使ってよね。洋裁とか。」





俺は何だか怖くなってきた。



サンタクロースにお願いするプレゼントは、両親の金銭事情も鑑みる必要がある、と俺の中のもう一人の俺が言い出したのだ。





信じているのに、何故だ。



俺は混乱する。



俺の中のもう一人の俺は、なんて疑り深い俺なんだ。



小学2年の頃の俺が、39歳の俺の中にいるというのか。



しかも、そいつの方がサンタクロースに対して冷めている。



馬鹿な。





だが、相手は子供。



昔の俺とはいえ、子供に対してムキになることほど、恰好悪いことは無い。





俺は、俺の中のもう一人の俺、小学2年の俺の声に従うことに。



プレゼントの金額をガクンと下げる。





「わかったよ。



父さん、母さん、コペンていう軽のオープンカーは諦めるよ。



サンタさんにはクリスマスオードヴルをお願いするよ。



定食屋の生姜焼きと、チェーン店の牛丼と、肉屋のメンチカツと、中華料理屋の麻婆と、給食センターにあるような炊飯器いっぱいのご飯。



これって俺でも同時に食べたことないんだ。



これにしよう。



クリスマスオードヴル。



夢みたいだな。



良い子にして過ごすとするよ。俺はいつまでも父さん母さんの可愛い息子だよ。」



「はぁ?これもダメ。



なんだって?



達太、お前死ぬぞ?」



「・・・わかった。死ぬのは嫌だ。



うん、うん、知ってるよ、生活習慣病でしょ?聞いたことだけ、あるよ。



それに、父さん母さんより先に逝くことほどの親不孝はないからね。



つまり、それは良い子ではない。



サンタさんは来ない。



それは困る。」





「では無難なところで、女性を1名、サンタさんにお願いするよ。」





俺は俺のロマンチックに惚れ惚れする。



両親も嬉しいはずだ。



結婚を面倒くさがる俺が、ついに家庭を持ってくれるか、と安心するだろう。



金もほとんどかからないプレゼントだ。親戚のおばさん連中に心当たりを聞く手間のみ。



両親の金銭事情も鑑みたうえに、クリスマスらしい、サンタクロースにお願いするに相応しい、プレゼントだ。





母も感激したのか、電話はブチン!と切れた。



泣いているのだろう。



それか父と俺について相談しているのだろう。





クリスマス後のエッセイの発表を楽しみにして欲しい。



エッセイに女性が登場する可能性がある。



だが、もし万一、サンタクロースが女性を1名プレゼントしてくれなかったなら、俺は、もっと良い子になろうと思う。





更にエッセイに力を入れ、書籍化に成功し、道徳の教科書にも載り、



エッセイストとして地元の成人式で講釈を述べ、両親の誇りとなろう。





そうすれば来年こそは、思うがままのクリスマスプレゼントが届くはず。





すべての夢見る子供に、



メリ~、じゅて~む!



メリメリ、じゅて~む!!




しまった。今日はまだ12日だ。





じゅて~む