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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第37夜

2020.11.14 04:54












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



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まずは自己紹介から。



こんばんは。





俺は達太。39歳の会社員。



こんばんは。





ありがとうとこんばんはの言えない大人にだけはなりたくないもんだ。



全世界の女に告ぐ。



ありがとうとこんばんはの言えない男とだけは結婚しない方がいい。



悪い事をしたら謝る。プライドがなんだ、面目がなんだ、決まりの悪さがなんだ。



英語圏だろうが、フランス語圏だろうが、スペイン語圏だろうが、



ありがとうとこんばんはと言えない男は、辞めておけ。後悔する。





前置きが長くなったな。



今日のエッセイに緊張しているからだろうか。そうだろう。



生放送や、ライブや、舞台のように、やり直しが効かない緊張。



エッセイでいうところの一筆書きだ。



そのぐらい緊張する。





前回、ごめ~む(ゴメーン)な内容だったせいではない。



その逆だ。



真逆だ。



今回、俺は、エッセイストとして俺の本性をさらけ出すつもりだ。





いい話をする。



とってもいい話だ。



やり直しが効かない。俺のパーソナルが浮き彫りになる。ヴェールを脱ぐ。衣を脱ぐ。天ぷらではなくなる。海老は海老に、イモはイモに。そんないい話だ。





さあエッセイの一筆書きの始まりだ。



じゅて~む。



すた~と。





昨夜、俺は、夜道を自転車で愛でていた。



驚いたか。



俺も自転車に乗る。



飛行機という鉄の塊が空を飛ぶように、自転車という華奢な乗り物が俺に耐える。



自転車の耐久性をあなどるな。



俺に耐える乗り物、自転車。



あの竹馬や一輪車は俺に耐えないだろう。俺から願い下げだ。あんな不安定な乗り物。腹の下に、いわゆる体幹などという筋肉を持ち合わせる余裕などないのだ俺は。俺の腹には他にやる事があるのだ。例えばカツカレーなど。



パンクも怖くない。パンクしたならJAFを呼ぶ。



JAFはコレ違うなと、自転車屋を呼ぶ。もしくはタクシーを呼ぶ。



JAFなら常識的な判断を下す。俺よりも。





そんなことはどうでもいい。



俺は夜道を自転車で愛でていた。





そのとき、5メートル先に一人の婦人が現れる。



俺は車道と歩道の間を、自転車で行く。



彼女は歩道を、来る。



それでいい。十分にすれ違うことができる。





ところが彼女は、車道と歩道の間にヒョイと出てきた。



鞍替え。



何の為?!



つまりは俺と一直線上に、彼女はとび出てきた。



相手が美女なら、そのままぶつかって、デコとデコをぶっつけ、お詫びのお茶。そして結婚。



(お茶はもちろん、回転ずしで28皿頂いたあとの緑茶=あがり。)





しかし相手は婦人。



おいおい、俺でなければムカつかれているぜ??



俺が旨い広東麺を食った直後で、命拾いしたな婦人よ!



と思いながらも、俺はハンドルをきり歩道に。



彼女に道を譲った。





俺でなければムカつかれていたぜ?



今宵は広東麺に感謝しな!



と、擦れ違いざま、俺は彼女がガクンと小さくなったのを認める。





そこには道路の起伏が。



彼女、それを知っていたのだ。



俺は起伏のない歩道を、スイ~と行く。





ありがとう。



ごめんなさい。



こんばんは!





言えなかった。



一瞬の出来事すぎて言えなかった。



婦人の気遣い。




俺は高木ブーほどある。



そんなおれが、そんな道路の起伏に自転車ごと突っ込んだなら、どうなるか。



一般人より衝撃が来る。



漫画的表現を借りると、ぼよよよよ~~ん!となる。



はたから見ると面白いだろう。しかし当人の俺はかなり痛いのだ。



彼女はそれを瞬時に察知し、他人の俺を思いやり、漫画的な面白さを放棄し、スマートに進路を変えたのだ。





ありがとうと言いたかった。



ごめんなさいと言いたかった。



こんばんはと言って、婦人の「今それ?!」という顔を見たかった。





これがいい話の一部始終だ。



俺はこんな男だ。



人の思いやりに、逐一、心を揺さぶられ、



投書しても採用されないような、美談にも及ばない小さな気遣いで2日間は幸せでいられ、夜が無限に美しく感じられる男だ。



小さい男だろう。



人間味がありすぎて、エッセイストとしての弱点にもなるだろう。



しかし。それが達太39歳、高木ブーとほんじゃまか石ちゃんのハーフ。未来の徳川家康公。



(俺は10年後には徳川家康公に似る・・・・・・・・)





実に緊張した。



本当の自分をさらけ出すエピソードに緊張した。





最後に。



緊張に効くまじないをひとつ。



「人」という字を、大きく書く。



知っている読者も多いだろう。



「人」と3回、大きく、



手のひらと言わず、3回と限らず、



腹に何回も書く。



すると「肉」と見えてくる。



緊張しているときと限らず、



緊張が溶けたあとに、腹に「人」と「肉」に見えるまで書いて、焼き肉の気分に持っていく。



そして焼き肉定食を食べる。





婦人の優しさに、



じゅて~む





彼女が俺に惚れていた可能性に、



かんぱ~い