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じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第28夜

2020.10.17 01:36












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



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まずは自己紹介から。



俺は達太。以上。





予感がする。



女に食事に誘われる。



俺はまだ39歳にも関わらず、藤岡弘が30㎏の増量に成功したような外見だ。



女が放っておかない。



50代の金持ちのグルメな紳士に見えてしまう。





弱ったな。



俺は忙しいんだ。女に割く時間もエネルギーも無い。男として油がのりにのっている時期だ。



いやこれ冗談ではなく本当に。



油が本当に、のっかっているんだ。





だが仕方ない。



観念しよう。



女の頼みとあらば。食事にくらい一緒に行ってやってもいい。



どうせ食事は一日3~7食、とらねばならないのだから。



うち一食を女と一緒に楽しんでみようじゃないか。





だが問題がある。



相手が美女だった場合。



俺は普段は食事に専念し、思いっきり麺やコメや肉や衣を見て、素早く口元に持っていくのだが、



それが食べ物への敬意でもあるのだが、



だがしかし。



美女が向かいにいて、会話をしていた場合、俺は女の目を見る必要がある。





それが礼儀だ。



会話は、相手の目を見て。





慣れないな。



食事中に女の目を見るなんて。





しかし、近日、俺は女に食事に誘われるだろう。



食欲の秋、おそるべし。



仕方ない、練習だ。





「おい親父、ここに姿見を持ってきてくれないか。」



俺は定食屋でトンカツ定食を頂きながら、店主に頼む。



食事をしながら目を見て話す練習をするんだ。





店主はキョトン、だ。仕方あるまい。



「おい親父、姿見だ。卓上の鏡でもいいが、ともかく、鏡を頼む。それとご飯をおかわり・・・。」





ここは定食屋。姿見など置いてないとの事。



だが自宅部分の、娘さんの部屋に、ニトリで買った姿見があるとの事。





俺は店主に頼み込み、自宅部分の娘さんの部屋に、トンカツ定食をお盆ごと持ってお邪魔させてもらうことに。



普通は許されない行為だ。



「宮村さんは、うちみたいな定食屋に、いつも5000円近く落として下さるから。お酒も飲まないのに・・・。定食だけで・・・。でも、だめだよ?」



やはり許されなかった。





しかし、そこは常連。



店主が、俺のテーブルの脇に、娘さんの姿見を持ってきてくれたのだ。



なんという男気。俺は泣いて店主に、土下座して、感謝を述べた。



他の客は見て見ぬふりをしていたな。それにも感謝だ。客は全員、武士の心を持ち合わせていたんだ。





めでたく、俺は俺を見ながら食事をすることに。



俺は、鏡に映る俺の目を見ながら、トンカツを頂く。



どんよりとした目。



ぶ厚い唇。



トンカツ。



衣。





・・・しまった!



俺が、俺の目から目を離した隙に、トンカツ定食はなくなっていた・・・。



仕方ない。美女の為だ。



「麻婆麺を追加でお願いしま~す。」



再び練習をするんだ。誰かの目を見て食事をする練習を。





麻婆麺が俺の元に運ばれてくる。



俺はまた、鏡に映る俺の目を見て麻婆をすする。



我ながら迫力がある。





しかし。まただ。



俺はスープを飲み干す。



麺とスープと麻婆しか最終的に見ていなかった自分に気付く。



「カツカレーを追加でお願いしま~す。」





今度こそだ、今度こそ、俺は俺の目を見て食事をするんだ。



この後、俺は、たくさん練習をした。美女との食事に備えて。



本当にたくさん練習したんだ。



定食屋に感謝だな。



居合わせた客は、モテるのも大変だなと思ったに違いない。



恋愛に臆病にさせてしまった。申し訳ないことをした。





みんな、ちゃんと人の目を見て会話しているか?




じゅて~む