Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

じゅて~む

じゅて~む エッセイ編 第24夜

2020.10.02 13:41












【あらすじ】



N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。



タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー





まずは自己紹介から。





スーパー銭湯に来た。



風呂に入りたいわけではない。



目的がある。



サウナで痩せる。




サウナなんて久しぶりだ。幼い頃、親戚のおじさんに連れられて入って以来だ。





しかし。



「サウナが先か、水風呂が先か。」



俺は銭湯の入り口で立ち尽くす。



堂々巡りの議題に頭を抱える。



しかし。銭湯の入り口で頭なんて実際に抱えてみろ。



洗い場でもないところでシャンプーを始めたと心配されてしまう。



だから俺はとりあえず、腹を抱える。重たいが仕方ない。



「ニワトリが先か、卵が先か。」



「サウナが先か、水風呂が先か。」



サウナを利用する際に、誰もが一度は悩むんじゃないか?





俺は、迷い箸は絶対にしない。行儀がいいのだ。



迷ったら、迷い箸のスピードですべてのおかずを口に運べば良いだけのこと。



その俺が今、迷っている。





苦手なものからやっつけるか。好物からやっつけるか。



敵からやっつけるか。味方からやっつけるか。





サウナは苦手だ。蒸されているような気持ちになり、蒸し物といえばシュウマイと思い、シュウマイを食うか?いやせっかくの中華だ麻婆麺にしよう・・・と思い立つも、それから体を洗ったり、服を着たり、車を走らせたり、それからでないと中華料理屋に飛び込めない。サウナの悪いところだ。



しかも、せっかく着た服が後ろ前だった場合、どうする?



ワンクッションどころか、中華まで何クッションもある。クッションは多いと良くない。ソファがクッションで埋まってしまう。



サウナが苦手という話だ。





一方、水風呂。



入ったことはないが、風呂と銘打つからには、温かいに違いない。



気持ち良さそうではないか。



俺の好物に成り得る。





さて、苦手からやっつけるか、好物からやっつけるか。



全部後回しにしても良いのだが、明日、健診があるのだ。



だから一瞬にして痩せる必要がある。一夜漬けならぬ、一夜干しだ。わかるか、この冗談が。



達太の一夜干しだ。





おや。



はて。



自己紹介か。



俺は達太。39歳、会社員。



健康年齢は65歳。



男らしく、グルメらしく、ほんじゃまかの石塚さんのそっくりさんらしく、食生活を営んでいたため、様々な数値が高い。



3歩進んで息切れだ。



よって、65歳。定年間近だ。年度末には壮大な送迎会が催されるだろう。



俺は焼き肉屋がいい。



だがきっと許されない。もっとパーティのような会になる。賞状を受け渡すにふさわしい会場・・・。





花束をもらうだろう。30代の女性社員か、会長か、部長から。



万一、30代の女性社員からだった場合、気まずい。



うちには30代の女性社員は、おそらく2人。



うち2人が俺の同期だ。歳も一緒だ。56年生まれだ。



彼女らは「宮村さん40年間お疲れ様でした。」と言って花束をくれるだろう。



花束を渡しながら、俺のどんよりした目を見て「ありがとう」と言う俺のぶ厚い唇を見て、ハッとするだろう。



なんで同い年で一緒に入社したのに、もう定年なの???



と。



だから女は面倒臭い。



男の生き様に口出しはするな。



だが女を安心させるのも男の仕事。



船として大海原に出た男を、港で待ち安心させるのが女だが、それも男の仕事。





同い年の彼女らが花束の係になったときのため。



その万一のために、紳士である俺は、痩せて健診で62歳を叩き出し、定年のパーティーを3年後に先送りする。





そろそろ選ぶときが来たな。



「ニワトリが先か。卵が先か。」



実はこの議題には答えがある。



親子丼など作るから、そんな悩みが発生する。



カツ丼にすれば良い。



「カツを揚げるのが先。それから卵とじに。」





サウナが先か、水風呂が先か、には答えが無い。



自由だ。



俺はスーパー銭湯の中を練り歩き、迷いつつも、迷わず水風呂に浸かる。





冷たくてびっくりした。



風呂と銘打つには温かいはずが。



体が冷えては風邪をひいてしまい、健診で70歳を叩き出すかもしれない。



俺は迅速かつ的確に、水風呂の栓を抜く。



徐々に水位が下がる。俺の腹の半分まで来た。



俺は思い立ち、立ち上がる。



水位は俺の太ももあたりだ。冷えも幾らかマシになってきた。



水風呂は苦手だ。寒いな。





さて、これからサウナで痩せるとするか。そしてシュウマイを求め、中華料理屋へ行き、麻婆麺か、麻婆飯か。





健診結果が楽しみな、食欲の秋。



俺という芸術の秋。





じゅて~む