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じゅて~む

じゅて~む 第3夜 【強】

2020.09.21 04:00












【あらすじ】



高木ブー氏にそっくりの青年・達太は、回転寿司屋で美女に一目惚れをしてしまう。



しかし、久々の恋愛で達太は混乱したのか何なのか、カウンター下に体を捻じ込み、そして再びカウンターから這い出る際に、頭を強打し、気を失ってしまう。



そして目覚めた達太が居たのは、なんと、肉屋の自宅部分。



気を失っていた達太が「肉、肉、中田精肉店、」と繰り返し、周囲の「中田精肉店さんの息子さん?」との質問に、コクコク頷いたため、運ばれてきたのだった。



しかも達太は記憶喪失になっていて、一目惚れした美女のことはすっかり忘れており・・・。



せっかくの恋愛小説だというのに。





起承転結ではなく、主人公達太の好きな言葉「弱肉強食」にのっとり展開する物語、今夜は「強」



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肉屋の主人に、電話番号の書かれたメモを一切れ、手渡された。



それにトンカツを4枚。





2枚は自分で頂く。



wカツカレーにするか、wカツ丼にするか。wカツ定食にするか。



2枚は疲れるな。いちいち、wと銘打つのが面倒だ。



そして。あとの2枚は誰かに手渡さなければならない気がする。





それよりこの電話番号だ。



俺を肉屋の息子として、肉屋に送り届けてくれた人物。



勘違いとはいえ、素晴らしい体験を俺に与えた。



俺は肉屋の布団で一休みできたのだ。



肉屋の布団、肉屋のフェイスタオル、肉屋の風呂場。肉屋の廊下!



うっとりする響きだ。



硬派な俺が肉屋に婿入りしても仕方がない。





だが俺はいつでも冷静だ。感謝こそすれ、関わってはならない人物も世にはいる。もちろん、肉屋のことではない。肉屋にはどんどん関われ!





俺を助けた人物。



090ー××××ー××××





090??



何県だ。



俺の住む新潟は025だ。



では他県か。ならばトンカツ2枚は手渡せない。



俺にトンカツ4枚食えというのか。お安い御用だ。



今、せっかくだから揚げたてを頂戴しようと早速1枚食べた。あと3枚。





090は何県だったか。思い出せない。



・・・思いだした。茨城県だ。





俺は茨城へ向かう。



女に会いに。



肉屋はその人物が女だとは述べていない。だが女だ。文字が美しかった。文字から薔薇の香りがした。



トンカツの匂いをすり抜けて、薔薇の香りがしたのだ。





茨城へ向かう道中は、暇だった。



女にふさわしい男になることに、道中を費やすのもありだ。



念のためだ。女の機嫌をとるのは面倒だ。ならば女に有無を言わさぬ男になるのが手っ取り早い。



やはり「強さ」か。





茨城へ向かう車中で培える「強さ」なんてあるか?



ほぼ、無い。



だが諦めることは猿でもできる。俺は探す。「強」の文字を。





すぐ見つかった。



冷暖房の「強」だ。



俺は冷房を「強」にする。



寒い。とても寒い。トンカツがあることを思い出し、食べたが、寒い。



だが「強」を続ける。息が白い。





パーキングへ一旦入り、麻婆麺を食べる。しっかり温まった。





そして30分走ったころ。



再び、寒さが俺を襲う。



加えて眠気まで。



これは映画でいう死を意味する。



あくまで映画の中だ。



日常では寒くて眠くても、人は死なない。



悲しい事に、秋冬は寒いし眠い。そして人はそれでも元気だ。





だが寒い。もう駄目だ・・・冷房を「弱」にしよう。



と俺が諦めかけたとき、「暖房」の文字が目に入る。



俺はニヤリを笑う。



ニヤニヤしながら俺は「暖房」の「強」に切り替える。




10分後。寒くなくなってきた。



20分後、暑くなってきた。



30分後、汗が止まらない。





しめた!



俺は女に会う前に、藤岡弘に似ている青年に様変わりするだろう。



汗をかいて痩せて。実は俺は、30㎏ダイエットすれば藤岡弘だ。



現在39歳だが構わない。



男という生き物に、若さは必要ない。



もちろん女にも、若さは必要ない。



若さが必要なのは子供と子犬だけだ。





俺は冷房の「強」と、暖房の「強」とを交互に使いこなし、茨城へ辿り着いた。



強い男になっていた十分に。女は惚れるに違いない。





女の携帯を鳴らす。090・・・。



は?



携帯。喉元に引っかかるものがあるが、ただのトンカツの食いすぎだろう。





女が出る。



「もしもし。助けてくれて、助かったよ。宮村達太だ。お礼がしたい。今、茨城の国道沿いにある『焼き肉ソナタ』の駐車場だ。君に会いに茨城の焼き肉屋に来た。」




女という生き物は、いつの時代も男を翻弄する。



女はなんと、新潟県にいるという。



バカな。



では焼き肉ソナタは一人で楽しむしかないのか。



では一人で楽しむか。





俺は火力を「強」にする。



「強」に設定慣れしてしまった。もう後戻りはできないだろう。すべて「強」で焼く。



トントロの脂身に「強」の火が燃え移り、火柱ができ、俺の前髪はチチチと焼けた。



楽しんだ。





女が茨城にいなかった。



どこにいるんだ女は。



新潟にいてくれれば話は早いんだが。



電話では新潟県にいると女は言っていたが。





茨城の夜。





ふと電話帳に目をやる。



茨城の電話番号の数々。



029、029。



肉が食いたくなる市外局番だ。



090では無い。




次回は最終回。「食」へ続く。



ほぼ恋の相手と過ごしていない達太、どうなる、その恋愛。