Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロマン派の時代34-写真登場「自然の鉛筆」

2022.06.02 11:29

1844年史上初の写真集「自然の鉛筆」が、イギリスのウィリアム・タルボットによって出版された。この本は、写真というものを初めて大衆の目の前に登場させたのだが、白黒写真で24枚しかないので残念ながら売れ行きは悪かった。しかしこの時期は写真技術の黎明期である。

1839年、フランスのタゲールが、いわゆる「銀板写真」の技術を発明、この技術は一世を風靡し、ヨーロッパで肖像写真ブームが起きる。日本でも来航したペリーの黒船が、銀板写真で幕末の人物や風景を撮影した。しかし「銀幕写真」は一枚しか写真として残らない。

タルボットの発明したカロタイプは、ネガポジ方式で複製が効いた。従来の「複製」というのは、手間がかかり、複製はあくまでニセ物である。ところがこの技術は、すべて同じ物であり、複製の概念を変えた。そして現代に至っては、コピーから別のものが生まれ、何が本物なのかわからない時代となるわけだ。

1851年になると、安価な湿式コロジオン法が生まれ、この写真はクリミア戦争での報道写真ともなった。また西洋が進出した東洋の写真ともなって流行した。日本では62年に長崎で上田彦馬が上田撮影局を開き、有名な坂本龍馬の写真はここで撮られたものである。