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タラントディスカバリーラボ

キャリア開発セミナー40:自己動機づけ(モチベーション)(その4)

2022.06.04 00:48

 最後に「認知のアプローチ」をお伝えします。

「認知のアプローチ」の代表格に「達成目標理論」という理論があります。

目標理論とは、「目標」という切り口によって動機付けを考える一連の理論のことです。

目標設定理論で有名なロックによれば、「人は絶えず目標を設定し、その目標に到達しようと試みる。人の勉強や仕事に対する動機付け及び行動の違いは、目標の違いに由来する。」としています。目標の具体性や困難度がパフォーマンスに影響するのはもちろんですが、目標の重要性や自己効力感、また個人の努力や粘り強さなど、目標自体を取り巻く条件、また遂行する人間の特性なども諸要因として影響します。成果に対して満足感を得て、チャレンジ意欲が増加する循環が期待できます。

さて「達成目標理論」ですが、この理論も人が課題に対してどのような目標を持つのかによってモチベーションやその後の行動、パフォーマンスに重要な影響を与えると考えます。

その目標には2つのタイプがあります。個人視点のキャリア開発の項でも触れましたが、今一度具体的な例を挙げて考えてみましょう。

学生が勉強をすることを目標にする場合、1つは学習や理解を通じて能力を高めることを目標とする「熟達目標」と呼ばれるもので、もっと内容を詳しく知りたい、知識を獲得したいから勉強する、といった目標がこれに当たります。もう1つは、他者との相対的な比較によって高い能力や評価を獲得することを目標とする「遂行目標」と呼ばれるもので、親や先生に褒められたい、周囲よりも悪い点数を取りたくないから勉強する、といった目標がこれに当たります。

熟達目標を志向している人は、失敗に直面しても、それを失敗と捉えることは少なく、今後の成長の糧と捉えることができますが、遂行目標を志向している人は、上手くいっているときはいいけれども、ひとたび失敗を経験すると、否定的な感情や自己の能力を悲観するようなマインドに陥り、将来の成功期待を低めてモチベーションを低下させてしまうことがあります。そして遂行目標志向タイプは、自分の立ち位置をいつも他者との比較で捉えようとするために、常に他者のパフォーマンスを意識して相対比較し、かなわないと感じると、それだけで課題への取り組みを避けようとしてしまいます。

知能観の視点でももこの2つのタイプは異なっていて、熟達目標志向タイプは、「頭の良さとは、努力によって変化しうる可変的なもの」という増大的知能観になりますが、遂行目標志向タイプは、「頭の良さは生得的で変わらない」という固定的知能観になります。

遂行目標自体が悪いというわけではありません。「良い成績を取りたい」、「先生に褒められたい」というポジティブ遂行目標はモチベーションを増加することにも繋がりますが、「親や先生に叱られたくない」「悪い成績を取りたくない」というネガティブ遂行目標は、モチベーション低下に繋がりやすいのです。

会社でも全く同じですね。「上司に叱られるから仕事する、あるいは仕事をしているふりをする」「仕事が増えて責任も重くなるのは嫌」といったタイプの社員に、モチベーションが高いタイプがいるとは思えないです。

現在、働き方の上で在宅勤務が主流になってきていますが、それに伴いマネージャーは部下の姿勢を見ることは難しくなっていきます。でも仕事に対し、「監視者がいるからちゃんとやる、監視者がいない自宅だから手を抜く」という思考では、成長の基準が他者任せで自分不在です。自らを制御し、自分が主体となって自分の成長にモチベートしていくこと、小さな損得に迷わずに増大的知能観を持って、苦労しながらも愚直に自分の成長を積み重ねていけるような、そんな歩みをしたいものです。