行政法のお勉強 第2日
第2節 行政の観念
1 権力分立と行政
※憲法では、国家機関と国家権力の配分において、
①国会には立法権(憲法41条)
②内閣には行政権(同65条)
③裁判所には司法権(同76条)
を分配して割り振っている。
⇒憲法に示された権限の配分にかかる基本的指針をとおして、権力分立は三権分立とほぼ同じものと理解されている。
※学説においては、この伝統的である理解を前提として、行政においては、国家作用の中から立法作用と司法作用を除いたもの、という消極的な位置づけがある(控除説)。
⇒これに対して、行政の内容を積極的に捉えて、「現実具体的に国家目的の積極的実現を目指して行われる全体としての統一性を持った継続的な形成的な国家活動」と定義するもの(積極説)…学説においては前回に触れているので、詳しい説明は省略。
2 侵害行政と給付行政
※近代における国家観の変化、この意味に連動している行政活動の内容の変化に対応している部分が、侵害行政と給付行政の区分とする。
【歴史的背景にあるもの-侵害行政】
※19世紀、市民革命後の近代国家において、経済的部分でアダム・スミスは自由放任主義を提唱することになる。その中で、国家の果たすべき役割は、「限定的であるべき」だという夜警国家的思想のもとで、法の役割においてもまた、国家権力を限定するべき存在であるという考えが生じた。
⇒そのような流れの中で、市民の関心の部分は、自身の権利自由に制約のかかる、侵害行政へと向けられていった。
(国家の役割は公共の秩序を維持しようとする作用-警察作用・租税作用)
【その後の背景にあるもの-給付行政】
※これに対して、20世紀にあると、「資本主義の限界」という部分が明らかになり、貧富の差も拡大して、国家が政局的に市場に干渉するという「経済政策」や、弱者の保護にあたることを意味する「社会政策」が求められるようになってゆく。
⇒この資本主義の問題を背景とする部分から生まれたのが、現代的な給付国家といわれるものであり、国家・行政の役割においては、単に公共の秩序を維持するという警察作用にとどまることなく、道路・公園、橋等をつくり、学校等を建設して教育活動を行うといった国民に便益を供与するという諸活動も要請されるようになってきたのである。
このタイプの新しき行政のあり方を「給付行政」という。
※各国の憲法典において、かつて絶対不可侵とされていた財産権について、公共の福祉による制限が出来上がり、生存権や労働基本権等の社会権と呼ばれる諸権利の部分が保護されるようになり、その後の日本の憲法では、子の社会権といわれる部分が条文で保護されることになる。