4月25日に提出した質問書への回答
私たちリプロ・リサーチ実行委員会は、新型コロナウイルス流行下の産科医療の状況、日本内外のガイドラインの確認、そのエビデンスの把握に務めて発信するとともに、2021年9月より約250名(2022年4月末時点)におよぶ妊娠出産当事者や家族および医療者の経験を、アンケートやヒアリング調査によって収集してきました。
その結果をまとめ、2021 年 10 月 21 日に厚生労働省に「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」がエビデンスに基づいたものとなるよう改訂を求める提言を届け、各関連学会にも質問書を届けました。
委員会を立ち上げた2021年9月から、私たちは妊娠・出産の当事者である女性に選択する機会がほとんどないこと、エビデンスに基づく産科ケアの対応がなされるための体制がないこと、付き添いや立ち会い分娩と面会の禁止、不必要な医療介入、産後の母子分離といった対策が多くの施設でされる現状を指摘してきました。
残念ながら、その多くはまだ十分に改善されておらず、自治体や地方ごとにばらつきある、とても管理的な施設の対応が目立ち、女性は妊娠から産後を通して孤独や不安を抱えて過ごすことを強いられ、安全でポジティブな出産体験を得る権利は保障されていません。
委員会は、これまで多くの女性や医療者、団体、政治家、メディアの方などの協力を得ながら相談会を行いながら活動を形作り、今年4月25日に改善を求める約 11.700 名の署名と併せて、再び提言と質問をまとめ、厚生労働省母子保健課に提出、のち記者会見を行い、各関連学会にも同様に質問書を届けました。
以下、
〇厚生労働省に提出した提言と質問書
〇厚生労働省からの回答
〇各関連学会に届けた質問書
〇回答(3つの学会より)
の順に公開し、
最後にリプロ・リサーチ実行委員会の受け止めと、今後の活動について述べます。
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提出日: 2022年4月25日
提出先: 厚生労働省、日本助産師会、日本助産学会、全国助産師教育協議会、日本産婦人科感染症学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本看護協会、日本小児科学会、
日本周産期・新生児学会
回答期限:5月末日
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【厚生労働省への提言・質問書】
【厚生労働省の回答】
【関連学会への質問書】
【回答:日本周産期・新生児学会】
【日本助産学会】
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貴会からのご質問に関して、本会からは、項目cに関連する回答をいたします。
【ご質問cに対する回答】
日本助産学会では、2022年度内(期日は未定)、分娩施設における助産師の支援に関する実態調査を実施する予定です。
妊娠期の支援(出産準備クラス、個別相談等)、分娩期の支援(家族の参加への支援、早期母子接触等)、産後の支援(授乳に関する支援、家族の面会等)に関する実態調査の計画があります。
調査では、COVID-19感染拡大による中止、変更に加え、新たに開始した支援についても調査する予定です。
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【日本小児科学会】
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リプロ・リサーチ実行委員会
ご担当者様
ご意見ありがとうございました。
公益社団法人 日本小児科学会
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【回答に対する私たちの受け止め】
厚生労働省の回答に対して:
今後利用者のため、より適した現場環境のために改善していくという印象は薄く、国が現場の一助となることを期待して作成するのでは不十分です。
また、この手引きにより、結果的に利用者がどんな体験をしているのかや、現場での準拠状況を把握、評価せずに改訂する効果はあるのでしょうか。
ガイドラインは、医療を守るためだけのものなのでしょうか。
学会や現場に責任を託するのではなく、実態を把握し監査、評価する機関として機能し、利用者の健康の権利を考慮した、より倫理的でエビデンスに基づくガイドラインが作成されるよう、これからも求め続けていこうと思います。
委員会が提言で指摘してきた不必要な医療介入、特に帝王切開への対応について、今年3月発行の同手引き第7.1版までは、
「分娩方法は,分娩第二期短縮のため,原則的に帝王切開とすることもやむを得ないが,経産婦で経腟的分娩が早い場合もあるので,産婦人科主治医の判断による.」
との記載されており、
第7.2版(2022年5月9日発行)では
「帝王切開の適応など分娩方法については,母子および医療スタッフの安全と医療体制の維持などに十分に配慮し,個別に産婦人科主治医が判断する.」
と改訂されています。
「分娩時間短縮のため、やむを得ない」という内容が削除、変更されてはいますが、意図することはこれまでとほぼ変わらず、やはり不十分だと考えます。
女性と赤ちゃんのためのケアとなるために、帝王切開の選択は女性の健康状態において医療的必要性がある場合に限り対応されること、感染を理由にその対応がされるべきではない、というエビデンスに基づく認識が広がるよう、今後も引き続きその普及活動を続けていきます。
また、施設の方針において調査はされていますが、これらはあくまでも管理側の視点のものであり、また、非常に部分的です。利用者の「出産現場での」体験に関しても実態調査を徹底し、社会で可視化しないかぎり、管理的分娩が大幅に占めることや利用者への情報提供不足、選択の余地がないなど、利用者にとって不利な現状を改善することは難しく、女性の権利は保障されません。
人生を大きく左右する出産という経験の主人公は、女性です。自分の身体について正しい情報を手に選択できること、選んだ人に出産に付き添い・立ち会ってほしいなどの希望が尊重されること、不必要な医療的介入によってポジティブな体験をする機会を奪われないこと。
これらは全て、その後の健康のためにも、国が守る義務があると強く主張します。
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学会から届いた回答に対して:
質問に回答いただいたとお伝えできるのは、日本助産学会のみでした。
他6学会は、残念ながら昨年と同じく回答はありませんでした。
回答がなかった学会含め、対話の場を設け、関係を築くことが必要と感じています。
【今後の活動について】
私たちの活動の主な目的は以下の3点です。
1) 医療利用者である女性・赤ちゃんと家族にできる限りの充実したケアが提供されること
2) 現場方針について医療利用者の声を届けること
3) 医療を含め、社会全体において女性の人権が守られること
学会からの調査がなされるか否か、今回の回答では十分に得られませんでした。
よって今夏、改めてオンライン実態調査をし、いつどの県で、どのようなケアを受けたか、どのような規則があったかなど、出産ケアに関するデータを集める予定です。
議員会館での勉強会の開催も積極的に行いたいと思っています。
・グッドプラクティスが唯一実践されること
・当事者・現場の声を可視化すること
・人権と、性と生殖の権利、エビデンスの情報普及
・女性の健康が政策課題となるよう、求め続けること
これらを軸に、今後も国内限らず国外の様々な分野の方との連携のもと、活動していきたいと思います。
以上
※提言・質問書/2部の実態調査結果まとめ/実行委員会メンバーと賛同者のメッセージを、資料として公開しています。ぜひご覧ください。
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リプロ・リサーチ実行委員会
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きくち さかえ
白井 千晶
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実態調査アンケート:
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スペイン語: https://forms.gle/ZeDXz3heN1e5HbfW7
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