『ハケンアニメ!』
「あれすごかったよな!」「な!」
みたいな上っ面な感想文句を垂れ流している有象無象が現れるが、その「あれ」が一体なんなのか分からないまま進行する本作。
俺はオタクが嫌いと言って久しくなるが、どうしてオタクが嫌いなのかはいまいち思い出せず、でもこの映画に出てくる有象無象(アニメを見ている視聴者がニコニコ動画コメント演出亜種みたいな登場の仕方をする)はどうしても好きになれないのが多かった。そもそもそんなに、他者と感想の語り合いとかするか? でも今しているこのブログとかそんなんじゃない? まあ確かに。
さてこの映画は『同じ時間帯に放送されるアニメ同士が、視聴率で覇権を巡る勝負をする』お仕事ムービーである。そもそも作中作が面白くなさそうだぞ? という意見は『バクマン。』以前より禁句とされているが(そもそも作中作が面白いのであれば、そっちを書けという話もあるので)、視聴率勝負ということも相成って、「視聴者の感想」がニコニコ動画コメント演出亜種で出現するんだけど、正直そんなもん一時停止でもしない限り見れたものではないし、そもそも『見たことがないし見ることもできない作中作アニメ』が「面白かった!」「1話から伏線張り巡らされててさ……」「持ち直してきたよな」みたいな感想を出されても知らないし知れないんだよ。そんな知らないアニメの盛り上がりをCGキャラが追いかけっこしている姿で見せてくる。
まあ素直に言えば説得力がない。
だってそれが本当に面白いのか分かんないじゃん。料理漫画で美味そうな飯が一向に出てこず、食べている人間のリアクションだけ見せられているようなもんだよ。
『対決! 広東料理VSフレンチ』の悪口ですか? いや、あれは料理を出してはいたけどフレンチの料理が全然美味そうじゃなかっただけ……。
また『バクマン。』の話に戻るんだけど、バクマン。の終盤に読者投票数勝負あったじゃないですか。あれ読んでるときと一緒で、結局「その話が面白いのか面白くないのか、凄いのかどうなのかも判然としないのに、有象無象の感想だけで盛り上がりを見せて」きても、こちらとしては知らないんですよ。
一応最終回のラストシーンは見せてもらえるんですけど、それもなんか『タッチ』で「南を甲子園につれてって」だけを観るに近いというか、『あしたのジョー』の真っ白になっているところだけを観るというか、それがなんなのか分からない。
お仕事ムービーとして観るには、お仕事のシーンが結構おざなりで、じゃあ『物語をつくる作家の物語』として観るには、物語への想いを有象無象の架空視聴者に重きを置いてしまっている。
作中視聴者「面白い!」
映画視聴者「そうなんだ。すごいね!」
そんな気持ちで観れたらとてもいいかもしれない。無理かもしれない。そんな映画。
ところで主人公(丸眼鏡)が今評価されるのではなく、10年後に語られるような「挑戦」というノリで提示した最終回案がかなり軟着陸なやつで全然「挑戦」じゃあなかったし、元よりあったハッピーエンド案も味がしないやつだった。困るね。