6月9日博士課程ゼミ
2022.06.10 12:52
6月9日の博士課程在籍者を中心としたゼミの報告です。
本日は「『感性』と美術教育 (美術教育の基礎理論と方法論に関する研究論文)」(ふじえみつる著)を読み,多様なコンテクストで用いられる「感性」について,学術的な知見を参照しながら議論しました。
この論文が執筆された1990年はバブル経済終焉直前の年。世界に目を向ければベルリンの壁が崩壊した直後の時期。資本主義,消費に人々の興味が集まっていた時代に,「感性」という語の「フィーリングのよさ」は物を売る上で好都合だったのかもしれません。こうした時代背景を踏まえて論文を読むことも,テキストを深く理解するためには重要なことだと感じました。
そして,当時の日常的な用法も批判的に分析した上で,哲学,心理学,そして美術教育の文脈における「感性」の用法について論は進んでいきます。こうした論の構成も,論文執筆する上でとても参考になります。
今回のゼミでは特に「哲学」の文脈における用法を中心に議論されました。
カントやシラーの論考を「感性」をキーワードとして整理して論じておられるふじえ先生の論文を読み,ゼミで議論することを通して,私が過去に読んだ『判断力批判』や『人間の美的教育について』の印象が少しずつ変わっていき,深まっていくように感じられました。
知識が更新されていく実感が得られる,知的好奇心をくすぐられる時間でした。
セノオ