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タッチタイピング

2022.06.12 00:59

森 美穂, 他. 高校生におけるタイピングスキル習得状況の実態調査. 研究報告教育学習支援情報システム. 2019;16:1-5. http://id.nii.ac.jp/1001/00200343/

現行の小学校学習指導要領総則[1]では,小学校の段階でコンピュータのキーボード等による文字入力について学ぶものとされている.しかし,2013 年から 2016 年にかけて行われた文部科学省の情報活用能力調査[2]において,1 分間あたりの文字入力数は,小学 5 年生で 5.9 文字,中学 2年生で 15.6 文字,高校 2 年生で 24.7 文字と,十分とは言い難いことがわかっている.
[1] 文部科学省(2008).小学校学習指導要領解説総則編.
[2] 文部科学省(2016).情報活用能力調査.


布施雅彦. 福島高専の情報基礎科目におけるタッチタイピング学習での学生の傾向について. 情報教育. 2019; 1:39-43. https://doi.org/10.24711/rrie.1.0_39

学生の傾向として,以下のことが考えられる.
①入学時段階で,すでに身につけた学生(若干名)
②我流で,正確な運指ではないが高速で入力できる学生(1割程度)
③授業の当初からコツコツと言われたとおり練習を開始できる学生(2割程度)
④早く上達したいと必死に取り組む学生

⑤上達してくると楽しくなって積極的に取り組む学生

⑥周りが練習をしているので,マイペースで練習を初めた学生(3割程度)

⑦運動能力にまかせ,正確さを無視し力任せに練習する学生(当初は多数)

⑧なんとなく,他が忙しい,後回し,理由はわからないが練習する気分でない,練習が嫌,自分一人では練習できない学生

⑨切羽詰まらないと本気で練習をしない学生

⑩練習を諦める学生

①〜⑤は特に心配はないが,⑥は練習ペースの管理が必要,⑦〜⑩は,どのように,発見し声掛けし指導していくか?となる.


しかし,近年のスマートフォンの普及により,学生の身近な ICT 環境が一変し,日頃から PC を起動しなくなった.キーボード離れの影響で,大学や企業等でタイピングリテラシーについて警鐘が鳴らされるようになってきた.木村,近藤,長澤(2017)の大学での入学時の調査においても,約 85%の学生が,タッチタイピングを習得していないことがわかる1)2).
1) 木村修平・近藤雪絵(2017),“パソコンが使えない大学生”の実態に迫る―立命館大学 6 学部の横断調査に基づいて―,2017 PC Conference, 279-282.
2) 長澤直子 (2017),大学生のスマートフォンと PCでの文字入力方法,2017 PC Conference, 107-110.


文部科学省では,「児童生徒に身に付けさせたい情報活用能力」として,小学校では,「10 分間に 200文字程度の文字が入力できる」,中学校では,「10 分間に 300 文字程度の文章が正確に入力・編集できる」と目標においている.図1は,文部科学省が H27 年12 月〜H28 年3月に情報活用能力について,調査した報告書のグラフである3).小学校で目標としている1分間で20文字程度には,全く届かず,中学校においても達成率は 10%未満である3).
3) 文部科学省(2017),情報活用能力調査(高等学校) 報告書,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1381046.htm



松山 智恵子. 情報リテラシー科目の履修者にみる新入学生のコンピュータとの親和性とタイピング力. 椙山女学園大学文化情報学部紀要. 2018;18:99-111. https://cir.nii.ac.jp/crid/1570291229583726208



神谷勇毅.  知識定着を狙う情報学演習の授業デザイン: 保育者養成校における演習実践.JSiSE研究会研究報告.2018;33(1):35-38. 
https://www.jsise.org/society/committee/2018/1st/TR-033-01-006.pdf


教育面におては、これまでの教育における情報の導入経緯を見返すと、2003年より高等教育において科目「情報」が設置されたことに始まり、2012年からの新学習指導要領に基づき中学校の技術家庭科において「プログラムによる計測・制御」が必修化された流れと、間もなく導入が始まる小学校でのプログラミング必修化を見ると、次の教育においてのICTの波及先は幼児教育とも感じられる。
クラス編成自体が困難であり、技能格差が見られるクラス内においての演習授業は、技能格差を埋める工夫を施し、どの技能レベルの学生であっても着実な知識、技能定着を図ることが重要である。情報学に対し苦手意識を持つ学生の多くが、演習時の作業量に原因があることがこれまでの調査で明らかになっている。作業の多さに忙殺され、入力し切る事に注意が向き、習得するべき技能が定着しないまま授業が進行してしまうという悪循環の中に置かれ、それが苦手意識に繋がるようである。しかしながら、実際の作業を経ることで初めて技能、知識定着の効果が出る為、演習作業そのものを無くすことは出来ない。着実な知識、技能定着を促すことで機能格差を埋めることにも繋がる。そのためには、授業で取り扱う内容を精査し、演習課題量を長絵師氏、演習に至るまでの解説時の理解を十分に確保することが知識定着を促すスムーズな授業進行には欠かせない。



佐々木 裕子, 他.新入生に対する基礎的なコンピュータ・リテラシー教育の背景と満足度調査.白百合女子大学研究紀要. 2019;55:19-38. http://doi.org/10.24510/00000250



松本 直子, 他.看護学部の初年次教育における情報リテラシーの授業の再構築.聖路加国際大学紀要. 2021;7:136-141. http://doi.org/10.34414/00000058



森幹彦, 他.教科「情報」の履修状況と情報リテラシに関する大学新入生の状況―平成24年度京都大学新入生アンケートの結果から―.インターネットと運用技術シンポジウム2012論文集 .2012;23-30. https://cir.nii.ac.jp/crid/1573105977901029760


▼文部科学省.小学校学習指導要領解説.https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1387014.htm

【総則編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説.https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_001.pdf (2017)

1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善
(3) コンピュータ等や教材・教具の活用,コンピュータの基本的な操作やプログラミングの体験(第1章第3の1の (3))より

(3) 第2の2の (1) に示す情報活用能力の育成を図るため,各学校において,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え,これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。また,各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。あわせて,各教科等の特質に応じて,次の学習活動を計画的に実施すること。
ア 児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動
イ 児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動