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中村鏡とクック25cm望遠鏡

中村要と R.スコフィールドの往復書簡(7)

2022.06.15 09:13

中村要と R.スコフィールドの往復書簡

(52)1926年7月14日 中村よりスコフィールドへ(手書き)

拝啓

13日付のご丁寧なお手紙、どうもありがとうございました。7月5日付のお手紙は受け取りましたが、返事が遅くなりました。山本博士は現在天文講演のため満州におられ、7月20日頃京都にお戻りになる予定です。また、Pickering教授から報告書を受け取りました。非常に興味深い内容で、ご訪問の折には「the Mars」についてお話をしたいと思っています。25日にお出でになるという申し出に感謝します。反射望遠鏡の機械的な作業は、塗装を除いて2日以内に終わる見込みです。従って、25日に一緒に神戸に行くには良いタイミングだと思います。私は午後から神戸に行きたいと思いますが、所用がありますので、次回の手紙でその時間をお知らせしたいと思います。

それでは、よろしくお願いします。

K. 中村

(53)1926年7月22日 スコフィールドより中村へ 

中村様へ

14日付のお手紙を拝受し、次の日曜日にいらっしゃるかどうかわからないとのことでしたので、お手紙を待っておりました。実は4インチ反射鏡はすぐに必要ではなく、高高度観測以外は2インチで十分なので、急がないで結構です。土曜日の朝までに連絡がない場合は、いらっしゃらないと判断します。

よろしくお願いします。

敬具

(54)1926年7月22日 中村よりスコフィールドへ(手書き)

拝啓

25日(日)、4 1/4 インチ太陽観測用反射望遠鏡を持って、13時50分に三ノ宮駅に到着する予定です。

本体は今日完成しましたので、明日テストしたいと思います。製作費用は同封の申請書通り55円でした。これは少し高いような気がしますが、鋳造用の木型代と鋳造代がかかります。このような新しい単一案件の場合は仕方がありません。4 1/4 インチ反射鏡と1 1/8インチ(28mm)平面鏡の自作価格は25円です。したがって、この反射望遠鏡は80円ですが、輸入品に比べれば安いです。取り付けの詳細については、当日お伺いしてお話させていただければと思います。

よろしくお願いします。

敬具

K. 中村


(同封請求書)

(55)1926年7月27日 スコフィールドより中村へ

親愛なる中村さん

私は昨晩、初めてあなたの4 1/4インチ反射鏡を土星(これはかなり良いテスト天体です)に、私のスタインハイル・モノセントリック(100倍)を使って試してみましたが、画像のシャープさに驚きました。また、今朝、太陽に38倍で試してみましたが、絞りを3/4インチ(偏心)に絞っても、半暗部の細かいフィラメントがくっきりとシャープに映し出されました。このような短焦点鏡を作ることの難しさを考えると、あなたの仕事のすばらしさを本当に讃えなければなりません。この鏡は、4.5インチのエリソンと同等かそれ以上のものです。プロミネンスの観測も試みましたが、雲に阻まれて失敗しました。光学的には非常に満足していますが、機械的な部分については1、2点批判をさせていただきます。ドローチューブがまったくもって細すぎます。普通サイズのハイゲンスアイピースは使用できません。私の場合は(as I have a triple no sepiece?)なので関係ないのですが。私の8 1/2インチカルバーは、あなたの6インチ反射鏡の良い基準となり、またカルバーのフラットマウント方式は、はるかに簡単に調整することができますので、相対的なサイズを採用することをお勧めします。あなたの反射鏡が知られ、評価されるようになったので、あなたの機械部品の標準を確立するのに良い時期です。

太陽はまた非常に活発で、SE象限内の新しいグループは、明るい核を持つリーダーとして非常に注目されています。

よろしくお願いします。

敬具

(56)1926年7月29日 中村よりスコフィールドへ(手書き) 

拝啓

この前の日曜日は、天文談義で大変盛り上がりましたね。

接眼箱の中にあった平面鏡は、とても立派なものでした。間違いなくカルバー製で、こんな立派なものを手に入れられたことを大変うれしく思っています。一方、スターダイアゴナル用のアーヴィングの平面鏡は非常に粗悪なものであることがわかりました。加工された平面ではなく、市販の板ガラスから切り出しただけであることが判明しました。そのため、表面は不規則です。

太陽用プリズム(Sundiagonal I)は、特殊な構造をしています。このタイプは、私が知っているSteinheilの本以外には載っていません。2つの直角プリズムはバルサムで固着されています。ガラスとバルサムの屈折率はごくわずかですが異なります。そのため、固着面からの太陽光線の反射は非常に少なく、Herschel Solarのプリズムと比較すると非常に少量です。このプリズムは良好なものであることが確認されました。

反射鏡の機械部分の領収書を同封しました。

ありがとうございました。

(57)1926年7月29日 中村よりスコフィールドへ(手書き)

拝啓

私の鏡について良いレポートを得ることができ、私は非常に満足しています。私の鏡は11枚目ですが、エリソンの4 1/2インチ鏡の製作は100枚を超えました。鏡作りの経験は全く異なるものです。私の鏡面製作は経験不足で、エリソンより少し劣っていることはよく分かっていますが、一歩一歩改善できると信じています。

F6というのは写真的な焦点距離で、4 1/2インチ鏡(焦点距離475インチ、F10.5)のようなシャープな像は得られません。

ドローチューブは、確かに英国製の大きなアイピースには細すぎます。ドイツ製の24.5mm径に合わせた構造になっています。これからの反射望遠鏡製作では修正したいと思います。

また、光軸調整機構も不十分で、次回はカルバーよりも良いと思われるブラシャーの構造を採用したいと思います。

K. 中村 

(同封領収書)

 (58)1926年7月31日 スコフィールドより中村へ

 親愛なる中村様

29日、あなたの2通の手紙はちゃんと手元に届きました。カルバーの平面鏡がお役に立てて何よりです。また、あなたは現在太陽プリズムをお持ちでないと思いますので、よろしければブローニングの太陽プリズムもお持ちください。ところで、もしあなたが高倍率のケルナーアイピースをお持ちでしたら、4 1/4インチ鏡筒用のカバーと一緒にお送り下さい。アーヴィングの平面鏡の返却に、ご迷惑がかかりませんように。

28日の朝、火星を観測しましたが、8 1/2インチを6 1/2インチに切り詰めてもシーイングが悪かったので、あなたの4 1/2インチに105倍アイピース+バーローレンズ=165倍で試してみたところ、極冠はそれほど明るくありませんが、あなたの4 1/2インチは8 1/2インチより細部が見え、像は非常に安定していることが判明しました。(ちなみに、バーローレンズに異常はなく、私達が見た松葉に色がついていたのは、調整がうまくいっていなかったためでしょう。4.1/4インチでは微塵の色も出ていません。)

もし、シーイングが4インチや5インチの口径にしか適さないのであれば、世界最大の望遠鏡はそれ以上のものを見せてはくれない、むしろ口径が大きくなればなるほど、はっきりと見えなくなってしまう、というピッカリングの言葉を裏付けるように、あなたの4.1/4インチはシーイングがあまり良くない神戸で貴重な補助機材になるはずです。

あいにくの曇り空で、4.1/4インチをプロミネンス観測に使うことができませんでした。また、8 1/2インチでは方位角微動装置のバックラッシュが大きく、スリットのコントロールが難しいので、4.1/4インチをグレゴリオ架台にマウントして使うかもしれません。今日の午後、22日以来初めて2インチでプロミネンスの観測をしましたが、黒点が多数あるにもかかわらず、目立ったものはありませんでした。

敬具

(59)1926年9月6日 スコフィールドより中村へ

親愛なる中村様

Pickering教授から、彼のレポートNo.35の以下の誤植を訂正する手紙を受け取りました。

13ページ23行目、エリソン氏ではなく、私の名前が表示されているはずです。

14ページの16行目、"13番 "の代わりに "Helorus "と書いてください。

また、9月の運河のスケッチや、カリドン運河や15番運河を描いたスケッチお持ちでしたら、ぜひお送りくださいとのことです。

敬具

(60)1926年9月10日 スコフィールドより中村へ(手書き)

親愛なる中村さん

今朝、火星を観察しているとき、0時30分に次のような不思議な明るいものに気付きました。

S極冠のE端に鉤状の雲。

あなたも見ましたか?

あなたは今、火星を継続的に観測しているのでしょう。シーイングが良ければ

あなたの13 1/2 "は非常に有利です。バーローレンズの使用については、Pickering教授のアドバイスに従いました。同じシーイング条件下で、40/50%の高倍率を使用することができます。

敬具、スコフィールド

(61)1926年10月2日 中村よりスコフィールドへ(手書き)

拝啓

ご丁寧なお手紙をありがとうございました。私はいくつかの旅行でかなり忙しかったです。

火星の定期観測を開始しましたが、シーイングが悪く、火星の表面をきれいに見ることはできませんでした。13インチミラーの光学的品質は非常に優れていますが、通常の大気条件では口径が大きすぎ、精度がほとんど上がりません。私の6.5インチは、今のところ、完全なマウントを製作することが出来ないので使用できません。

天文台では12インチのクック屈折望遠鏡を注文しており、1927年初頭に届く予定です。A.ヒルガー氏のプロミネンス分光器2台が山本博士の元に届きました。単体で£6.7sとかなり安いのですが、グレーティングのグレードが低いためか分散力がかなり低いようです。興味深く使います。

よろしくお願いします。

K. 中村

(出典)

「山本天文台資料より」