出演の約3~4時間前にしている事…特に冬!編
2018年の冬もかなり乾燥していますね。目、鼻、ノド…いずれも
辛くなる季節。ドゥドゥックにとってもこの乾燥は大敵です。
オーボエや篳篥でも演奏前にリードを下準備する事が必要な
ように、同じくドゥドゥクのリードも入念にセットします。
例えば「その日の朝に楽器を持って家を出て、会場に着くまで
道中の時間で、あれこれと用事を済ませて→集合時間前に
会場に到着!その後でリードを調整すればいいかな…」
という当日の予定の組み方は、冬時期は格別難しくなります。
リードの様子を慎重に見極めてから家を出て一直線に、
寄り道もせずに会場へ向かう、という予定が組めたらベスト。
とはいえ、庶務雑務…何かと色々溜まる事もありますね。
なかなかそうはいきません。なるべく時短でリードの
コンディションを整えるには?という事で自身が
やっている調整方法(今の所一番良かったと思える方法)を
書いて遺しておきます。
次第にドゥドゥックを演りたいという
方が増えてきた時にせめてもの参考になれるよう、違う
気づきがあったら随時修正する記事にします。
「さあ、リードの最終調整しようか」と腰を上げるのは
大体出演時間の最低でも3~4時間前くらい。その時の状態は写真①です。
ご覧頂くと分かりますが2枚のリードはお互いがピッタリと、
それはもうピーッタリと付いています。境界線は見えて
いますが隙間はありません。
この状態では空気が全く管体に入らず
演奏そのものができません。
目標にする状態は写真②。
これくらいの隙間を2枚のリードの間に作ってあげたいんですね。
最適な隙間と考えられる距離は「0.8~0.9mm」。
「0.何ミリ単位の細かい調整を?」という切り口で
考えてしまうと途方も無い作業のように見えてしまうけど、
「1mm開いていたら若干空きすぎかな?」という感覚を
頭に置いてこれから解説する作業を行うと意外なほど簡単に
その開き具合を感じる事ができるかと思いますよ。
ダブルリード楽器、例えばオーボエや篳篥、韓国のピリ等、
そしてドゥドゥックはリードに「適度な水分が含まれる」事で、
スムーズな演奏表現が可能になります。
この冬時期、最も乾燥する時期は、演奏をしない間に
リードもどんどん水分が抜け、次第に固くなっていきます。
その為、先ほどの写真のように2枚のリードがピッタリと
くっ付いてしまう訳です。
さあ、そこで前述のオーボエや篳篥、ピリ等は直接
水分やお茶etcに浸したり、霧吹きで吹き掛けたり等々して
リードに水分を含ませて柔らかくしていく訳ですが
…ドゥドゥックには同じ方法が通じません。
「水分に直接リードを浸すとすぐ弱る、ヘタる」と仰る製作家や
プレイヤーもいらっしゃる程。そして事実、ドゥドゥックの場合は
確かにそうでした。鳴らなくなる、ピッチが定まらなくなる等、
様々な形でリードの寿命が縮まります。
そこで「僕の場合は」ですが「お湯の湯気を吸わせる」
ようにしています。写真③のように手で持って偏りなく
お湯の湯気を吸わせます。
これはもう、お茶やコーヒーを淹れるついでの魔法瓶の中の
お湯を使うみたいな軽いノリで構いません。
1~2分ほど湯気に当てると、写真④のように、
2枚のリードの間に少し隙間が出来ます。
でもこの隙間はまだまだ狭く、0.5mmくらい。
音は鳴るけど、ピッチが高く、ビリつきの多い音色になり、
音の強弱もつけられません。ピアニッシモ特有の
柔らかい音を出す事ができない状態です。
まだまだ2枚の間隔の開きが足りません。
そして再び1~2分くらい湯気当て(当てすぎ注意!)。
そうすると先ほどの写真②のように更に2枚の
リードが開いてきます。もう一度見てみましょう。
抽象的な表現だけれども、この写真②のような
開き具合が、おおよそどちらのドゥドゥック製作家様の
リードを用いても最適となるはずです。
写真③との差は、0.2~0.3ミリくらい。
かなり微妙なミり差ですが見た目は大分変ってきます。
そして見た目だけでなく吹きやすさ、そして実際の
出音も変わります。合計で0.8~0.9ミリくらいの開きが
出たら、この湯気当ては終了しましょう。
そしてまだ終わりではありません。
ものの数分だけ湯気を吸ったとは言え、葦の繊維の
中に水分を多く含んでいます。
この「湯気を適量吸わせた直後」という状態で
演奏すると吹奏感は重たく、想像以上の息の圧力が
必要な状態になります。
さあそこで、次にするのが
「何もせず放っておく」です。
リードに含まれた水分を飛ばして、自然乾燥。
重たくなったリードを軽くする作業です。
あるいは、この乾燥させる時間を、会場への
移動時間とする事にしています。この下準備を経て、
いよいよ演奏が容易な状態になります。
会場に到着してからも、音だしが可能ならチェック。
乾燥の進みが早い時は、会場に到着して再度
リードの状態を確認した時、2枚のリードの間隔は
0.5~0.6ミリ位、写真④に近いくらいに
狭まっている事もあるかもしれませんね。
その時はなるべくリードを咥えて吹き付け、
少しずつ間隔を拡げていきます。音を出せない
環境だったとしても吹き付けてあげるだけで
2枚のリードが閉まっていくのを防げます。
出演時間がいざスタート。その後、何十分も
演奏してもちょうど良い状態がキープできると
思えるタイミング、充分に音の延びや
音色の変化が付けられるタイミングを
自身でコントロールします。
この調整方法を特に注意して行わなければ
ならないのは、冬時期。空気がかなり
乾燥している時期です。
梅雨~夏の湿度が多い時期はこれまで
書いてきた事をしなくても最適な
コンディションである写真②の状態を
キープ出来てしまう日もあります。
差が激しい…(^^;
この調整を行っている時から
出演時間が始まっています。