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粋なカエサル

自分を救うもの

2018.01.12 16:44

 現在、ゴッホの絵画は途方もない高額で取引される。「ジョセフ・ルーランの肖像画」(1889年 ミュンヘン クンストハウス美術館)はニューヨーク近代美術館に1億1100万ドル(113.4億円)で売られた。「アイリス」(1889年 ニューヨーク 個人蔵)はニューヨーク、サザビーズでのオークションで、1億100万ドル(112億円)で売られた。しかし、生きている間、ゴッホの作品に目を留めるものはほとんどいなかった。冷笑され、軽蔑され、無名のまま生涯を終えた。生前売れた絵は「赤いブドウ園」(1888年 モスクワ プーシキン美術館)たった一枚だけ。それでもゴッホは描き続けた。ままにならない人生で、自分を救ってくれるのは絵画しかないことがわかっていたから。「耳切り事件」のあと1889年5月、サン・レミの精神病院に入院。繰り返し起きる狂気の発作。

「こういう発作は、おそらく今後も続いて起きるのだろう。呪わしいことだ。・・・僕はもう、勇気も希望も持てなくなった」

 しかし、そのような絶望の淵でも、またも絵画への情熱がゴッホを救う。自分の忌まわしい病気は生涯治らないだろう、だが、最後まで闘おう、絵を描くことで、迫りくる狂気と対決しよう、とキャンバスに向かった。

「仕事が何より気を紛らわしてくれる。もう一度仕事に全力をぶつけることができたら、それが一番の治療法となるだろう」

(「アイリス」1889年 ニューヨーク 個人蔵) 収容された療養所の庭をモチーフに描いた作品。幻覚に立ち向かうために制作された。

(「ジョセフ・ルーランの肖像画」1889年 ミュンヘン クンストハウス美術館)

ジョセフ・ルーランはゴッホにとって、アルルでただ一人の親友だった

(「星月夜と糸杉のある道」1890年 オッテルロー クレラー・ミュラー美術館)

ゴッホのサン・レミ時代を代表し、彼の南仏滞在の最後を飾る作品の一つ

(「赤いブドウ園」1888年 モスクワ プーシキン美術館)

アルルの葡萄畑で夕方に人々が農作業をする様子を描いた作品