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胸部打撲の鍼灸治療

2018.01.13 13:09

◎症例

■患者 

母親

■現病歴 

昨日転けて右胸を打った。脾経の食竇・天谿、胆経の輒筋・淵腋ら辺が痛む。病院には行っていない。

◎脉作りの臨床における基盤作り 

■外虚内実側のTポイントに+、外実内虚側のTポイントに-に作用するように異種金属のてい鍼を超衛気の抵抗でとどめて補い気至るを度として徐に抜鍼。

■柳下てい鍼で右脈会左脈会を補う。

※脈会を使うと脉診だけでなく腹診も診やすくなります。必ず左右ともやってください。片方だけだと経絡調整になってしまいます。目的はあくまで脈会です。男は左右、女は右左の順で補います。


◎診察診断

■腹診

腎虚、肺虚、脾実、心実、肝平。

■脉状診

浮・数・虚。

■比較脉診

腎虚、肺虚、脾実、心実、肝平。

■証決定

四診を総合的に判断し最終的に脉証腹証一貫性に基づき腎虚証。

■適応側

①女性は右側を適応側とする。

②ただし病症に偏りがあれば症状のない健康側を適応側とする。

本症例の場合は右胸の痛みに偏っているため女性ではあるが健康側である左を取るべきである。

しかし発症してからまだ日が浅いため右側の生気は衰退するには至っておらずそのため健康側である左側から援護を送らずに患側で繰り広げられている邪正抗争に対して援護すべきと診て従来通り女性にとって気血がよく巡り生気の充実している右側を適応側とした。


◎治療

■本治法

銀寸三一番鍼で右復溜に補法→検脉すると腎は充実したが肺は未だ虚しているので右尺沢に補法→検脉すると肺は充実して相剋する脾と心の実が治まった。陽経を診ると左関上胆の脉位に虚性の邪が触れるので患側の右胆経を切経して最も実所見の強い外丘にコバルト寸三二番鍼で塵に応じる補中の瀉法→検脉して脉が整ったのを確認して本治法を終える。

→痛み少しマシ。

■補助療法

□奇経治療

痛む流注は脾経か胆経である。衝脉と帯脉にテスターを当てどっちの方が痛みが和らぐかを確認すると帯脉でマシになるので右臨泣-右外関に主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸。施灸後に主穴に金粒、従穴に銀粒を貼付。

→痛みさらに少しマシ。

□子午治療

胆経が主になっているので子午陰陽関係の心経を選経。反対側の左通里に古代鍼を接触し補い気至るを度としてスッと抜鍼。抜鍼後知熱灸5壮。施灸後金粒を貼付。

→痛みさらにさらに少しマシ。

■標治法

□八卦皮内鍼法。

患部の最圧痛点に皮内鍼を仮止めし、痛みが和らぐ方角を確認、一番痛みが和らぐ左斜め下に向けて皮内鍼を固定。その上から知熱灸3壮。

→痛みさらにさらにさらに少しマシ。

■止め鍼

ドーゼを調節するため中脘・左天枢・右天枢・下腹部に補鍼。

■セーブ

次回まで治療効果を保存するため百会左斜め後に補鍼。


◎経過

■直後

症状軽減。

もし夜中にうずくようなら折れてるかもしれないので病院に行くように促す。

■翌日

痛みは増すことなく、マシになっている。

病院には行っていない。


◎考察

刺絡をするともっと早く治ると思います。

とにかく痛みの場合は患部の流注を見極めることです。

流注がわかれば鎮痛効果抜群の奇経や子午が使えます、あるいは共軛や剛柔も駆使できるでしょう。

末端の井穴から刺絡もできます。

本治法でも整脉力豊かに陰経を補うと主訴に関連する経絡に邪が浮いてきます。

これに脉状に応じて瀉法を加えると経過がいいです。急性で炎症が強いからといって実邪ばかりとは限りません。虚性の邪の場合もたくさんあります。もちろん和法が適中する場合だってあります。

瀉法における脉状、浮実・弦実・塵・枯・堅・気血の滞りをしっかりと鑑別してください。

サラシは巻いておいた方がいいでしょう。