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【勇退選手インタビュー】 PR高橋洋丞 こだわったスタイル

2022.06.19 10:25

愛称・隊長に「元」がついた。

明るいキャラクターで、ウエイトルームでノリのいい音楽を流し、周りを盛り上げたPR高橋洋丞が、トヨタで8年間の現役を終えた。




もっとも本人によれば、その評価はややニュアンスが異なる。

「僕がウエイトに早めに行っていたので、音楽を流していたというのもあります。単純に空いているときにやりたかったから。自分が終わったら他の人に(音楽を)任せてロッカールームに戻っていました」



シャイなのだ。高橋は埼玉生まれの埼玉育ち。正智深谷高から大東大に進学、2013年にはキャプテンを務め、関東大学リーグ戦3位。梶伊織、長谷川崚太、小山大輝(ともに埼玉ワイルドナイツ)…。チームメートは今もリーグワンで活躍している。




就職先にトヨタを選んだのは、フィジカルなラグビ

ーに惹かれたから。

「入ってみたら、僕が思っていた通りのチームでした。自分はがむしゃらにぶつかりたいタイプ。人より多くタックルに行けるよう頑張ってました。あと、スキルはそんなにうまくないので、ちょっとでも貢献できたらな、と思ってました」


2014年度に入社。

2015年度シーズンは先発1、リザーブ9試合に出場、悪くない滑り出しだった。翌年の出場はリザーブ10試合。「インパクトを求められていたので、そんなに先発にはこだわらなかった。出させてもらったら、そこでやることをやるという感じ」




それでも近年は後輩たちに出番を譲るように。リーグワン初年度で現役生活を終えた。

「試合に出る出ないはスタッフが決めること。選んでもらうのはおまかせ。楽しくラグビーができました。30歳を超えてまでラグビーができるとは思わなかった」




第1列の例に漏れず、スクラムをこよなく愛した。

「フロントローでしか味わえない仲間意識があった。試合でフロントローは3人しかいない。それをみんなで作り上げていく楽しさ。いい経験になりました」


中でも薫陶を受けたのは、同時に引退した吉田康平だ。

「康平さんは憧れ。選手としていちばん尊敬していました。スクラムも大学のときはあまり強くなかったんですが、社会人で鍛えてもらった強くなった。成長できたかなと思います。コーチとしてはウエイトを教えてくれた佐名木さん(宗貴・元S&Cコーチ)」


高校の頃は100㌔弱。ウエイトに打ち込み、トヨタでは116㌔まで増やした。


↑ 最前列右から3人目

「これから半年かけて少しずつ落として、普通の人の体形に戻します(笑)」 


イヤーブックのアンケートの「もう一度ラグビーをするとしたら、やりたいポジション」はPR。

「他のポジションもやりたくないわけじゃないですけど、フロントローがいちばん“濃い”」


もっとプレータイムを伸ばしたかったという悔いはある。だが、それ以上に憧れたトヨタのプロップにこだわった。

「僕が入ったときのトヨタのスタイルが好きだった。新たなものを要求されたこともありますけど、それだったら終わったときに後悔するかなと。何年やってもスタイルは変えず、自分の好きなようにやった。やりきれたかなと」




最後まで自らのスタイルを貫いて現役を終えられるのは幸せだ。ちょっと不器用で、でもどこまでもまっすぐで。高橋は最後までトヨタの押しを貫いた。



 

たかはし・ようすけ/1991年8月6日生まれ・30歳/180㌢116㌔/正智深谷→大東大/在籍8シーズン


文/森本優子