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色彩

イースIX〜ジュールのその後〜

2022.08.14 01:40

「ロスヴィータ様が、処刑される…?」

その知らせを聞いた途端にロスヴィータの副官でもあったゾラは、仲間に詰め寄った。

「何故…!!」

背丈が低いのが特徴的な少年は、ゾラを宥めるように話した。

「落ち着きなよ。…ゴホッ!!」

「大丈夫か!?」

少年は身体が弱く、咳をする事が多かった。最近は、頻度が多くなって来た。

「…済まない。興奮させる様な事を…。」

「アンタの気持ちは分かるよ。…あの馬鹿が珍しく焦って居たしね。」

「アイツが…。」

少年が言う「馬鹿」と言う存在は、何かしら問題を起こしゾラの頭を悩ませて居た。

「だからさ…、一人で悩まないでね。」

「えっ?」

少年は、呆れた様に溜息を吐いた。

「ハァー…、ロスヴィータの前に自分の事でしょ。本当似ているんだから。」

自分が?ロスヴィータ様に?あり得ない。

よっぽど変な顔をして居たらしい。

「自覚無いんだ…。」

「彼女と私は似ていない。あんなに高貴では無いし、生き方も…。」

少年は、長くなりそうと判断したのか会話を切り上げた。

「ハイハイ。それはまた今度。」

「なっ!?」

「それで、似ている件についてだけど。」

少年は、無理矢理話を続けた。

「真面目に!」

そう言いながら、渋々話を聞いてくれた。少年は、その様子に苦笑してしまう。ゾラは、妙に真面目でみんなから弄られる事が多かった。

「自分じゃなくて、他人の為って所。」

「えっ。」

「また呆けた顔している。ロスヴィータの為に行動して居るから。」

「それのどこが…。」

似ているんだと聞こうとした。

「周りを見てみなよ?大抵自分の事でいっぱいだ。」

それは当たり前だ、世界は終わっている。自分の事でいっぱいになるのは当然だろう。

「でも、アンタはロスヴィータに尽くしている。…他人なのにさ。」

「そんな事は、無いさ。…打算だってある。認められたいと言う気持ちがな。」

「でも、それだけじゃない。何より傷付いて欲しくなくて足掻いているだろう?自分の為じゃない。充分凄い事だよ。」

…そんな事はないと思うのだが。

「ゴホッ!ゴホッ!」

「オイ!本当に…。」

大丈夫なのかと、聞こうとしたらドサッという音がして少年が倒れた。

「なっ…!今、医者を呼んでくる!」

そう言って、駆け出したが少年に袖を引っ張られ小さく耳元で囁かれた。

「あのさ…。」

「なんだ!?」

「無茶しない…でね…。」

「えっ…。」

少年は、弱々しく笑った。

「心配…なんだよね。ロスヴィータの事になると無茶するし。」

「そんなにしているか?」

「して…るよ。みんな言ってないけど、ロスヴィータと同じぐらい心配しているよ?」

「それは…心配をかけたな。しないように善処する。」

「するだけ?」

「する。」

「よろしい。」

「では、呼んでくる!」

走って行くゾラを少年は横目で見ながら、予感がしていた。

きっととんでも無い事を遣らかすと。

「本当なら、僕が止めたいだけどな。…未来の英雄に託すか。」

そう言って、目を閉じた。少年は、それから目覚める事はなかった。

茶髪の少年は、商店街を自分の足で歩いていた。彼は足が悪かったのだが、最近良くなり頻繁に出歩く様になった。

「全く…、父さんたら心配し過ぎ。」

ちょと歩くだけで、すぐに心配してくる。無理もないが。

「…でも、早く慣れないと。早くあの人に会う為に。」

そう言って赤い髪の青年を思い浮かべた。

そんな事を考えていたら、見知った声が聞こえて来た。

「ジュール!」

「アレ?アプリリス、どうしたの?」

「これさ。」

そう言って、黒髪を下ろしたアプリリスと呼ばれた女性は袋をジュールに見せてくれた。

「りんごに、バナナに…何?ジュースでも作る訳?」

「ああ!今日こそはゾラに上手いと言わせてやる!」

そんなアプリリスの様子を見てジュールは微笑んだ。

「変わったね、アプリリス。」

「ムッ。そうか?」

「うん。前より明るくなった。」

「なら、アドルに感謝だな。」

アドル=クリスティン、赤の王。

彼は、今日も何処かで冒険を続けているのだろうか。

きっと続けているだろう、そうしてこの街を救った様に人を救っているのだろう。2人はもう居ない冒険家の事を思い出して、会いたいなと思った。

「いつまでもこうしている場合じゃないね、アドルさんに笑われちゃう。」

「そうだな。」

そう言って別れようとしたが、ジュールは思い出した事がありアプリリスに尋ねた。

「あのさ、聞いていい…?」

「どうした?ハッキリと言うお前らしくないな。」

ジュールは、モゴモゴと口籠もっていたがやがてハッキリとアプリリスを見据えて聞いた。

「…ゾラの事、救えたって思う?」

「えっ?」

「思い出したんだ、オリジナルが何を思っていたか。」

アプリリスは、黙って聞いていた。

「倒れる最後の瞬間まで、ゾラの事心配していた。…後は未来の英雄に託すって。」

「…。」

「出来たかな?…あんまりそんな気はしなくて。」

アプリリスは、黙っていたがやがて口を開いてハッキリと答えた。

「ああ、出来たとも。」

「なんで、そう言えるの!」

「アイツの妄執を止める事が出来た。」

「でも、それは…。」

アドルさんが居ないと、出来なかったと言おうとしたがアプリリスはその答えを予想していた様で否定された。

「アドルだけじゃないぞ?…アドルだけじゃたどり着けなかった。全員いたからたどり着けたんだ。」

「そう…思って…いい…のかな?」

「いいとも、なんだ?聖女ロスヴィータの言葉が信じられないのか?」

ジュールは、思わず吹き出した。

「自分で、聖女とか言う?」

「フッ、言うさ。…お前を信じさせる為にはな。」

「そっか。…なら信じるよ。」

「そうするといい。…そうだ、せっかくだから寄って行くか?」

ジュールは、悩んだが笑顔で答えた。

「もちろん。」

そしてジュールはゾラに思い出を語った。最後までゾラを心配していた事を伝えた。

ゾラは、驚いた顔をし困った様に微笑んだ。

アプリリスの特性ジュースを飲みながら、彼らは語り合うのであった。