混交林誘導整備事業2021
2021年から奈良県の新しい事業、混交林誘導整備事業がスタートし、
下北山村では初年度ではありますが、前向きに取り組むこととしました。
この事業は、杉、ヒノキの人工林で、育ちがあまりよくないエリアに、
植えた苗に十分な光が届き、育つようパッチ状にギャップ ※1をつくり
(今回の場合、約100m2)広葉樹を植えて樹種転換するものです。
この事業を1つのプロジェクトとしてここでご紹介します。
※1 ギャップ ここでいうギャップは、新たな苗を植えるため、杉・ヒノキの林地の1区画に小さな皆伐地をつくったときの空間のことを指します。
▶︎プランニング
1)候補地の選定
この事業をどこで実施するのがよいのか?村内で、候補地を選定するところからはじまった。
2)意向調査
この事業の実施に適した佐田の山林の所有者5名の意向を伺い、事業の考えに賛同していただく。もう1カ所は滝ノ谷で了承を得た。
3)現地調査−1
仕様に基づき事業地内のどこにどのような形、広さのギャップが必要になるのか、立木の状況、下層植生、地形地質など現地調査を行い提案書を作成した。初めての試みで、現地の状況にあう樹種は何を植えればいいのか?という課題にぶつかり、自然配植の考え方にいきつく。
4)現地調査−2
現地に何度も入り、ギャップの位置を確認。実際の林齢を確かめるため、所有者ごとに1本ずつ木を伐らせていただく。樹高はのびていないが、目の詰まったきれいな年輪のものもあり利用の方法を考えさせられた。
5)苗木の手配
佐田の現場では、コバノミツバツツジ、アカガシ、山主からの要望もあったコナラ。滝ノ谷の現場では、将来的にしいたけの原木を搬出したい山主の意向でコナラを発注した。
自然配植の考えを学ぶ
定期的にZOOM勉強会に参加。専門家と佐田の作業道現場や事業地を一緒に歩き、現地の土質や樹木の育ち具合から現状の山の状態を読み解く方法等を教わる。数年前に災害で倒木した場所を防災目的で自然配植の方法で広葉樹を植えた現場や混交林誘導整備の県の試験地も現地見学。様々な大きさのギャップと植え方で、日照時間、苗の生育が大きく変わっていることが確認できた。
▶︎森林整備
1)小面積皆伐 ※2
苗木を植える前に小さな皆伐地 (ギャップ)を作っておく必要があるため、安井さんと谷内さんが現場に入り、伐採と地拵え※3を行った。下層にすでにあった将来性のある稚樹はそのまま傷つけないように残した。
2)植栽と獣害対策
山主と一緒に山に入り専門家から学んだことを実践。自然配植の方法に、山に詳しい山主さんも驚く。一緒に植栽や獣害対策のための防鹿柵を設置したことで、これからも定期的な管理が必要だと気づき、ご自身の山に関心を持つきっかけとなった。
3)間伐
切り捨て間伐 ※4の経験がない谷内さんに安井さんが指導をしながら現場に入りギャップの周りを間伐。間伐することで、現場の空気が変わった。
4)検査
最後に村と県の検査を受けて完了。この経験をふまえ、次の事業地を選定する際の目的、基準づくり、自然配植の適地適木の考えをまとめ、次年度に活かしたい。
※2 皆伐(かいばつ) 一定区画の木を全て切ってしまう事を指します。効率的に木材が収穫できる手法とされていますが、大規模に皆伐すると山肌が丸裸となるため生態系が乱れる事や土壌にダメージを与え森林破壊を招きかねない面があります。
※3 地拵え(じごしらえ) 伐採後に取り残された木の幹や枝などを整理して、安全に新たな苗を植栽できるように土地を整理する作業のこと。
※4 切り捨て間伐 間伐で伐採を実施した後に木材を搬出せず、そのまま林内に放置した状態にすること。 森林の状況によって搬出にコストがかかり赤字となってしまう時にこの方法をとります。しかし、木がしっかりと根をはり、枝葉を伸ばすためには必要な作業のひとつです。
自然配植の植栽を学ぶ
3本一組みで寄せて植えることで、生存率を上げ、早く上に伸びようとする性質を発揮させる「巣植え」の方法など、これまでの林業の植栽とは全く異なる植栽方法を学んだ。
1年目はあらゆる意味で、時間がかかり、試行錯誤の繰り返しでした。
山をどうしていくのがいいのか、現地を探すにしても、皆で何度も足を運び、
調査をして今年の候補地を選びました。
これでいいのだろうかと思うばかりでは進まないので、
専門家からもアドバイスをいただきながら、
下北山村で今できることは何か?常に問いながらの作業でした。
事業は要綱が決まっており、その通りにしなければ補助金は出ません。
ですが山のことを考えると新しいやり方、こういったやり方のほうが苗は育つのではないかと
やってみると、新たな視野も考えも生まれます。
やったことがないこと、わからないことも、やってみることで
疑問がうまれたらそれを声にだして要望として伝えることで
来年はもっと要綱がより使いやすく、山に沿ったものになることをイメージしながら
どんどん挑戦することは大事なのだともおもいました。
来年はこの経験を活かしながら、もっと広い視野と深い考えで、
山主さんの意向もお聞きしながら、取り組めるようにとおもいます。