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超人ザオタル(73)現実と真実

2022.06.21 02:20

「何かお考えのある質問なのですかな、ザオタル殿。

それもいいでしょう。

現実とはまさに今、そこに在ることです。

世界があり、私がいる。


そこで起こること、私が手に入れた姿、

そういったものが現実なのです」

アジタはそう言って自信ありげに胸を張った。

「現実とは変化するものなのでしょうか。


現実が変化するなら、真実も変化することになります」

そう私は問い掛けを続けた。

「もちろん現実は変化するもの。

変化するから、私たちは人として成長できるのです。


真実もある意味変化するものです。

変化することでそれはより高尚になっていきます」

アジタの言葉から少し自信が薄れた。

「それでは、もし真実や現実が変化するものであるなら、


以前の真実や現実は嘘偽りであったと言えないでしょうか。

真実は嘘偽りではないはず」

アジタの顔が少し曇った。

「それは揚げ足取りというもの。


真実に嘘偽りはない。

ただ我々にその時そのすべてを掴むだけの度量がなかっただけ。

そういうことですな」

私はさらに言葉を続けた。


「それには私も同意します。

真実は嘘偽りのない現実であり、

それだけで完璧で変化する必要のないもの。

ただ、人にそれを掴むだけの理解がなければ不完全なまま。


それではその人にとっていつまでも真実は不完全ということになります。

問題はそれを完全な真実に出来るかどうかです。

その真実はどこにあるのでしょうか。

人がそれを現実にすることは可能なのでしょうか。


人は世界から何かを求めて真実に近づこうとします。

しかし、世界が不完全であれば、

いくらそこから何かを手に入れても完全になることはないでしょう。

高尚な人になるかもしれませんが、それは完全を意味してはないのです」


私がそう言うと、アジタは少し黙ってから言った。

「完全かどうかが何か問題なのでしょうかな。

もちろん人は完全にはならないもの。

それでも完全を目指すところに意味があるのです。


それが道を歩むということであり、

行き着く先よりも、そこへと歩むことが大事なのです。

完全であるのは神だけでしょう。

人は神になることなどできません。


人は人としての至高を目指す。

世界で経験を積み、世界から恩恵を授かる。

そうして自分というものの完成を目指す。

人はそうあることしかできないのではないでしょうかな」