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フェスボルタ文藝部

ショートショート「ノウヘル」(DJ寝床)

2018.01.15 14:54

 ある悪人が、死にました。

 それはそれは酷い男だったので、彼の死を悲しむ者はいませんでした。

 しかし、喜ぶ者もいませんでした。彼に歯向かう者は、全て消されたからです。

 それくらい悪人だったから、当然、地獄に行くだろうな、と、自分でも思っていました。


 悪人は気が付くと、真っ白な部屋にいました。

「やあ、お久しぶりですね」

 にこやかに挨拶してきたのは、悪人が数十年前に会った男でした。

 篤志家として知られる人物で、生前は、悪人にも手を差し伸べてくれました。

 だから悪人は、彼を徹底的に苦しめ、全てを奪って捨てたのです。

 何もかもを無くし、人知れず朽ち果てたはずの男が、悪人の前に立っていました。


「……テメエがいる、ということは、俺は死んだのか」

「その通りです」男は頷きました。

「ということは、ここが地獄ってことか。ずいぶん想像と違うが」

「どうして、そのように思うのですか?」

「俺が天国に行ける筈がないからな」

 悪人はあっさり言うと、冷淡な目で男を眺めました。

「お前が地獄にいるとはな。最期まで善人ヅラしてた癖に。何をやったんだ?」

「何もしていません。苦しい一生でしたが、誰も苦しめませんでした」

「ほざくな偽善者。結果テメエも地獄にいるんじゃねえか」

 悪人は笑いながら、男の腹を蹴って、蹴って、蹴りました。

「死なせてやることもできねえみたいだな。とっとと失せろ、腑抜け野郎」

 冷酷に言い捨てると、悪人は倒れた男に背を向け、歩き出しました。


 ゆっくりと起き上がった男は、悪人の背後へ音もなく立ちました。

 ずいぶん空いていた距離も、この空間では一瞬で詰められるのです。

 男は悪人の肩に手を乗せ、そして、そのまま身体を引き裂きました。


 唐突に袈裟懸けにされた悪人が、ものすごい悲鳴とともに地面に倒れました。

 穏やかな笑みを、返り血で真っ赤に染めた男が、苦悶する悪人の顔を覗き込みます。

「私は、天国にいます。わかりませんか。ここは私の天国なのです」

 朗々と声を響かせながら、男は悪人の内臓を取り出していきます。

「神様が下さった救済、それがこの時間なのです。私はあなたをずっと待っていた」

 断続的な断末魔をBGMに、男は嬉々として解剖を続けます。

「私はかつて、人を苦しめたことがない。だから私は、いくらでも苦しめていい」

 内臓をすべて地べたに放り出された悪人の耳元に、男がささやきかけます。

「見てごらんなさい。『腑抜け野郎』は、あなたですね」

 そして男は大笑いしながら、床に広げた内臓の上で踊りました。

 悪人の悲鳴はいっそう大きくなり、突然静かになりました。

 肺が二つとも、潰れたからです。それでも死後の世界ですから、悪人は死ねないのです。


 こうして悪人は、いつまでも、今この瞬間もずっと、苦しみ続けているのでした。

 めでたし、めでたし。<完>



 いやまあ全然メデタクはないよねー!!!

 どうだった?この話。俺が作ったんだけどわりと良いっしょ?シサに富んでて。

 作者こと俺の伝えたかったテーマ、わっかるかなー?

 「悪いことをしてはいけない」とか「因果応報」とか、いろいろ入ってたよね。

 でも一番伝えたかったのはズバリこちら!

 「死ねない苦痛が一番の地獄」ってこと!

 これだけ伝われば十分!ね!はっきり覚えといてねー!

 

 じゃ、お話の時間も終わったし。

 拷問、はじめよっか。