未来豚の生産者・江原さんについて
美しい言葉「篤農」
辞書をひけば、農業に研究熱心なこと。と、さらりとありますが、日本農業が誇り高く、かくあれと願う象徴的な言葉です。地球人倶楽部がお届けしている、「未来豚」の生産者・江原さんは、まさに父子二代に渡る「篤農家」として、日本全国の養豚家に、また地域の尊敬を集める模範的農家として知られています。
国内で2つしかない有機JAS指定工場に
現社長の父である平治さんが養豚をはじめたのが、昭和26年。「農業の基本は土作りから」という考え方の基に養豚を取り入れた複合経営を開始。
以来55年。息子、正治さんが昭和52年に社長に就任されてからは、堆肥処理や浄化処理など、畜産が解決すべき課題にいち早く取り組み、環境三法が施行される15年も前から養豚の公害にかかわる課題を克服。
このまま順調に進めば何の問題もなかったのですが、次に生活者のみなさんが求めるものは、もっと本質的でもっとシンプルな安全性だと確信し、「抗生物質・合成抗菌剤不使用」の無投薬豚の生産にとりかかる。しかし、無投薬豚の生産は予想以上に難しく、降りかかる問題をひとつひとつ潰し、肉質を向上させ、満足のいく仕上がりにこぎつけるまでには5年もの歳月がかかりました。
生産性が激減し、採算は合わず、三年目には本気でやめようと思ったといわれます。しかし、「薬を使えばなんなく生産性は戻るだろうが、今まで積み上げてきたノウハウやプライドは捨てられない」。
こうして一頭一頭の固体識別管理を徹底し、病気にかかった豚は、保護豚として分離し、「生産情報公表JAS」の認定も取得し、現在は、日本で2つしかない有機JAS指定農場となっています。
無投薬豚を作る目的
近年、食を取り巻く環境は大きく様変わりしており、中でもBSEをはじめ、O157等食肉関係だけでも新しい問題が登場してきました。
また、輸入畜肉に関する残留薬物の問題と、それが人体に何らかの悪影響を及ぼすことも懸念されています。
そこで、当農場では、平成12年から全生産ステージで「抗菌性物質」をまったく使用しない飼料による生産にこぎつけました。「丈夫で元気な豚肉つくり」を目指して、限られた生産量ですが、消費者の方に「真に安心、安全な豚肉」を食べていただくために日々努力し生産しています。
ハーブ豚を無投薬で育てるきっかけ
この農場で育てられる「ハーブ豚」は家畜に給与する配合飼料に抗菌剤を一切使用せず、治療も一切行わない無投薬飼育※1です。
江原正治さんの父、故平治さんは農林水産祭・天皇杯や勲五等瑞宝章などを受章、また、正治さんも農林水産祭・内閣総理大臣賞や日本農業賞・大賞などを受賞されるなど地元でも篤農家のご家族です。江原さんからこの取組についてお話をお伺いしました。
2000年に飼料会社の獣医さんから無投薬飼育をやってみませんかとの打診がありました。試験的に100頭を無投薬飼育し出荷したところ、内臓の綺麗な健康な豚に育ちました。2001年2月すぐさま無薬飼育をスタートします。「消費者においしくて安全な豚肉を届けたい」そんな想いと、高い理想で日々生産に取り組みました。
ところが、その高いハードル故になかなか豚が安定して育ちません。また同時に売り上げも伸びませんでした。そんな状況が3年も続きさすがにやめようと思う日々が続きました。
そんな中、ある講演会に出席しました。その中で話されていたのは、抗生物質が耐性菌により利かない病気の人達が世の中にたくさんいるとのことでした。講演された大学教授に自分の養豚生産の取組と無投薬飼育をやめるかやめないかの瀬戸際である話をしたところ、その取組がいかに人の役に立つ商品を生み出しているかを再認識させられ、「美味しい豚肉を、より安全な商品としてたくさんの人に食べてもらいたい」との思いがあらためて実感でき、自信となったとのことです。
無投薬飼育を始めて4年目の2003年、農場の環境が安定したのか豚が順調に育つようになってきました。それまでは顧問税理士に無投薬飼育を早くやめるよう言われていたのが、この年の決算から言われなくなりました。
以後飼育が軌道にのり、売り上げも安定し、現在ではオーガニックレストランや大手宅配業者などでのお取り扱いもあり、えばら「ハーブ豚」未来※2の名前で全国に知れ渡るようになりました。農場や豚の免疫力強化を図り、「ハーブ飼料」給餌の結果、内臓から健康で美味しい豚肉が提供できるようになりました。
※1 無投薬飼育とは…抗生物質、合成抗菌剤、駆除剤を使用しない飼育方法です。そのため豚が病気になったり、怪我をしたりしないように最善の注意を払わなくてはなりません。
※2 えばら「ハーブ豚」未来…㈲江原養豚で生産された無投薬豚の商標登録名称。
●生産情報公表JAS認定取得
生産情報(生産者、生産地、薬剤等の飼養情報など)を消費者に正確に提供するために取得されました。生産履歴とトレーサビリティを確認することが可能です。
●主原料非遺伝子組換飼料