都立町田の丘学園に視察に行きました
町田の奥澤都議にお誘いいただいて、本日朝から都立町田の丘学園に視察に伺いました。
多摩桜の丘学園は、元は昭和60年にこちらから分校するような形で出来た学校だということで、元祖とも言える40年以上の歴史ある学園を見させていただき、村野校長をはじめ教員の皆様に様々な工夫や取り組みについてご説明いただきました。お忙しいところを、本当にありがとうございました。
肢体不自由の生徒さんたちが学年を超えて一緒に学んでおられるようすや、知的障がいの生徒さんたちが自分のやるべきことを一人でできるようになるための教員の皆様が編み出した様々な工夫がそこかしこに散りばめられているのを見るにつけ、長年の生徒指導が辿りついた生徒さんたちの自立を助ける特別支援教育の一つのモデルともいうべき姿がここにある、と感じるに至りました。
ICTを使った教育も展開されていますが、普通の公立小中とは違い、アイパッドを生徒さん一人一人に、というわけではなく、先生がアイパッドを使い、生徒さんにそのあとしてほしい図画の見本や模範を見せるために使われていました。
また、重度肢体不自由の生徒さんが、絵を描くにも自分の手元が見えにくい状況にあり、wifiやbluetoothを使って手元をモニターに映しながら、そのモニターを見て絵を描いている授業がありました。ただし、このモニターにつながるカメラが一台6、7万円するということで、決してお安くはありません。特別支援学校におけるICT化の支援の必要性を強く感じました。
こちらは、先生の模範をアイパッドに映してある動画のスクリーンショットです。生徒さんも、図画の完成図が最初にわかるのでとってもイメージしやすいですね。
特別支援学校の中でも、職業訓練コースがある南大沢学園とは町田の丘学園や多摩桜の丘学園は違うということでしたが、それでも実習室や作業室で実際に卒業後の就労につながる実習や作業はしっかり行われています。なんと、町田の丘学園の高校卒業生の就労率はなんと98%だと聞きました。その高い就労率には、卒業してから三年間は支援と連携を続けるという学園の努力や、就労先に、その生徒さんが就労するにあたって必要な学びや体制(例えば、生徒さんがやるべき工程を小さなカードにまとめて手元に置いておき、一枚ずつ開いて次に進んでいく、という学園で学んできたやり方についてなど)をしっかりとお伝えして行っているということです。実際にこのあとレストランなどで就職が決まっている生徒さんが、とてもいい匂いのするおいしそうなマドレーヌを焼いている実習室も拝見しました。少し台所用品は年季が入ってきているのかな?と思いましたが、町田の丘学園は今後平成35年度まで五年間で建て替え改修を行っていくようです。
こちらが新しく生まれ変わる予定の図です。
今は分校となっている山崎校舎も、この改築を経て同じ校舎に小中高、肢体不自由と知的障がいの生徒さん364名ほどが一緒になることができるということですので、さらに学年を超えた交流や、障がいの種類を超えた交流も生まれそうです。
いくつか村野校長に質問をさせていただきました。
東京都の障害者スポーツ普及啓発事業の一つとして、特別支援学校開放がありますが、町田の丘学園がそれに入っていない理由を伺いました。非常にシンプルに言えば、土日に校舎や校庭、体育館を開放するとなると校門から校舎から、動線全ての案内や警備を担当する教員が必要になってしまいます。今の教員の先生方にさらに負担をお願いすることは難しいということで、もし体育館やプールが単独のセキュリティ体制を持っているような施設ならば実現するのかもしれないですが、学校を休日に開くということはそれくらい人員も割くことが求められるというわけです。非常に納得の理由でした。
いじめ対策検討委員会で議論されていた、スクールカウンセラーの配置については、現在は心理療法士がいるということではありますが保護者対応なども任せられるスクールカウンセラーがもし単発ではなく派遣されるのであればありがたい、ということです。スクールカウンセラーはいじめの早期発見や解決にここ数年大きな効果を発揮しておりますが、意外とそのうち半分ほどが保護者の方からの相談である、ということで、特別支援学校での配置の必要性が少しずつ言及されているところです。
また、村野校長からおっしゃっていただいた言葉で印象的だったのは、重度の障害を持つお子さんが活躍できる、活動できる場がもっと必要です、というところです。
文化的に、また感性の面でも非常に優れた部分を持つような生徒さんも多くおられますが、なかなか卒業後に、地域の中で活躍していける場所が限定されてしまう。これについては、バリアフリー化という言葉では言い尽くせない複雑な諸問題も孕んでいると思いますが、まずはバリアフリーに始まり、行動の制限や活動の制限を少なくしていき、ゆくゆくは重度の障害を持つお子さんたちが自分の活動や活躍の場を選んでいくことができるような、受け皿の多様化が必要であると考えています。
豊かな感性を持ち、一生懸命でひたむきな努力や才能が活かされるために、都議にできることをしっかりとやっていこうと改めて思わされる時間でした。特別支援教育の課題は、特別支援教育の教員免許取得の無料認定講習などもあり今はハードルは相当に低くなっているようですが、問題は免許取得そのものではなく教育実習の受け皿が足りないという点だそうです。町田の丘クラスの、教員が160数名いらっしゃる学園でも教育実習は10名程度がギリギリだとおっしゃっていましたが、毎年必要とされ高まるニーズに追いつけと、大学の方では新たに特別支援教育コースが始まるところも多いです。しかし、その実習の受け入れ先、東京都だけで賄っていけるのかどうかは疑問符がつくところです。この教員免許の議論になってしまうと国の法律の範疇になりますが、重要な課題の一つだと認識しています。
長くなってしまいましたが、文教委員としてもしっかりと研究と議論を重ねて参ります。