事例研究(行政処分における裁量権濫用) 2022/06/28
【「ホストクラブで遊ぶため」市職員が風俗勤務30日で50万円稼ぐ…停職3か月】~ヤフーニュース
<記事抜粋>
横浜市は27日、地方公務員法に反して風俗店で働いたとして、市立脳卒中・神経脊椎センターの女性事務職員(24)を停職3か月の懲戒処分にした。
職員は同日付で依願退職した。
市の発表によると、職員は2~5月、平日の勤務外時間と休日に東京都や川崎市内の風俗店で30日間ほど働いて約50万円の収入を得ていた。
市の調査に対し、職員は「ホストクラブで遊ぶ金を稼ぐためだった」と説明した。
地方公務員法は営利企業への従事を制限しており、市コンプライアンス推進課への情報提供で違反が判明したという。
<争点>
行政処分における裁量権濫用
<所感>
公務員は、国家・地方いずれも職務専念義務を負う。
民間企業で言う精力分散防止義務である。
一時期、働き方改革の掛け声だけは勇ましかったが、公務員の兼職も認めないと説得力が全然ない。
停職3カ月の懲戒処分は比例原則違反である。
記事の職員にしてみれば、休みの日を利用してアルバイトないし副業の感覚で、一生懸命働いて得た金で遊んでいたのだろう。
がんばって働いて稼いだお金を好きに使って何が悪いのか?違法薬物を買ったりしていたならもちろん許されないが、記事を見る限り、不法な使途に使ったとはまったく記されていない。
戒告くらいにとどめておけば、しばらくはアルバイトを控えめにしていただろうし、依願退職には至らなかっただろう。
内緒で働いていた勤務先が風俗店であるとか、30日間稼働して50万円稼いでいた、といった事情だけで停職3か月という処分を下したのであれば、厳しすぎると言わざるを得ない。
停職3か月に処するのは、副業に力を入れ過ぎて本業が疎かになった(毎日遅刻するとか、ミスを連発するとか、市民に迷惑をかけたとか)という具体的事情がある場合に限定すべきだろう。
風俗店勤務をやめさせる目的で停職3か月に処したのであれば、一種の職業差別であり、平等原則違反、行政処分の目的・動機違反の裁量権濫用の疑いがある。
現行法上は職務専念義務があるから何らかの処分を下さなければならない、ということは分かる。
しかし、本件の処分は、重すぎて差別的ではないか、という点が問題である。
職員は不服申立てしなかったのか。
そういえば、ちょっと前に、どこかの消防署職員(だったと思う)が、YouTubeで収益を上げて懲戒されたというニュースがあった気がする。
これではいつまで経っても働き方は改革されない。
一人一職業の時代はとっくに終わっているというのに。