【AV新法】AV出演被害防止・救済法について AV人権倫理機構の基本姿勢(抜粋)
今、AV業界や、表現の自由を脅かされそうな人たちの間で非常に話題となっている、いわゆる”AV新法”について、AV人権倫理機構が基本姿勢を発表しました。
その内容は、法の専門家であり、AVに関わっている人ならではのバランスが取れたもので、またSNSで見られるAV女優(男優)さんの叫びもしっかりと代弁してくれているような、優れた内容と感じたので、ここで抜粋を紹介したいと思います。
※見出し部分(■)は僕の解釈、" "内が引用、原文ママです。
AV人権倫理機構のHP
◼️AV人権倫理機構のスタンス
”当機構の設立当初からの目的に沿って、業界に対してあくまで中立の法務アドバイザーの立ち位置を堅持する。具体的には、監督官庁となった内閣府あるいは各政党の国会議員からの情報提供の要請には丁寧に答える一方、AV業界のためのロビー活動に該当することはいっさいしないという姿勢をとってきた”
◼️AV人権倫理機構(志田代表理事)が内閣府・超党派プロジェクトチームのヒヤリングで伝えたこと
”「民法改正後もAV出演は 20 歳に達してから」とし、意思確認を厳格に行うことを事業者に通達しています”
”対策はあくまでも実際の被害を対象とするべきで、「AV 業界」全般を「被害の温床」と見て、自主規制を守っている事業者にまで事業が立ち行かなくなるようなルールを課すことは避けていただきたい”
”それを行えば、困窮した事業者が、適正事業者の枠から脱落して、問題を起こすグループのほうに転落してしまうおそれが生じます。この点へのご配慮をお願いいたします”
”まずAVとして非合法の組織や、AVをかたる犯罪者に過ぎないものと、適正AVとの違いを説明”
”出演強要は、自主規制開始後は、起きていないこと、販売開始後 5 年たてば女優の申請により配信停止できる制度等について説明”
”業界に対して厳しすぎる規制は、適正AV内から、脱落し、非合法の活動に走るものがでる、逆効果がおきる”
”逆効果は、禁酒法や売春防止法の導入のさいに起きてしまったことにも言及した”
◼️元々、自主規制で行なっていた「配信停止制度」の方が、新法より優れている
”「新法」で制度化された出演契約の解除権とこの配信停止制度を比較してみると、この配信停止申請制度のほうが、費用面においては女優に対してより有利、業者に対してより厳しい内容となっている。”
”したがって、自分の意志で出演・公表まで同意し、出演料もきちんと受け取りたいという出演者については、今後、適正AV内で契約解除権が行使されることはほとんどないと予想している”
”いずれにせよ、当機構は、法令で求められた以上に事業者にとって厳しく出演者の権利保護に配慮したルールとしての配信停止制度を、自主規制として今後も継続する。”
◼️新たな規制によって混乱が懸念されるが、法を遵守していく。しかし、新法は憲法違反の疑いもあると考えている
”業界の商慣習に新たな規制を加えたことによって混乱が出ることも懸念される”
”法令遵守に伴う負担を厭うあまり違法活動に走ることのないよう、そして今後も変わらず適正 AV 枠内での活動を続けてくれるよう、当機構としても強く呼びかけたい。”
”ただ、法務・法学の専門家からなる第三者団体として中立の立場から言えば、本法に、憲法に照らした場合の問題がないとはいえない。”
”初めて出演する出演者に限定
すべきものであり、出演を反復継続しているベテラン出演者には、上記の作品販売停止制度
や解除権を保障すれば足りる。この必要限度を超えて出演者と業者に規制を課している部分は、憲法 22 条「職業選択の自由」に基づく「営業の自由」に対する過剰な業態規制となっているために違憲の疑いがあるところであり、今後の議論の成熟が待たれる。”
◼️新法に期待すること
”当機構が法務アドバイスできるのは、適正AVの構成員のみである。違法なAVや、AV
をかたる犯罪に対して、この法律を活かした摘発が、警察によってなされることを願う。その部分にこそ、今回の立法の意義があると考えている。”
◼️AV人権倫理機構が、今回の立法過程で感じたこと、反省したこと、今後の動き
”業界の構成員からの直接の聞き取りは実施されなかった”
”今回の「新法」の立法過程では、被害者、それも適正AV外や、適正AVの自主規制によ
り健全化が進む以前に被害に遭われた方からのヒヤリングが中心となったため、「AV 女優」
一般に対する認知が歪んでしまったと言わざるを得ない”
”たとえば、出演女優は全員被害者
であって自分から望んで出演している者はいない、といった言説や、AV女優という職業に対する偏見を助長するような言説が出てきてしまった。さらには、正確な実態把握ができていないまま、特異な犯罪事例を「AV 業界」「AV 女優」として報道する報道機関もあり、こうした流れが出演者・事業者一般への社会的差別につながりかねないことを憂慮している。”
”上記の流れはこの社会的不利益性をかえって高める可能性があり、こうした言説については、販売停止制度などによって平穏に「忘れられる権利」を実現しようと努めてきた当機構にとっては、遺憾な出来事だった。”
”現在の実態としては、非常に多数の女優志願者がプロダクションに自分で応募してきており、大手プロダクションは、その8 割以上をお断りしている状況にある。これら大手事業者は、繁華街に出没するスカウトの仲介は、もはや相手にしていない。”
”当機構として、AV女優デビューが安全になったという情報を発信してよいものか慎重になった。そのため、適正 AV 枠においては「出演強要はもうない」ということは、マスコミの取材には答えても、積極的には表明してこなかった。”
”ボクシングを例にとろう。これは、厳格な試合ルールを守ることを条件に、他人を殴って
傷を負わせても犯罪とされない職業である。他のスポーツも含めてだが、「事故」が起きることもある。やはり、プロボクサーになるには、「覚悟を決めてなるべきで安易に考えるな」と、
老婆心としては言いたくなってしまう。しかし、安易に飛び込んで良い職業などないと反論されると、確かに偏見である。”
”女優達も適正AVの構成員である。女優さん本人の発言を伝えるための工夫を、AVANを通じて、今後、実現していきたい。”
◼️AV 人権倫理機構の活動の基本原則
”ひとが性行為をするかどうかは、100%当事者本人の判断にゆだねられるべきであり、
何人も、それを強要することも妨害することもできない。自分が選んだ相手と性行為する(あるいは、しない)自由――性的自己決定権――は、現行憲法が最も大切にする「個人の尊重」
に直結する自由権である。”
”一方、性行為の映像の公表が許容できるかどうかは、表現の自由の問題であり、様々な意見や工夫がありうると認識している。この問題については、今後の議論の成熟に委ねることとし、当機構としての活動は予定していない。”
抜粋以上。ぜひ原文も読んでみてください。
これを読んだうえでの僕個人の意見としては、
政治家に対しては、
ヒアリングした上で、内容に反映もせずに、強行に法案を通したということは、
「政治家は、強い意思を持って無視した」ということであり、
それの背景には「AVに対する確固たる職業差別がある」ということだと感じました。
また制度についても、すでに業界が自主規制として定めていたものの方が優れているということで、
これは結局のところ、「素人が手を出してもろくなことにならない」ことが証明されたと言えると思います。
いずれにせよ、今回一番僕が問題だと感じているのは、
・国民の生活に直結する仕事に対して、十分な調査と議論も、当事者のヒアリングもなしに、法によって規制が出来てしまう
・法によって影響を受けた人たちへの補償・ケアが皆無
・法案を提出した議員が、声をあげた当事者に対して「規制を強めますよ」と脅迫・恫喝した
という点だと思っています。
これは、今回の参議院選挙で話題にもなっている"児童ポルノ禁止法改正案"=表現の自由の制限にも関わってきますし、他の職業についても、
「政治家の思いつきで、あっという間に規制され、生活が立ち行かなくなる」
という事態が頻発すると思います。
熱い想いや、弱者に対する思いやりがあることは素晴らしいことですが、
バランスを欠き、熟慮・熟議の欠けた議員立法は、
危険極まりないと感じました。
AV業界がどうなるか、ファンとしては心配の方が大きいですが、
AV人権倫理機構がとてもまともな機関であること、AV関係者が今まで機構と連携し、業界をよくしてきたことがわかったので、少し安心しました。
今後も、AV業界には厳しい戦いが待っているとは思いますが、
ファンとして、いち国民として、「それぞれの人が輝ける、それぞれの場所を守る」為に、
考え、行動していきたいと思います。