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インフルエンザの鍼灸治療

2018.01.19 09:23

子供たち二人が続けざまにインフルエンザA型を発症。

先ずは兄貴から。

発熱、咳、鼻づまり、倦怠感を訴える。

◎治療1日目

■腹診

腎虚、肺虚、脾実、心実、肝平。

■脉状診

浮・数・実。

■比較脉診

腎虚、肺虚、脾実、心実、肝平。

■証決定

腎虚脾実証。

■適応側

左。

■本治法

□銀鍼1寸3分1番鍼にて左陰谷に補法。

検脉→腎充実。

肺も出た。

相剋経は心の実は治まったが脾の実が依然としてある。結果からつまり心は旺気実で脾は病実と言える。脉状が表す邪の種類は虚性の邪、程度は堅である。

□コバルト鍼1寸3分2番鍼にて右陰陵泉に堅に応ずる補中の瀉法。

検脉→脾の実が取れる。

陽経を診ると左関上浮かして胆の脉位に虚性の邪を触れる。

□胆経を切経して最も邪が客している右懸鐘に枯に応ずる補中の瀉法。

検脉→邪が取れ脉が整う。

 

■補助療法

□奇経治療。咳に対して孔最-照海に5壮-3壮で知熱灸。

■標治法

風邪の諸症状に対して大椎・風門に知熱灸7壮ずつ。←総合感冒薬的な効能があります。

■経過

咳がマシになる。


◎治療2日目

同様の治療で各症状緩和。


◎治療3日目

■本治法

左陰谷に補法。

■標治法

夜になるとまだもう少し熱が高くなるので手に水掻きの鍼。

■経過

全快。一週間登校できないので暇を持て余してバスケしたりゲームして過ごしています。

ホッとしたのも束の間、次は下の娘が同じくA型を発症。

発熱、節々の痛み(5歳なりに頭項強痛的なことを訴えている)、倦怠感。


■腹診

腎虚、肺虚、脾実、心実、肝平。

■脉状診

浮・数・実。

■比較脉診

未就学児は不可(母親への問診と腹診で証決定する)。

■証決定

腎虚証。

■適応側

右。

■本治法

小里てい鍼金メッキを右然谷に軽くあて気至るを度として徐に垂直に抜鍼、左右圧もかけず鍼口も閉じないてい鍼の補法の基本刺鍼を施す。

検脉→脉が落ち着く。

■標治法

□両手に水掻きの鍼。

□全身に気を巡らすように小児はり。

□最後に左後谿にちょこんと止め鍼。

■経過

同様の治療を3日間続けて全快。


長男同様暇を持て余してお絵描きにいそしんでいます。

終わりに

■インフルエンザはタミフルかイナビルが主攻を務めますが、鍼灸を併用すると楽に経過します。

東洋医学では外感病の病因病理に従って本質治療ができます。

研究ではインフルエンザは風湿病です。

■水掻きの鍼は解熱鎮痛効果がありますが、先ずは手だけにした方が危なげないです。

その見極めは手足の寒熱です。

だいたい手は熱くて足は冷たくなっています。

この場合は手だけにします。

足までやると却って発熱します。

手足ともに熱い場合は手足にしても大丈夫ですけ。

それでも初回は手だけにして様子を見ましょう。

足らずは足せますがやり過ぎは引けません。

水掻きの鍼の対象年齢は乳幼児~中学年の児童まで。

高学年の児童以上からは基本的には要りません。

ただし病体によってはやってあげた方がいい場合もあります。

中々熱が下がらないだとかその時々によって取捨選択してください。

大人にはもちろん要りません。

■手足の寒熱は予後の判定にも有意義です。

手足が熱い場合は邪正抗争真っ只中であり病勢はこれから上り坂です。

親御さんにはそのように伝えましょう。

でないと鍼をしているのに解熱しないとか熱が高くなったなどと言われます。

手が熱くて足が冷たい場合は下り坂です。

落ち着いていくでしょう。

■熱ですが、体温計にのる熱は肺の熱で、体温計にのらないのに熱い等は心の熱です。

前者は腎虚や肝虚肺実が中心になりますが腎虚でやる場合は肺をとばした方が危なげないです。

肺経には気を循環させて温める作用がありうかつにやると却って余計に発熱することがあります。

■太陽経に邪熱が停滞している場合は足を触ってより熱い側の膀胱経の金門の瀉法が的中することがあります。

小児ならてい鍼の尖った方で経に逆らってサッサッサッと2~3回なでれば十分事足ります。

高学年以上は毫鍼できちんと瀉しましょう。

陽明経の場合は大腸経の二間や三間、胃経なら豊隆だとか。

邪気の侵入経路によって病症に特徴が出てくるのでそれを根拠に何経を瀉法する可能性が高いかを検証してください。

外感病の経過を研究した『傷寒論』を鍼灸師が勉強しなければならない理由がここにあります。

■最後に入浴について。

発熱している間は入らない方がいいです。

入浴は体力はが要ります。

発汗すると体力が奪われます。

汗は白い血です。

血とは体力のストックです。

発汗は血虚です。

要らぬ体力を使うと後が怖いです。

発熱は邪正抗争のお知らせです。

ここに全体力を注ぐべきで入浴によって発汗して血虚を招くと生気が損なわれます。

生気の弱りに剰じて邪気が一気加勢してきます。

インフルエンザ脳症やインフルエンザ肺炎などへと重傷化する危険性があります。

入浴はくれぐれも気を付けてください。

大丈夫なこともの方が多いですが、この場合は最悪を想定して対処した方がいいでしょう。

我が家では治ってから入浴を許可しています。

汚れが気になったらタオルをお湯で絞って体を拭いてあげてください。


伝統医術は生気を守る医療です。

鍼灸治療の本質は、生気を補い生気を妨害する邪気を瀉すことにありますが、実はどちらも生気を守るのが目的です。