私の山道具.2
渓信州 2013年7月6日掲載 E-28
前回(エッセイ№25)に引き続き紹介します。
【曲げわっぱ】 木曾檜でできた漆塗りの弁当箱です。<br>巾着袋はバーバリー生地のハギレを使って自作しました。留め具はヴァレンチノです。この世界唯一和洋折衷ブランド混合のアンバランスが気に入っています。仙人峠で八ツ峰を眺めながら、わっぱ飯を食べるのが最高のぜいたくだと思っています。☆☆☆の青空レストランですね。
【ピューターフラスコ】 錫合金製ウィスキースキットルです。錫は液体を変質させない(錆びない、化学反応しない)金属として、タンブラーやボトルに使われています。錫製“ちろり”でお酒を燗にして出す店も少なくなってしまいました。安価なステンレス製のフラスコもありますが、こだわってピューター(錫合金)製を買ってしまいました。170mlくらい入ります。
えっ!これでは量が足りないって?そういう方は瓶のまま持ち歩いて下さい。
【ストーブ(火器)】 カートリッジ式のバーナーが当たり前の時代になってしまいましたが、瞬時に着火できて安全に手早く湯が沸いてしまうのは味気ないですね。「ガス・パッ・チョ!」東京ガスのCMじゃないんだから。すぐに熱く燃えて欲しいのは恋の炎!
私はオーストリアのPHOEBUS(ホエブス)を愛用していました。今もときどき現役です。メタでプレヒートして気化した白ガス(ガソリン)を燃焼させる仕組みです。多少手間と時間がかかり気圧によっては火力が不安定になるなど、扱いに難はありますが、この方がいいのです。女性を口説くのと同じで手間と時間を惜しんではいけません。失敗を重ねて腕を上げていくのです。
失敗談を一つ(恋愛ではありませんよ)。友人と二人で厳冬の1月に妙高から火打山を目指したときのこと。食事の準備をしようと、テント内でホエブスのプレヒートをしました。そろそろいいかな?と思いノズルを開けて着火したら、火器全体に火が回りテント内は大変なことに!あわててテントを開け、火器を外に放り投げました。幸いテントは火事にならずに済みました。原因はプレヒート不足でした。ガソリンが十分気化しないうちに着火したので、ノズルから滲み出た液体に火が着いてボワッといったのです。ガソリンの火力は凄いですね~。女性と同じで怖いですね~。 雪で濡れたホエブスはもう使えません。友人がカートリッジ式のストーブを持っていたので、そちらで湯を沸かして食事をしました。最新兵器に助けてもらった情けなさときたら・・・
【スキー】 下手くそですが、道具だけはアルペン、山スキー、テレマーク、クロカン(エッジなしとエッジ付)と5種類持っています。 アルペン板はスキー全盛期だった昭和63年のモデルです。この頃の板は細身でカーブが浅く、しっかり踏み込まないとターンできません。身長+10㎝が板長の目安でしたが、上手な人ほど長い板を履いていたので私は見栄を張って190㎝を履いていました。今、この板でスキー場に行くと一人浮いています。
山スキー板も同じ頃買いました。まだ世に出始めたばかりのプラブーツを買いチロリアTRBという最新型ビンディングをつけてもらいました。シールをつけて初めて登ったのが3月の火打山。出発が遅れたため高谷池の雪原に到着したのは夕暮れ時。遠くからヒュッテの方向を見ると小屋の三角屋根と周りの針葉樹とシルエットの区別がつかず、あやうく遭難するところでした。まだ20代だったので怖いもの知らずで遊んでいました。
クロカン板はロシニョールとフィッシャー。スキー全盛期にゲレンデではロシの4S、4Gを履くのが上手な人のオシャレでしたが、私がそんな板を履いたら笑われてしまいます。クロカン板なら大丈夫だろうと考えて、ミーハーな選び方でロシニョールを買いました。日光戦場ヶ原、北八ヶ岳などを歩きますが、場所によってエッジ付のフィッシャーと使い分けています。
こうなると欲が出てきてテレマークの板が欲しくなります。そこに昨年、救世主が現れました。山の大先輩から「年齢も年齢なのでもう乗らないから・・・」とテレマーク板を譲っていただいたのです。丈が短めで板幅もあり、深雪の森の中を歩くには最適です。ビンディングはロッテフェラーの3ピン式。腕が伴えばカッコよくテレマークターンができるのでしょうが・・・・永遠にムリです。
2回にわたって私の山道具を紹介してきました。この他に30年以上着ても擦り切れない頑丈なシャツなど披露したいものが山ほどあります。良いものは長持ちするし、次第に愛着も湧いて手放せなくなってきますね。えっ、女房と同じですって? 私はそう思っているのですが、向こうは山男に愛想をつかしていますから・・・・残念!