【働く天使パパインタビュー】#1 ゆいなパパ
SNSなどではなかなかシェアされない「天使パパ」の想い。言葉にはしないけれど、パパも悩み、わが子やパートナーであるママのことを想い、そして気づきを得て歩んでいます。そんな天使パパの物語をiKizukuがインタビューしてご紹介します。ご協力いただいた天使パパさん、ありがとうございます!
《#1 ゆいなパパ》
【プロフィール】
ゆいなパパ(京都府在住/40代)
・お仕事:会社員/経営企画
・雇用形態:正社員
・ご経験:2019年7月、妊娠38週3日で臍帯過捻転による死産、不妊治療歴なし、流産2回も経験有り
・Instagramアカウント:0344san
1.あなたのご経験について教えてください。
2019年7月、妊娠38週3日で臍帯過捻転による死産を経験しました。
当時私は福岡に住んでおり、妻は里帰り出産のため関西に住んでいました。あの日は、たまたま出張で大阪に来ていました。妻は前日に診察を受けていて順調と言われたそうです。就寝前の胎動が普段以上に激しかったので妻と二人で「久しぶりにパパに会えて興奮してるね」なんて話しながら過ごしました。
翌朝、普段と変わらないリズムで私は職場に出勤しました。昼過ぎ、福岡に戻るため新大阪駅に向かおうと大阪駅の改札を通ろうとした時に、妻から電話がありましたがスマホから聞こえる妻の声に異変を感じました。どうやら朝から胎動を感じなかった不安から病院に出向いたところ、すぐに私に連絡をするように言われたようです。
私は急いで病院に向かい妻から一通りの内容を聴いたところで、昨日の今日の話なので信じられる訳もなく担当医にエコーを見て確認したいと申し出ました。夫婦で改めてエコーの確認をさせていただきましたが、そこには全く反応のないエコーが映され、心臓が動いていない現実を突きつけられた時間でした。
<お気持ちについて>
2.ご経験されたときのお気持ちを教えて下さい。
虚無感、悲しみ、疑問、などの感情でした。
我が子の心臓が動いていないとわかった後は、妻の心配と、出産するまでの時間をどう過ごすか?を考え、思い出作りに一生懸命動いていました。私は不思議な感覚で、出産で我が子と会えるのを待っていました。いざ出産に立ち会い産声を上げない我が子を見た時、うれしい気持ちもありましたが、何とも言えない悲しい感情が大きかったです。
妻の手前、冷静さを保とうと終始喜びの表現を演じるのに必死だったと思います。その後、病室に助産師の方が娘を連れてきてくださり、家族で過ごしました。
3.ご経験後、精神的・身体的な影響はありましたか?
社内ストレスチェックでの異常診断より産業医面談の後、自覚はありませんでしたが、心療内科の紹介を受けるほど精神状態が不安定でした。
仕事のアウトプットに影響は出ていないと感じていましたが、日常生活で何かしら影響が出ていたのかもしれません。ストレスを抱えている自覚は全くありませんでした。
面談時、原因は思い当たるものがあると、娘のことについて説明をしましたが、その時は感情を抑えることが出来ず涙を流して上手く話すことも出来ていなかったと思います。
4.お気持ちや悩みを誰かに話したり相談したりしましたか?それは誰ですか?
職制上、限られた関係者(同僚数名)には話をしました。
5.パートナーに対してどのような声掛けや対応をされましたか?またパートナーからはどのような声掛けや対応がありましたか?
細かに覚えていませんが自責するのを止めさせようとしていた様な…妻からは謝罪の言葉が多くあった様に思います。
6.男性は女性に比べて感情を表出したり、相談したり、共感を求めることをしない、と言われることがあります。それを温度差だと感じて悩む天使ママも多いです。ご自身はどうでしたか?それについてどう思われますか?
人にもよりますが個人の見解として総体的に男性は女性と比較し、話すことに慣れていないと思います(お茶しながら何時間も話をしている男性を見かけたことが無い)。そして感情を表面に出すことや相談共感を求めないと思われてしまうことも致し方ない部分だと考えます。
当然ながら温度差を感じられる天使ママは多く存在すると思いますが極端に悩む必要はなく、男性の性質を単純に知っていただければ良いのではないでしょうか。
色々な考え方がありますが、天使パパは無理に前に出なくてもいいと思っています。ベラベラ話すタイプの男性は少なく、聞き役に回る男性の方が多いのではないかと思います。聞き役+アドバイスという裏方役となり、天使ママの相談にのり、アドバイスや助言ができるのではないでしょうか。そのようなスタンスで話しかけてみると、世の天使パパも話しを聞いてくれるのではないかと思います。
私個人としては、妻との温度差はなかったと感じます。周りとのコミュニケーションは従来通り維持しなから過ごしていました。むしろ増やしたくらいかもしれません。全国を出張で飛び回っていたので、常に妻と連絡を取ることを意識していました。なるべく妻が孤独を感じないように意識していました。
7.第三者に相談できる場所や当事者会(天使パパ・夫婦の会、死別経験者の会)等があれば相談・参加したいと思いますか?それは何故ですか?
現在は深いグリーフから抜け出せている状況もあるため、自身の気持ちを緩和させる事が主になる当事者会への参加は考えていませんが、誰かのサポーターとして力添えが必要になるのであれば協力させてもらいます!
<働き方について・職場とのやり取り・周囲との関わりについて>
8.ご経験後、仕事をお休みされましたか。それはどのような制度でしたか?
慶弔休暇制度は利用しましたが、その他で休暇は取得していません。
9.ご経験後、働き方やモチベーションは変わりましたか?また働き方やキャリアに対して考え方が変わったことはありますか?
働き方に大きな変化はなかったかもしれません(モチベーションも同様)。キャリアに関しても、上記同様に極端な変化は起きていない気がします。
経験直後の感情を強いて言えば、『休みたい』ではなく『妻の傍にいたい』という気持ちを抱きながらも職場に向かっていたと思います。自然と妻を支えていかないといけないという気持ちが強くなっていました。
今回の経験は関係なく、自身のキャリアの延長上で転職をしたのですが、家族との時間も調整しやすくなりました。現在はワークライフバランスを意識して過ごしています。
10.ご経験について職場へはどのように伝えましたか?連絡や相談の仕方や連絡・相談後のやり取りについて、大変だったこと・ご自身で工夫したこと・改善してほしいことがあれば教えて下さい。
連絡方法や手段は一般的な流れで報告したと思います(相談はしてない)。慶弔金申請ならびに慶弔休暇取得に際し、申請書の記入項目に申請内容詳細を書きだす書式であったため、感情が高ぶったことを思い出しました。配慮のあるフォーマットに改善したほうが良いと思います。
11.職場の人との関係について、辛かった・嬉しかった・助かった声掛けや対応、経験前後の変化などがあれば教えて下さい。
話をするときに空気を察し場所を調整してくれたことや、話を聞いて自分事のように涙をながしてくれたことには心打たれました。
傷ついたこととして、本人達もどう声掛けして良いかわからないのは理解するも、浅はかな表面上の薄い言葉かけにはイライラしていました。
経験後変化として妊産婦や子供に対する気づきが多くなったことや、意識的に優しく接せられるなど変化を感じています。子どもを取り巻く色々な課題(不妊・病気・虐待等)を意識するようになりました。子どもを授かりたくてもできない自分にとって、虐待など辛いニュースを目や耳にすると、とてつもなく悲しくなると同時に憤りを感じることが強くなりました。
12.パートナー以外のご家族・ご親族・ご友人との関係について、辛かった・嬉しかった・助かった声掛けや対応、経験前後の変化などがあれば教えて下さい。
悪気なく励ましの意味で掛けてくださる言葉で、『忘れよう』とか『次がある』といった単語はひどく胸を刺しました…相手方も何て声を掛ければよいか悩まれていることも分かるが故に、難しいところではありますが、本意の言葉以外は伝わってこないし、無理に声をかけてくれなくても良いと感じていました。
「奥さんを支えてあげてね」という言葉は傷ついた時と傷つかない時がありました。妻を家に一人にさせたくなかったので、外に連れ出すことを意識していました。楽しみを共有するなど意図的にしていました。妻を支えることを重いと感じることは全くなかったです。
「子どもがいるか?」と聞かれた時のルールは決めておらず、その人が信頼できる人なのか、そうではないのか、で都度判断していました。
流死産経験者が意外に多いことを知ったので、最近は自分達が流死産経験者であることを隠さず話すことが多くなりました。話す相手も、もしかしたら経験者かもしれないと考えた場合、私たちが経験者であると伝えることで相手も経験者であった場合、きっと話しやすくなると思ったので。発信することが自分を変えていっているのかもしれないです。
同じ経験を実はしていたから気持ちがわかるといった方の声には耳が傾くことが多かったです。だから天使パパの活動も必要だと思います…
13. 入退院や役所手続きなどを男性が行うことが多いと思います。様々な手続きの際に大変だったことや困ったこと、改善して欲しいことなどがあれば教えてください。
あまり大変な思いをした実感はありません…感情が虚無的であり流れ作業的に対応していた時間だったと思うので。
<”今”の想い・メッセージ等>
14.今、振り返ってみて、こうしたのが良かった、こうすればよかった、当時のご自身に伝えたいことなどはありますか?
きっと多くあると思いますが整理しきれないので…思いつく多くはお空に帰っていくまでの過ごし方でしょうか…
15.パートナーに伝えたいことはありますか?
いろんなことに気づかされ助けられています。いつもありがとう。
16.同じ天使パパさん達に伝えたいメッセージがあればお願いします。
悲しみを感じているのは天使ママも天使パパも同じだと思いますが、無理に焦って何かをする必要はないと思います。自発的に何かしらの行動を起こそうと思った時から、一歩ずつ踏み出せば良いと思います。私はできる範囲の出来ることからマイペースに活動してみようと思います。
17.iKizukuでは、ペリネイタルロスやグリーフ等に関する社会の認知不足から、必要な支援がされていない現状を改善したいと取り組んでいます。ペリネイタルロスを取り巻く環境について感じること(課題や改善案等)があれば教えて下さい。
当事者が声を出せないことは経験者や有識者じゃないと知りえない。だからこそ、このような活動が必要だと思います!
まだまだできることは沢山ある印象を持っています。それをどのように実行に移すかが壁となっています。私自身、働く天使ママインタビューも受けられているまきさんとクラブハウスで出会いました。同じ経験をした人を見つけると、自分の経験も伝えたい・共有したいという気持ちが生まれます。
自助団体をSNSで見つけて繋がることで感情が和らぎました。一歩一歩、歩み始める中で、何かしたいと模索し、グリーフケアアドバイザー2級の認定を取得してみました。
流死産経験者への病院からのアフターケアがまだまだ不十分と感じた現状を変えたいと考えています。経験者は自ら苦しい状況の中、色々調べて様々な情報を取りにいかねば何もわからない。そこで病院側より流死産経験者が集う自助団体があることや、体のメンテナンスに活用できる情報などが発信されるような、極力負担のかからない環境が整備された状態に変えていきたいと考えています。
そのような仕組みを組み込んだ構想をいつか事業化できればと考えています。また性教育が最近多く取り上げられていますが、不妊症や不育症のリスク軽減につながるといった内容も加えて伝えていくことも必要だと思います。
また、ペリネイタルロスの認知度を高めるためにも、チャリティーイベントを企画するのも一つの方法と考えています。ゴルフ、BBQ、フットサル、ピラティスなどの様々なイベントに、チャリティーの要素を加えて参加者に知ってもらうのは難しい話ではないような気がしています。
転職した今の勤め先では、厚労省の次世代育成対策支援企業に参画し、認定をとることができました。また、両立支援助成金などの申請も行い男性社員の育児休業取得向上に役立てる助成金も得るなど、きっと子どもと親の関係や子ども達の未来のために、何かプラスに働くアクションがとれたのではないかなぁと思っています。
これからも組織としても何ができるか、考えていく必要もあると感じています。
18.その他、このインタビューを通して伝えたいことなどがあればお願いします。
少し感情に蓋をして過ごしている部分が少なからずあったと思い知らされています。以前から私自身も天使パパとして思うことがあり、いくつかの構想を持っているので前向きに交流できればと思います。
自分の思いを共有できたことは大変うれしく、このような機会をいただけたことご関係者の皆様には心より感謝申し上げたく、本当にありがとうございました。