ルイ一家の海水浴①
かわいい息子のシュリが海に行きたがっている。
息子と言ってもシュリは前妻の優里の子で、色んな事情がありルイとの血の繋がりはない。シュリはそのことは知らない。
今は後妻の愛美と3人、血は繋がらなくても愛情深く、仲良く暮らしている。
そんなかわいいシュリが海に行きたがっているのだから、連れて行かないわけがない。
ルイは早速翌日に海に行こうとシュリと約束したのだが。
準備をしていてふと、日差しが強い場所に行く時につけていく専用のカラーコンタクトを切らしていることに気づいた。
ルイの目は太陽に弱い。だから日差しが強い場所に行く時は専用のカラコンとサングラスが欠かせないのだったが、この前家族で山登りに行った時に使い切ってしまったのだ。
シュリも大きくなってきて行動範囲も増え、アウトドアな遊びが増えたぶんカラコンの消費も増える。
うっかりしていたな、とルイは顎に手を当てて考えた。
処方してくれるクリニックはもう閉まってるし、明日は休みだし。仕方ない。
海は日差しが強いけど、1番ガード力のあるサングラスして外さないようにしていけばまぁ大丈夫だろう、と結論づけた。
リビングではシュリが嬉しそうに継母の愛美にまとわりつきながら、最近一番興味がある「うみうし」の話をしている。
「母さん、おれうみうし捕まえるね!きれいなのだったら母さんにあげるね!」
「まあ素敵ね!ありがとう。たくさん捕まえられるといいわね」
ルイには2人のその姿が愛おしくて。
次の日は晴れ。朝から車に荷物を積んで、ルイと愛美とシュリは海へ出発した。
ここから海へはそう遠くない。朝早く、まだ日が高くないうちに出かけた。
シュリはもう水中眼鏡を付け、準備万端だ。
「ルイさん、目は大丈夫?」
昨夜コンタクトのことを聞いた愛美が心配そうに尋ねる。
「うん、まだ日も弱いし、今日は最強のサングラスかけてきたから。ほら見て、花粉症メガネみたいにサイドからも光もガード。これを1日取らないでいれば問題ないよ。」
「あらほんとね、すごいのがあってよかったわ。でも日焼け止めちゃんと塗らないとそのまま焼けちゃうわね」
「えっ!!そうだね!!全然考えてなかった!愛美さん日焼け止め持ってる?」
「ふふ、もちろん持ってきたから大丈夫よ。着いたら車降りる前に塗りましょ」
愛美の機転でルイは逆パンダをまぬがれたのだった。
海に到着するとルイは日焼け止めを塗って、シュリは買ってもらったばかりのクジラのキャラがついたビーチサンダルを履いて、準備万端。
愛美も水着に着替えた。
黒地に白い花柄のフリルの水着にライトグレーの長袖の上着、それにつば広の麦わら帽子。
優しげでグラマラスな愛美によく似合っている。
「愛美さんすごくよく似合うね。かわいい。すごく綺麗だ」
恥ずかしげもなくストレートに褒めてしまうルイは思わず言葉にした。
「まあ、ルイさんは相変わらずストレートなんだから…ありがとう」
微笑む愛美にルイは軽くキスをした。
ルイの家では挨拶のようにキスすることは普通 (というかルイが当たり前のようにやる )ので愛美も慣れたしシュリにとっても普通の光景だった。
シュリは密かに、いつか自分も恋人ができたらルイみたいに褒めてキスしたいと思っていた。
一家は浜辺にパラソルを借りて、そこを拠点にすることにした。
「じゃあ、シュリと磯に行ってくるよ。何かあったら連絡して。」
防水ケースにスマホを入れて首から下げ、ルイが言った。
「分かったわ。磯の岩に気をつけてね。シュリ、ウミウシいるといいわね」
なでなでとシュリを撫でて愛美は微笑む。シュリは愛美に抱きついて甘えている。
「うーん、あの辺がいいかな。よし、シュリ行こっか」
うん!と元気よく返事をして、シュリはルイと歩き出した。
途中で砂に足を取られそうになったシュリの手を取り、2人は手を繋いで磯へと歩いた。