『W旦那+(プラス)』第117話 三代目妄想劇場
2018.01.21 14:43
余韻に浸る間も無く、ゲストルームの扉を激しく叩く音が聞こえた。
「隆二⁉︎大丈夫かっ?」
直己の声がする。
ベッドの上に仰向けに転がっていた臣が、ビクッと反応して飛び起きた。
「直己…さん?」
隆二は意識が朦朧としている。
「隆二⁉︎開けるぞ!」
ガチャガチャやっても開かないところをみると、臣が中から鍵を掛けたのだろう。
今にもドアを蹴破りそうな勢いの声がして、隆二は力を振り絞り、慌てて横にあった掛け布団を手繰り寄せ包(くる)まった。
声を出そうにも出ない…
次の瞬間…
ドゴッ‼️
激しい音がしてドアを蹴破って直己が入ってきた。
臣は全裸のまま、ベッドの上に仁王立ちになっている。
直己は何も言わず、手にした鞘付きの刀を顔の前で真横にかざし、
もう片方の手でお経を唱える形をとり、静かに呪文を唱え始めた。
途端に臣が首の辺りを掻きむしって悶え苦しみだした。
「ぐわぁぁぁぁ…おのれ」
形相が一変する。
目は真っ赤に光り、口から尖った牙が見える…
隆二(臣…⁉︎)
直己は怯(ひる)むことなく、目を閉じて呪文を続ける。
「んっ‼️」
直己が更に気合を入れ呪文を唱えると、
もはや臣のそれでは無くなった悪魔の形相で、唇から長い紫の舌を出し、
真っ黒な煙を吐き出した。
隆二(臣の中に⁉︎)
隆二が声も出せずにその光景を見ていると、
臣がすっかり吐き出した煙は徐々に悪魔の形を現わし始めた。
ふっ……と糸が切れたように、その場に崩れる臣…
「おみっ⁉︎」
隆二がかすれた声を絞り出すと、直己は呪文をやめ、隆二に向かって叫んだ。
「臣なら心配ない!」
まさか⁉︎
悪魔が乗り移ってたのか?
…あの時…⁉︎
End