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とある冒険者の手記

C.治療方針

2021.04.11 14:10

カルは今、動悸と過呼吸に陥っていた。

トラウマ克服の為、サランと生活を始めてから4ヶ月が過ぎていた。

トラウマの度合いを調べる事になり、最初は小型の魔物の討伐から入り、少しずつ魔物の大きさを変えて、フラッシュバックが起こらないかを調べていた。

どうやら、魔物相手なら大丈夫と言うことが分かり、IDの中を住処とする魔物の間引き等の依頼などはこなせる様になった。


だが、今回は次のステップとして、野党の逮捕をする事になり、カルはサランと、同じ双蛇党所属のアリス、そして、事情を知っているガウラの4人で任務にあたった。

顔合わせをした時、アリスとガウラが知り合いと分かり、世間は狭いと思ったのは言うまでもなかった。


そして今、カルは任務中にトラウマのフラッシュバックを起こしていた。

野党逮捕は穏便にとは行かず、抵抗する野党と戦闘になった。

その戦闘で、攻撃を食らい、血を流す野党を見た途端、激しい動悸と過呼吸を起こした。


相手は敵だと頭では分かっているが、脳裏に思い出される母と姉を失った時の光景。

堪らずその場に蹲るカル。


「カル!?大丈夫か?!」


応戦しながらサランが叫ぶ。

その状況を見て、戦士として敵を引き付けていたガウラは、アリスに叫んだ。


「アリス!サランが抜けてもいけるかい!?」

「はい!大丈夫です!」

「よし!サラン!カルの介抱を!」

「すまない!」


その場をガウラとアリスに任せ、サランはカルに駆け寄った。


「カル!」


サランは過呼吸の対処をする。

対処のお陰で呼吸が整っていくカル。

だが、その時だった。


「サラン!避けろ!」

「!?」


野党が放った弓矢がサランに飛んでいき、肩に怪我を負わせた。

今度はサランが肩を押さえて蹲った。

それを見たカルは目を見開き、動揺した。


「あ……あぁ……うぁ……っ」


瞳には涙が滲み、再び息が荒くなっていく。

そして、精神が限界を迎え、カルは意識を手放したのだった。



************



「カル!気がついたか!」


カルが目を覚ますと、双蛇党の医務室のベッドに横たわっていた。

目の前にはサラン。

サランの声に、ガウラとアリスも視界が届く範囲に移動してきた。


「カルさん、大丈夫ですか?」

「気が付いたようで良かったよ。相当トラウマが酷いみたいだね」


アリスとガウラに言われ、自分の状況を把握し始めるカル。

そして、気を失う前のことを思い出し、上半身を勢いよく起こし、サランの両腕を掴んだ。


「サランさん!肩っ!肩の怪我はっ!?」

「え?あ、あぁ、大丈夫。双蛇党の幻術師に治療して貰ったよ」


カルの勢いに驚きながら、サランは答えた。

それを聞いたカルは、ホッと胸を撫で下ろした。

それと同時に、誰かを失う恐怖が思い出され、自分の身体を抱きしめた。


「すみません、サランさん…僕のせいで……怪我を負わせてしまいました……」

「いや、カルのせいじゃないさ。戦闘中だと言うのに、俺の注意が足りなかった」


どんよりと重たい空気が漂う2人。

その空気を打ち破ったのはガウラだった。


「でも、今回の事で収穫はあったろ?カルのトラウマは、何か自分の不注意で怪我をするのは大丈夫だが、人が人を傷付けるのがダメなんだという事が分かったじゃないか」

「そう…ですね…」

「克服するには、トラウマを超えるような強い意志が芽生えるか、もしくは荒療治をしていくしかない。前者は何か大きなきっかけが無いと無理だが、後者なら直ぐにでも出来るだろう」


ガウラの見解に、カルもサランも納得したようだった。


「私がサランと予定が合う時にでも、治療の為に手合わせをしよう。それで慣れていくしかない。アリス、お前も良かったら手伝ってやって欲しい」

「分かりました!ガウラさん!」

「ガウラさん…アリスさん…、すみません。よろしくお願いします」


こうして、カルのトラウマ克服の為の治療方針が決まったのだった。