ルイ一家の海水浴②
「わー!!ルイ見て見て!!うみうしいた!!」
磯で生き物を見つけてシュリはおおはしゃぎ。普段は同年代の子たちに比べてシャイで大人しくてあまり感情を表さないシュリだけど、今は子供らしく楽しそうだ。
「ほんとだ!えーと、これは毒は無いから大丈夫みたいだね。」
ルイがスマホの画像検索ですかさず調べる。好きだからといって安易に触るのは危険なので、いちいち調べることにした。シュリは喜んで虫かごに海水とウミウシを採取する。
そんな感じで何匹かの生き物を掴まえて、磯遊びを思い切り堪能した。
「よし、そろそろ一回母さんの所に戻ろう。水分補給しなきゃね。」
「えーもう?また後で来てもいい?」
「もちろん。シュリの好きな冷たいカルピス持って来たから飲もうね」
シュリとルイは砂浜を歩き出したけど、シュリは虫かごの中から目を離せなくて何度か転びそうになる。
「前見ないと危ないよ!…ふふ、そんなに嬉しいんだ」
虫かごを見ながら目をキラキラさせているシュリを見てルイは笑った。あまりこういう顔をしない子だから、ルイも嬉しくなってしまう。
「ほら、おいで。」
そういうとルイはシュリをひょいと右腕で抱き上げた。
「どれが好きなの?」
「これ、うさぎみたいな白いうみうし!かわいいから母さんにあげるんだ」
「そっか。母さん喜ぶね!」
シュリは嬉しそうに虫かごを見ながら、ルイの首に掴まって甘える様に体を預けている。
ルイはシュリのおでこにキスをして砂浜を抱っこしたまま愛美の元に戻った。
「おかえりなさい!まあ!たくさん見つけたのね〜!」
シュリは愛美に手渡された冷たいカルピスを飲みながら、嬉しそうに虫かごの中を見せて説明している。
「これ、うさぎみたいでしょ?母さんにあげるね!名前つけていいよ!」
「ありがとう!う〜ん、名前なににしようかしら。」
2人が楽しそうに話しているのを微笑ましく見ながらルイは冷たいスポーツドリンクを飲んだ。
「ルイさん、目は大丈夫そう?」
「うん、こうやってつけたままなら今日は大丈夫そうだよ。今のところ問題無し。」
よかった、と愛美は微笑む。
シュリはしばらく虫かごの中を見ていたが、ふと波打ち際に目をやる。
「あ、砂の山だ…おれもやりたい。トンネル掘りたい。ルイ、いいよね?」
磯から砂浜の砂遊びに興味が移ったようで、ワクワクした顔をしている。
「うん、いいよ。僕も後で行くから、遊んでおいで。」
シュリはうん!というと砂浜へかけて行った。
「見えないところに行かないようにね!」
愛美が言うと、シュリは振り返ってうんうんとうなづいた。
「子供は元気ねぇ。色んなことが楽しくて好奇心旺盛で。シュリが楽しそうで嬉しいわ」
「あの子は普段はおとなしいからね。子供らしくはしゃぐ姿見れて僕も嬉しいよ」
ルイは隣に座る愛美の手を握った。
「それに、君の水着姿も見られて最高だな。すごく似合っててずっと見ていたいよ。」
無自覚なプレイボーイは昔から変わってない。愛美はもう、と頬を染める。
「あ、見て満潮になってきたから、だいぶ海岸線が上がってきたわ。」
「ほんとだ。危ないからシュリのところに行ってくるよ。」
と会話していたまさにその時だった。
ふと砂遊びをやめて海に入って行ったシュリが足を滑らせて転んだ。
そしてそのまますごい勢いの引き潮が起きたかのように体が沖へと流されていく。
「え!?シュリ!!」
「愛美さん、離岸流だ!ライフガードに伝えて!」
ルイは急いで海に入ると、シュリを追って沖へ泳ぎ出した。シュリの姿は一度沈んでから見当たらない。
「シュリ!!どこだ!!」
するとかすかに声が聞こえる。
「ルイ…たすけ…」
どこかで溺れかけているようだ。ルイは海面を隈無く探す。
すると、さらに冲の方で浮き沈みしている姿を見つけた。足がつかないので水面から顔を出しては沈んでを繰り返している。
「シュリ!!」
ルイは夢中で泳いだ。
途中でサングラスが外れて流されて行ったが、気にしてる暇はなかった。
直接強い太陽光に晒された目は射抜かれたように痛んだが、そんなこと構っていられなかった。
「シュリ!もう大丈夫だよ、落ち着いて、僕につかまって。ゆっくり息を吸って吐くんだ」
沖でシュリをつかまえたルイは、パニックになって過呼吸になるシュリを抱きしめて落ち着かせた。
海水をだいぶ飲んだのだろう、ゲホゲホと激しく咳き込んでいる。
ルイは離岸流が落ち着いたのを見計らうと、浜辺へとシュリを運んで行った。