高村ゆかり氏 講演会~住友理工のカーボンニュートラルへの第一歩
先日、小牧製作所にて、東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授を講師にお招きし、「2050年カーボンニュートラルに向かう世界~『変化』の中の企業~」と題して、ご講演いただきました。
「カーボンニュートラル」については、皆さんも最近、社内ではもちろん、新聞やテレビなどでも目や耳にしたことがあるかと思います。
カーボンニュートラル、つまり「温室効果ガス排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、森林などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
正直なところ、わたしは、「カーボンニュートラル」という言葉だけが独り歩きし、私を含めた多くの人が、本質を見失いかけているのではないかと感じていました。
そんな中、政府や省庁など多くの委員会で要職を務めておられる環境問題の第一人者である高村さんに、非常にご多忙な中にもかかわらず、ご講演いただけることになりました。
気さくなご性格で 我々のレベルに合わせてお話しいただき、企業がカーボンニュートラルにどのように向き合うべきなのか、私をはじめ皆さんの理解が本当に深まったのではないかと思います。
そもそも、なぜカーボンニュートラルを目指すのでしょうか。
その背景には、人間の社会活動によって深刻化している気候危機の問題があります。
このまま温暖化が進行すると、洪水や海面上昇、水・食糧不足、生態系の損失など、さまざまな危機的状況を招くと言われており、私たちはすでにその一部に直面しています。
さらに言えば、各国の保険・金融業界が経済損失リスクとして国に対応を求めはじめたことや、企業に対する投資家の動きも大きく影響しています。
ゴールが定まれば
「現在の社会の延長線上に私たちがめざす未来はない」
これは、高村さんのお話の中でもっとも響いた言葉でした。
実のところ、「2050年までにカーボンニュートラルを達成」という目標は、決して容易な目標ではありません。
しかし、目標(ゴール)を明確にすることが、そこに辿り着くことの第一歩であるということでした。
そして、ゴールが定まれば、課題を見つけ、解決策を考えることができるようになるとのこと。これは、私たちがいつも実施している仕事と同じであると感じました。
当社も課題を見つけ、すでに取り組んでいます。
これまでの取り組みとして、事業活動においては、2022V目標としてCO2の削減を掲げており、さらにカーボンニュートラルに向けた課題に取り組みはじめています。
例えば「遮熱塗料による金型ヒーター電力の削減」は、16%の省エネ効果があり、グローバルに展開することで、住友理工グループの中で3,000トン/年(2021年度予想)のCO2排出量削減
を見込んでいます。
今年5月の決算記者発表会の場では、脱炭素への取り組みについて問われた際、昨年、開発発表した「薄膜高断熱材「:ファインシュライト」の工場での活用を検討していると答えました。
これは、当社グループのカーボンニュートラルに向けた施策の一つです。
さまざまに熱を発する製造業の現場において、ファインシュライトを断熱材として活用していただくことで、熱マネジメント、ひいてはエネルギーマネジメントに大きく寄与できるのではないか、と考えています。すでにお客様の製造現場において採用実績があり、先日、新聞にも取り上げられました。
カーボンニュートラルに向けた新しい目標
カーボンニュートラルの動きは、企業の間でも広がっています。
もちろん、当社のお客様からも要請されています。
それだけ難しい目標であり、力を合わせて取り組まないと達成できません。
従来の省エネ活動の延長やできることの積み上げでは成立しないことも分かっています。
講演の内容にもありましたが、大きな目標を掲げ、それを目指してバックキャストして何をしていくべきかを考えることが大切だと思います。
これまで再三お伝えしていますが、「過去の概念にとらわれず、変化に柔軟に対応する風土づくり」が重要です。
高村さんは「将来を見据えて、変化にうまく対応することができれば、影響が少なくなり、雇用を守ることができ、カーボンニュートラルに向けた施策が企業価値を高める事業戦略となる」と述べられました。
地球市民として、当社がこうした社会課題の解決に向けて責任を果たしていくこと、その実行によりステークホルダーの皆さんに共感・信頼していただける企業となること、そしてこのブログの記事によって従業員の皆さんが「自分ごと」として関心を持つきっかけになることを願っています。