南北戦争2-ホイットマン「草の葉」
2022.07.08 11:15
1855年、アメリカの魂を代表する詩人ホイットマンの「草の葉」が自費出版で発刊された。最初はわずか12編の詩集だったが、思想家エマーソンに評価されて、1892年で亡くなるまで拡充された。この詩集を代表する冒頭の詩「自己の歌」は詩というより、まるで政治演説である。
ヨーロッパや日本のように、古代から中世からの歌の伝統のないアメリカでは自由に詩を書くことができたし、出自などの関係ないアメリカでは、政治家も聖書をバックボーンにしながら、言語を操って人を感動させて、支持を獲得した。この伝統は現代まで生きて、有名な演説が次々に出てくる。
ホイットマンは、「合衆国そのものが最大の詩編」と考え、「私はアメリカが歌うのを聞く」では、機械工や大工や船員などピープルが歌っていると書く。「草って何」では、手に取った草から宇宙につながるビジョンを組み立てる。雄大な自然を愛し、神の創造と見るアメリカ的心性である。
民主主義の理想を歌うホイットマンはしかし、その後に起こる南北戦争で「叩け!叩け!太鼓を!」という愛国詩を発表する。そして志願看護師として従軍する。リンカーンの死には「ああ船長わが船長」を発表し、その後の腐敗を幻滅する詩も出した。彼の精神はラップまでつながっているといっていいすぎではない。