金字塔
【ショート・エッセイ】【wording】
昨日の FBのタイムラインでskyscraper すなわち「空を擦るもの」を「摩天楼」と訳した人の言語能力とセンスに感嘆する記事を載せました。「研摩」の「摩」を使ったのが白眉。それにしても、原語の「空を摩する」っていうことがすでにシュールなので、それが大いに刺激したとは思いますが。
それでいえば、Presidentを「大統領」としたのも凄いなぁとは思いますけど。大工など現場を統括するのを「棟梁」と言いますが、それを「統領」に”変換”して充てているのですね。「大棟梁」ではね、ちょっとね。
「金字塔」という言葉がある。 なにかカクカクたる業績をあげたことを「金字塔をうち立てる」っていうけど、その人を賞賛して金無垢の名前でも彫り込むのかなとぼんやりと思っていた期間が長く続いていました。
1863年「第二次遣欧使節団」が池田筑後の守(当時弱冠28才)を団長としてパリを目指し、1864年にやっとカイロへ着き、それがギザの大ピラミッドやスフインクスを観光しているのです。4年後には江戸幕府がなくなるというのに……。とにかく、ちょんまげが「ほほっ〜!!」などと言いながら、ピラミッドを観て、スフインクスの横で記念写真をとるなんて、まことにシュールです。人間てタフですね。今ならさしずめ他の惑星を訪問したくらいの落差だったはずなんでしょうにね。
その時です。ピラミッドを「金という字」に見立てたというんですね。それで「金字塔」という日本語ができたというのです。 てっきり中国に故事来歴のある言葉とばかり思っていたんだが、気持ちが良いくらいに足下を掬われた感じがします。(考えてみれば、日本文化のなかに「角錐」の建築物ってなかったのですね。あったら、その名をつけたと思います。)
とにかく、外来語をなんとかかんとか日本語(漢字)で表現しようという明治時代の日本人の漢字・漢語の素養とクリエイティビティには敬服に値します。