イギリス紀行31
最初に行ったのは、ユースホテルからすぐ近くにあったV&A博物館である。ケンジントンという地区にあるのだが、V&Aとは何の略か?そう、かのヴィクトリア女王と夫のアルバート公のことである。イギリスには大英博物館という世界一の博物館があり、そちらのほうが歴史も規模も圧倒的だが、こちらの博物館も中々だった。それはイギリスが産業革命などで覇権を効かせてたヴィクトリア女王の時代、1952年に「製造博物館」として生まれたらしい(今調べた)。もちろん無料で入れるし、ビデオを回しても大丈夫(フラッシュさえたかなければ)。日本のような敷居や柵もなく、すぐそばで展示品が見れる。これは意識(倫理観)の高さだろうし、キリスト教による倫理観かもしれない。
最初に彫刻が並んでいて(順序などないからどこから見てもいい)、それで改めて西欧文明とは石の文明なのだと感じ入った。日本は木の文化だから、余計にその違いを感じてしまう。なんだろう、日本にだって石はあるんだけど、西欧のような頑強な石はないのかな。それを考えると、岡本太郎の「太陽の塔」というのはとても近代的なアートなんだと改めて感じたりもする。西洋で芸術といえば、まず第一に彫刻だろう。建築、絵画、音楽、ダンス、文学、そして映画。美術館では絵が主体だが、博物館では彫刻を主体に、ライオンキングの衣装なども飾ってあった。
彫刻を見ていても、キリスト教との関係は濃厚である。宗教的なものが芸術とつながり、精神性や文化として定着する。その流れはどこに国でも一緒だが(イスラム教だけは偶像崇拝を禁止してる)、キリスト教におけるものはより強固な気がした。イギリスにはイタリアのようなルネサンス期は特にないにしても、その後の大航海時代に世界中からそうした美術品などを奪ってきた歴史がある。だからこそ、こうして一同に素晴らしい品が集められているのだ。こうして見られることは、単純に感動を覚えたし文化的な意義、アートの意味を実感しつつ、罪な歴史とも感じないわけじゃない(もちろん近年は返却なども行われているようだが)。