スターマイン
2007.09.29 12:48
僕はジャケット羽織ってた
ちょっとおなかが空いていた
朝から秋雨降っていた
だから傘を持っていた
テールランプの向こう側
世田谷通りの傍らで
道路標識に隠れてた
こないだ十五夜迎えたばかりの
月をも隠す雲に遮られ
己の煙にさえ巻かれながら
強がり花火が上がってた
スターマインは火の粒を
そこら中に撒き散らす
朝から待ってたわけではなかった
寄り道するほど鈍感だった
耳に押し込んだイヤフォンの
隙間に無理矢理割り込んだ
強がり花火の雄叫びが
帰路とは違う路地に誘った
どうしても見ろと言うんだね
どうしても聞けと言うんだね
なぜ君は
痛々しいくらいに綺麗なんだ
見苦しいほど美しいんだ
垂れ込めた雲には勝てるはずもないだろう
明るすぎる街のともしびには勝てないだろう
それでもなお君は
どうして火の粉を撒き散らす
背を向け歩き始めた群衆に
君の最期のもがきは見えやしないさ
何かを思い出すために
何かを忘れ去るために
どうして君は九月の終わりに火の粉を散らす
暑い盛りに散らせばいいだろう
夕暮れにしびれをきらせばいいだろう
雲のない日に君が見えれば
おのずとため息もれるだろう
いつか見た
スターマインと同じように
僕の瞳は滲んでた
僕は傘を持っていた
少しおなかが空いていた